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2年生1学期
6月21日(火)曇り時々雨 伊月茉奈との日常その4
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ちょっとだけ涼しさが戻った火曜日。7月に入る再来週には学期末テストが行われるため、部活動は今週末でひと区切りだ。そして、テストが過ぎると夏休みも近づいて来るので、文芸部的には文化祭の下準備を始める時期になる。
「森本さんと産賀さん。ちょっと聞いてもいいですか?」
そんな中、今日は森本先輩と少し話をしていたところに伊月さんがやって来た。
「実は……創作アイデアが全く浮かばなくて。先輩方に色々と聞いて回っているので何かアドバイスをお願いします」
その内容は珍しく文芸部の本筋に関わるものだった。いや、普通は部活中に部活のことをするものなのだから、珍しいと思ったいけないんだけど。
すると、先に森本先輩が喋り出す。
「アイデアかー 具体例を出しちゃうとそれを書くことになっちゃいそうだから、どこまで教えたらいいかなー?」
「毎回、文章の書き方とか表現技法とか学ばせて貰っているので、そこは大丈夫なんですけど……根本的な問題で何を書いたらいいかわからないんです」
「なるほどー じゃあ、1年前に同じ悩みを抱えたであろうウーブくん的にはどう?」
何か答えてくれると思ったら咄嗟に話を振られたので僕は少し考える。確かに去年は同じように小説や短歌をどう書けばいいか悩んで森本先輩に質問した記憶がある。その時の答えは……
「僕が教えて貰ったのは自由に書けばいいってことかな。文化祭の冊子に掲載するところだけ気を付ければ何を書いてもいいと思うよ。恋愛でもミステリーでも」
「でも、たとえばミステリーを書くとして叙述トリックや綺麗な伏線回収は綺麗にできないと思いますが……」
「僕らはプロじゃないし、最初から上手く書こうと思わなくてもいいんだよ。なるべくいい状態で提出したいとは僕も思うけど、それよりも楽しんで書いてくれた方がいいから。伊月さんは好きな小説ジャンルある?」
「私は……恋愛小説は好きです。湿っぽい話よりもコメディチックな話が」
「だったら、まずはそこから考えてみてもいいんじゃないかな。まだ本番まで時間があるからちょっと書いてみて、あまり筆が進まないなら別ジャンルも試してみてもいいと思う。僕が目を通す……のはあんまり気が進まないと思うから、女子の先輩方に試し読みして貰ってまたアドバイスをくれるだろうし」
「はーい。無料の試し読みなら大好物なのでいつでも受け付けるよー」
「そうですか……わ、私が恋愛小説……わかりました! とりあえずその方向でがんばってみます!」
伊月さんは僕の意見を好意的に受け取ってくれたようだった。ひとまず役目を果たしてほっとしていると、森本先輩はニヤニヤしながら言う。
「いやー ウーブくんも成長したねー あたしより具体的なアドバイスだったよー」
「森本先輩も何か言ってあげれば良かったのに……」
「そこはまぁ若い世代に譲らないとねー でも、急に振ったのに良く答えれたねー」
「まぁ、そこは路ちゃんと話してる時にいつか聞かれるだろうなと、ちょっと考えてたこともあったので」
「うわ、真面目だなー あたしなんか汐里にまずは自分のこと考えなさいって言われた記憶があるのにー」
「それは……今の僕にも刺さるので言わないでください」
ちょっとダメージを受けた僕を見て森本先輩は「あたしもブーメラン刺さったー」と失笑した。そう、先輩面してアドバイスしてみたものの、僕も今回何を書くか、薄っすらとしか決まっていなかった。
次にアドバイスを求められる際には自分の心が痛まないように、ジャンルくらいは定めておきたいと思った。
「森本さんと産賀さん。ちょっと聞いてもいいですか?」
そんな中、今日は森本先輩と少し話をしていたところに伊月さんがやって来た。
「実は……創作アイデアが全く浮かばなくて。先輩方に色々と聞いて回っているので何かアドバイスをお願いします」
その内容は珍しく文芸部の本筋に関わるものだった。いや、普通は部活中に部活のことをするものなのだから、珍しいと思ったいけないんだけど。
すると、先に森本先輩が喋り出す。
「アイデアかー 具体例を出しちゃうとそれを書くことになっちゃいそうだから、どこまで教えたらいいかなー?」
「毎回、文章の書き方とか表現技法とか学ばせて貰っているので、そこは大丈夫なんですけど……根本的な問題で何を書いたらいいかわからないんです」
「なるほどー じゃあ、1年前に同じ悩みを抱えたであろうウーブくん的にはどう?」
何か答えてくれると思ったら咄嗟に話を振られたので僕は少し考える。確かに去年は同じように小説や短歌をどう書けばいいか悩んで森本先輩に質問した記憶がある。その時の答えは……
「僕が教えて貰ったのは自由に書けばいいってことかな。文化祭の冊子に掲載するところだけ気を付ければ何を書いてもいいと思うよ。恋愛でもミステリーでも」
「でも、たとえばミステリーを書くとして叙述トリックや綺麗な伏線回収は綺麗にできないと思いますが……」
「僕らはプロじゃないし、最初から上手く書こうと思わなくてもいいんだよ。なるべくいい状態で提出したいとは僕も思うけど、それよりも楽しんで書いてくれた方がいいから。伊月さんは好きな小説ジャンルある?」
「私は……恋愛小説は好きです。湿っぽい話よりもコメディチックな話が」
「だったら、まずはそこから考えてみてもいいんじゃないかな。まだ本番まで時間があるからちょっと書いてみて、あまり筆が進まないなら別ジャンルも試してみてもいいと思う。僕が目を通す……のはあんまり気が進まないと思うから、女子の先輩方に試し読みして貰ってまたアドバイスをくれるだろうし」
「はーい。無料の試し読みなら大好物なのでいつでも受け付けるよー」
「そうですか……わ、私が恋愛小説……わかりました! とりあえずその方向でがんばってみます!」
伊月さんは僕の意見を好意的に受け取ってくれたようだった。ひとまず役目を果たしてほっとしていると、森本先輩はニヤニヤしながら言う。
「いやー ウーブくんも成長したねー あたしより具体的なアドバイスだったよー」
「森本先輩も何か言ってあげれば良かったのに……」
「そこはまぁ若い世代に譲らないとねー でも、急に振ったのに良く答えれたねー」
「まぁ、そこは路ちゃんと話してる時にいつか聞かれるだろうなと、ちょっと考えてたこともあったので」
「うわ、真面目だなー あたしなんか汐里にまずは自分のこと考えなさいって言われた記憶があるのにー」
「それは……今の僕にも刺さるので言わないでください」
ちょっとダメージを受けた僕を見て森本先輩は「あたしもブーメラン刺さったー」と失笑した。そう、先輩面してアドバイスしてみたものの、僕も今回何を書くか、薄っすらとしか決まっていなかった。
次にアドバイスを求められる際には自分の心が痛まないように、ジャンルくらいは定めておきたいと思った。
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