上 下
452 / 942
2年生1学期

6月29日(水)晴れ 花園華凛との日常その15

しおりを挟む
 梅雨明け後の水曜日。それどころか全国的に危険な暑さだというのだから大変な状況である。僕も行き帰りの自転車で汗だくになってしまうので、特に行きで教室に入る前は色々気を遣わないといけない。

 そんな本日の始まりは昨日のことを路ちゃんに謝罪するところから始まる。野島さんを連れて来てしまって……と言うと、野島さんに失礼なので僕の急な思い付きで行動したことを謝った。

「ううん、全然大丈夫。おかげで野島さんと話せるきっかけになったし」

 しかし、路ちゃんは昨日のことを好意的に取ってくれたようで、僕はひとまず安心する。
 そして、そのまま席へ戻ろうとすると、途中で後ろからカッターシャツの首元を掴まれた。

「ぐえっ!」

「リョウスケ、ストップ」

「な、なんでそんな止め方するの花園さん!?」

「声を出すのも億劫になるほど暑いからです」

 絶対嘘だと思いながらも僕は花園さんと向かい合う。

「何か用事?」

「……ここでは何なので一旦廊下に出ましょう」

 そう言われて花園さんへ付いて行くと同時に僕はデジャヴを感じた。先週の金曜に水原先輩から話があると言われた時に似ている気がしたからだ。しかも花園さんからの話になれば十中八九路ちゃんのことになる。

「最近のミチちゃんなのですが……」

「やっぱりそうか」

「何も言っていませんが?」

「あっ、ごめん。どうぞ」

「はい。最近のミチちゃんなのですが……うーん」

 続きを言う前に花園さんは悩み始める。

「なんと言ったらいいんでしょうか。とても難しいです」

「あれ? 疲れてるように見えるって話じゃないの?」

「色々やっているのですから疲れることもあるでしょう。それとは別に……違和感があるのです。リョウスケは何か心当たりがありませんか?」

「違和感? それで言うなら疲れ気味なのがいつもと違う感じだったけど、そうじゃないならわからないな」

「まぁ、華凛がわからないならリョウスケもわかりませんよね」

「否定はできないよ。僕よりも花園さんの方が接する時間長いだろうし」

「その自覚があるなら……いえ、それはこの際置いておきます」

「そういえば部活の先輩もミチちゃんのことを気にかけてたけど、それも違和感の話だったのかな?」

「といいますと?」

「その先輩から紹介された塾に通っているけど、その時も疲れている……というか、ちょっと様子が違ったみたいなんだ」

 僕の言葉を聞いて花園さんは再び考え始めるので、僕もここ最近の路ちゃんを思い返してみる。けれど、やっぱり僕の印象は疲労で眠たげにしている姿だった。

「……華凛の思い過ごし、だといいのですが」

「ごめん。僕が違和感に気付いてないから今のところ何とも言えなくて」

「いえ。少しすっきりしました。持つべきものは吐き出す場所ですね」

「悩みをって付けてくれないと別の意味に聞こえるよ」

「華凛は悩んでいません。悩んでいるとしたら……良くないですね。これも全部暑さのせいです」

 そこで花園さんの話は終わったけど、まだ納得していないように見えた。

 花園さんは性格や感性が僕とかなり違う方だと思うから、今の路ちゃんから覚える違和感があるのは本当のことだろう。その違和感の正体がわからないのは、絶対に花園さんの悩みになっているはずだけど、残念ながら今の僕ではいい答えが思い付かない。
 水原先輩から言われたように、路ちゃんの様子を気にかけるようにしておかなければ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!

佐々木雄太
青春
四月—— 新たに高校生になった有村敦也。 二つ隣町の高校に通う事になったのだが、 そこでは、予想外の出来事が起こった。 本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。 長女・唯【ゆい】 次女・里菜【りな】 三女・咲弥【さや】 この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、 高校デビューするはずだった、初日。 敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。 カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!

Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

green
青春
一ノ瀬財閥の令嬢、一ノ瀬綾乃は小学校一年生からサッカーを始め、プロサッカー選手になることを夢見ている。 しかし、父である浩平にその夢を反対される。 夢を諦めきれない綾乃は浩平に言う。 「その夢に挑戦するためのお時間をいただけないでしょうか?」 一人のお嬢様の挑戦が始まる。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

彼女に思いを伝えるまで

猫茶漬け
青春
主人公の登藤 清(とうどう きよし)が阿部 直人(あべ なおと)に振り回されながら、一目惚れした山城 清美(やましろ きよみ)に告白するまでの高校青春恋愛ストーリー 人物紹介 イラスト/三つ木雛 様 内容更新 2024.11.14

漫才部っ!!

育九
青春
漫才部、それは私立木芽高校に存在しない部活である。 正しく言えば、存在はしているけど学校側から認められていない部活だ。 部員数は二名。 部長 超絶美少女系ぼっち、南郷楓 副部長 超絶美少年系ぼっち、北城多々良 これは、ちょっと元ヤンの入っている漫才部メンバーとその回りが織り成す日常を描いただけの物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

全体的にどうしようもない高校生日記

天平 楓
青春
ある年の春、高校生になった僕、金沢籘華(かなざわとうか)は念願の玉津高校に入学することができた。そこで出会ったのは中学時代からの友人北見奏輝と喜多方楓の二人。喜多方のどうしようもない性格に奔放されつつも、北見の秘められた性格、そして自身では気づくことのなかった能力に気づいていき…。  ブラックジョーク要素が含まれていますが、決して特定の民族並びに集団を侮蔑、攻撃、または礼賛する意図はありません。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

処理中です...