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2年生1学期
6月22日(水)曇り時々雨 拡散する大山亜里沙その11
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曇天雷雨の水曜日。一応学校のエアコンは解禁済みだけど、移動教室などで教室を空ける際はその度にエアコンを消さなければならないので、1時間後帰ってくると生温い状態になっていたりする。
その場合、最も影響があるのは体育の授業の後だ。この時ばかりは例え電気代がかかってでも、教室は涼しい状態であって欲しいと誰もが思っていることだろう。
「蒸し暑い~」
そう言ったのは4組の教室で着替えを終えて帰って来た大山さんだ。体育の授業は3・4組合同で、男子は3組、女子は4組でそれぞれ着替える。
そのことから3組の教室内は一瞬男子の汗の臭いが充満してしまうので、一旦換気してから冷房を入れなくてはならない。別に規則で決まっているわけじゃないけど、いつの間にか習慣付いた行動だった。返ってきて汗臭いと言われてしまうのは自分だけのせいでなくても嫌なものだ。
「うぶクン……ちょっと暑いと思わない?」
「えっ? まぁ、うん。体育の後だからね」
「だよねー……チラッ」
急に絡まれて何事かと思ったけど、大山さんの目線は入り口からすぐに設置されているエアコンの操作盤に向いていた。そこから一番近いのは廊下側の一番前に席がある僕だ。つまりは温度下げてきて欲しいと言っている。
ただ、それは安請け合いできないお願いである。なぜならエアコンの温度設定は僕と大山さんの一存で変えていいものではない。たとえ体育の後だとしても、大倉くんのように風の出口の人は寒いと感じてしまったり、今の温度が適温である人からすると体調を崩してしまう原因になったりする。
そうなると、エアコンを操作する前にクラス全体に語り掛けて許可を取る必要があるのだ。
「うぶクン?」
正直言ってそれは凄く面倒くさい。まず体育で疲れているから一番前の席でも動くが凄く億劫だ。それにクラス全体に向けて声を出すのは何だか恥ずかしい。僕が我慢できなくなってしまったように見られるのはちょっと嫌だし、反論が出た時に上手く言いくるめなければならないのはかなり嫌だ。
「うぶクーン」
けれども、大山さんが暑さに苦しんでいるならそれを放置するわけにもいかない。僕もどちらかといえば暑いと思っている方だし、それなら同じように思っている人の方が多いはずだ。多数決で下げる権利を得られる可能性も高いと見た。
「うぶクン、大丈夫?」
「うわぁ!?」
屁理屈を考えている間に大山さんは僕の席までやって来ていて、僕は驚く。
「ごめんね、流れでパシろうとしっちゃって」
「いや、気にしてないけど……」
「教室のエアコンもリモコンあったらいいのにね。あっ、ちょっと温度下げまーす!」
そう言いながら大山さんは操作盤に向かって行く。それに対して女子数人が返事をすると、数秒後にエアコンの風の音が大きくなった。
「よし、これで次の授業は快適に寝られる」
「寝ちゃダメでしょ」
「だってぇ、体育の後からしょうがなくない?」
しょうがなくなくないと思ったけれど、ちょうどそこでチャイムが鳴ったので、大山さんは眠ってしまったのかもしれない。
いや、それよりも大山さんの行動力の高さを見ると、僕はなんてしょうもないことを考えていたのだろうと思ってしまう。
これからはエアコンの操作盤に一番近い男として、声を大にできるようにしていこうと思った……この考えがそもそもしょうもないか。
その場合、最も影響があるのは体育の授業の後だ。この時ばかりは例え電気代がかかってでも、教室は涼しい状態であって欲しいと誰もが思っていることだろう。
「蒸し暑い~」
そう言ったのは4組の教室で着替えを終えて帰って来た大山さんだ。体育の授業は3・4組合同で、男子は3組、女子は4組でそれぞれ着替える。
そのことから3組の教室内は一瞬男子の汗の臭いが充満してしまうので、一旦換気してから冷房を入れなくてはならない。別に規則で決まっているわけじゃないけど、いつの間にか習慣付いた行動だった。返ってきて汗臭いと言われてしまうのは自分だけのせいでなくても嫌なものだ。
「うぶクン……ちょっと暑いと思わない?」
「えっ? まぁ、うん。体育の後だからね」
「だよねー……チラッ」
急に絡まれて何事かと思ったけど、大山さんの目線は入り口からすぐに設置されているエアコンの操作盤に向いていた。そこから一番近いのは廊下側の一番前に席がある僕だ。つまりは温度下げてきて欲しいと言っている。
ただ、それは安請け合いできないお願いである。なぜならエアコンの温度設定は僕と大山さんの一存で変えていいものではない。たとえ体育の後だとしても、大倉くんのように風の出口の人は寒いと感じてしまったり、今の温度が適温である人からすると体調を崩してしまう原因になったりする。
そうなると、エアコンを操作する前にクラス全体に語り掛けて許可を取る必要があるのだ。
「うぶクン?」
正直言ってそれは凄く面倒くさい。まず体育で疲れているから一番前の席でも動くが凄く億劫だ。それにクラス全体に向けて声を出すのは何だか恥ずかしい。僕が我慢できなくなってしまったように見られるのはちょっと嫌だし、反論が出た時に上手く言いくるめなければならないのはかなり嫌だ。
「うぶクーン」
けれども、大山さんが暑さに苦しんでいるならそれを放置するわけにもいかない。僕もどちらかといえば暑いと思っている方だし、それなら同じように思っている人の方が多いはずだ。多数決で下げる権利を得られる可能性も高いと見た。
「うぶクン、大丈夫?」
「うわぁ!?」
屁理屈を考えている間に大山さんは僕の席までやって来ていて、僕は驚く。
「ごめんね、流れでパシろうとしっちゃって」
「いや、気にしてないけど……」
「教室のエアコンもリモコンあったらいいのにね。あっ、ちょっと温度下げまーす!」
そう言いながら大山さんは操作盤に向かって行く。それに対して女子数人が返事をすると、数秒後にエアコンの風の音が大きくなった。
「よし、これで次の授業は快適に寝られる」
「寝ちゃダメでしょ」
「だってぇ、体育の後からしょうがなくない?」
しょうがなくなくないと思ったけれど、ちょうどそこでチャイムが鳴ったので、大山さんは眠ってしまったのかもしれない。
いや、それよりも大山さんの行動力の高さを見ると、僕はなんてしょうもないことを考えていたのだろうと思ってしまう。
これからはエアコンの操作盤に一番近い男として、声を大にできるようにしていこうと思った……この考えがそもそもしょうもないか。
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