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2年生1学期
6月28日(火)晴れ 夢想する岸本路子その8
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すっかり夏天気の火曜日。この日は先週の約束通り、路ちゃんから誘われた勉強会に参加する。参加者は僕、花園さん、大山さん、迷いに迷ってやって来た野島さんで、場所は図書室だ。相変わらずこの学校の図書室はテスト期間中の人気はそれほど高くないようで、5人の席も十分に確保できた。
「み、皆さん、本日はお集り頂きありがとうございます」
「ミチ、そんな畏まらなくても大丈夫だよ? のじぃはこう見えても優しくて絡みやすいから」
「そうそう……って、こう見えてってどう見えてるの? 褒められてた内容通りの見た目だと思うけど?」
大山さんと野島さんの早速の絡みを見て路ちゃんは何とも言えない笑いを見せる。どうやら路ちゃんと野島さんはほぼ初対面のようだ。
「リョウスケ。なぜわざわざ路ちゃんが緊張するような状況を作ってしまうんですか」
「ご、ごめん。野島さん、大山さんの友達だからてっきり繋がりがあるものかと……」
「まったく……」
花園さんにやや呆れながら言われて僕は反省する。昨日は反射的に野島さんを誘ってしまったけど、一旦立ち止まって考えるべきだった。
「はい、お喋り終わりー お勉強始めるよ~」
そんな場をまとめてくれたのは何故か大山さんで、そこから各々勉強を始める。そういえば、前回大山さんを加えた3人での勉強会の様子はあまり聞いていなかった。でも、どちらかといえば大山さんが教える側に回りそうなので、今みたく中心になって進めいたのかもしれない。
「はい。大山先生、質問したいところがあります」
「えっ? アタシに聞くの?」
「いやまぁ、隣だから聞いただけであって……じゃあ、岸本先生に頼もうかな?」
「あっ、えっと……わたしよりも亜里沙ちゃんの方がいいと思う……」
路ちゃんがそう言うと、花園さんは僕の方へ冷ややかな視線を向ける。この状況を作ってしまったのは僕のせいだから、この場は僕がフォローすべきだろう。
「いやいや、み……岸本さんも十分教えられると思うよ」
「うぶクン。なんで無理矢理苗字呼びに戻してるの? せっかく慣れたのに」
「へー 岸本さんは名前呼びなんだ。産賀くん、全自動苗字呼びマシーンかと思ってた」
「その認識ひどくない? まぁ、それはそれとして、うぶクンは遠慮せずに名前で呼べばいいじゃん」
「う、うん。路ちゃんも頼りにしていいと思うよ」
そこをわざわざツッコまれてしまうのは僕が堂々としていないせいだろう。改めてフォローの言葉を入れるけど、それを聞いた路ちゃんはあまり芳しくない表情になる。
「ううん。わたしは本当に全然だから……何なら今日も良助くんや亜里沙ちゃんに教えて欲しいくらいで……」
「そうなの? まぁ、塾通い始めたのってちょっと前からだし、そんなすぐに効果が出るわけじゃないか」
「亜里沙、今のは無意識頭いいマウントになってるよ」
「ち、違うよ、ミチ。アタシだってこの前のテストは正直微妙だったし、教えられるほどじゃないっていうか……」
「大丈夫、亜里沙ちゃんが悪く言ってるわけじゃないのはわかってるから。だからこそ、わからないところ聞いてもいい?」
そう言った路ちゃんは大山さんを見た後、僕の方にも目線を向けた。それに対して僕は大山さんの返事に合わせて頷く。
それからは主に僕と大山さんが教える側になって、3人の質問に答えながら勉強会が進んでいった。
ただ、勉強会が終わった上での反省を書くと、僕の路ちゃんへのフォローは的外れだった。勝手に教えられると決めつけたのも良くないし、野島さんとは初絡みなわけだから、謙遜ではなく本当に遠慮していたことを読み取なければいけなかったのだ。
テスト勉強はできたのにごちゃごちゃしてしまったのは全部僕のせいだ。明日改めて路ちゃんに謝っておこう。
「み、皆さん、本日はお集り頂きありがとうございます」
「ミチ、そんな畏まらなくても大丈夫だよ? のじぃはこう見えても優しくて絡みやすいから」
「そうそう……って、こう見えてってどう見えてるの? 褒められてた内容通りの見た目だと思うけど?」
大山さんと野島さんの早速の絡みを見て路ちゃんは何とも言えない笑いを見せる。どうやら路ちゃんと野島さんはほぼ初対面のようだ。
「リョウスケ。なぜわざわざ路ちゃんが緊張するような状況を作ってしまうんですか」
「ご、ごめん。野島さん、大山さんの友達だからてっきり繋がりがあるものかと……」
「まったく……」
花園さんにやや呆れながら言われて僕は反省する。昨日は反射的に野島さんを誘ってしまったけど、一旦立ち止まって考えるべきだった。
「はい、お喋り終わりー お勉強始めるよ~」
そんな場をまとめてくれたのは何故か大山さんで、そこから各々勉強を始める。そういえば、前回大山さんを加えた3人での勉強会の様子はあまり聞いていなかった。でも、どちらかといえば大山さんが教える側に回りそうなので、今みたく中心になって進めいたのかもしれない。
「はい。大山先生、質問したいところがあります」
「えっ? アタシに聞くの?」
「いやまぁ、隣だから聞いただけであって……じゃあ、岸本先生に頼もうかな?」
「あっ、えっと……わたしよりも亜里沙ちゃんの方がいいと思う……」
路ちゃんがそう言うと、花園さんは僕の方へ冷ややかな視線を向ける。この状況を作ってしまったのは僕のせいだから、この場は僕がフォローすべきだろう。
「いやいや、み……岸本さんも十分教えられると思うよ」
「うぶクン。なんで無理矢理苗字呼びに戻してるの? せっかく慣れたのに」
「へー 岸本さんは名前呼びなんだ。産賀くん、全自動苗字呼びマシーンかと思ってた」
「その認識ひどくない? まぁ、それはそれとして、うぶクンは遠慮せずに名前で呼べばいいじゃん」
「う、うん。路ちゃんも頼りにしていいと思うよ」
そこをわざわざツッコまれてしまうのは僕が堂々としていないせいだろう。改めてフォローの言葉を入れるけど、それを聞いた路ちゃんはあまり芳しくない表情になる。
「ううん。わたしは本当に全然だから……何なら今日も良助くんや亜里沙ちゃんに教えて欲しいくらいで……」
「そうなの? まぁ、塾通い始めたのってちょっと前からだし、そんなすぐに効果が出るわけじゃないか」
「亜里沙、今のは無意識頭いいマウントになってるよ」
「ち、違うよ、ミチ。アタシだってこの前のテストは正直微妙だったし、教えられるほどじゃないっていうか……」
「大丈夫、亜里沙ちゃんが悪く言ってるわけじゃないのはわかってるから。だからこそ、わからないところ聞いてもいい?」
そう言った路ちゃんは大山さんを見た後、僕の方にも目線を向けた。それに対して僕は大山さんの返事に合わせて頷く。
それからは主に僕と大山さんが教える側になって、3人の質問に答えながら勉強会が進んでいった。
ただ、勉強会が終わった上での反省を書くと、僕の路ちゃんへのフォローは的外れだった。勝手に教えられると決めつけたのも良くないし、野島さんとは初絡みなわけだから、謙遜ではなく本当に遠慮していたことを読み取なければいけなかったのだ。
テスト勉強はできたのにごちゃごちゃしてしまったのは全部僕のせいだ。明日改めて路ちゃんに謝っておこう。
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