産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

文字の大きさ
上 下
434 / 942
2年生1学期

6月11日(土)雨時々曇り 明莉との日常その51

しおりを挟む
 2週間ぶりの土曜休み。今日は微妙な天気だけど、明日は何とか天気も回復してくれそうなので、お出かけ日和になりそうだ。そんなことを考えるほど意識は明日に向いているけど、それとは別に気になることがある。それは……明莉の動向だ。

 報告から約1週間ほど経っているけど、その間に新しい情報は特に出てきていなかった。いや、これで毎日のように惚気話を聞かせられていたらたまったもんじゃないと思っていただろうけど、良くも悪くも今週の明莉はいつも通りだった。

 松永に言った時には焦らないでもと言ったけど、何も更新がないとそれはそれで気になってしまう。でも、僕が気になったところでガツガツ聞いてしまうのは違うとも思う。これが同性の兄弟姉妹だったらまた違ったのだろうか。

「……りょうちゃん」

 その気配を感じ取られたのか、居間で一緒にいるタイミングで明莉は不意に声をかけてきた。こうなったら思いっきって聞いてみるべきだろうか。まずは……名前から? というか、僕はまだ名前すら知らないのか。

「何かいい事あった?」

「えっ?」

 しかし、明莉からの質問は全く違う内容だった。

「なんていうか、ちょっとふわふわしてない? 朝から慌ただしく何か準備してるし」

「ああ、それは明日出かける予定だから」

「へ~ 誰とどこ行くの?」

「……先輩と色々見て回ろうかと」

「先輩……って部活の?」

「違うよ。ほら、明莉も会ったことある長髪の……」

「あ~! あの美人さんかぁ。りょうちゃんと美人の先輩が日曜日にお出かけ……んん!?」

 何かに引っかかった明莉は立ち上がっていきなり僕の方へ近づいて来た。

「りょうちゃん!? それってデートじゃないの!?」

「いや……デートは大袈裟かな。朝の散歩とかで一緒に出かけるの珍しくないし」

「あっ、そっかぁ。時々朝早くに出てるのは……ええっ!? それこそまっちゃんと行ってるって話じゃなかったっけ!?」

「そう言ってた気がするけど、さすがに松永と朝からは出かけないよ」

「というか、なんで彼氏できたあかりよりもりょうちゃんがそれっぽいことしようとしてるの!? 突然過ぎて意味わかんないんだけど!?」

「あ、明莉はデートとか行かないの?」

「いやまぁ、なんやかんや部活あるし、3年生で遊びに行く空気でもないしで……って、あかりの方はいいの! 今はりょうちゃんの話!」

 流れで彼氏との近況がわかったけど、明莉の方はそれどころじゃないようだった。一方の僕は指摘された通り相当浮ついているのか、今まで隠していたことを喋ってしまう。

「えっ? じゃあ、これまでの長期休みとかで頻繫に朝から会ってたってこと? あかりの知らない間に?」

「まぁ、うん。知らせることでもないし……」

「いや、絶対そのタイミングで聞いてたのにりょうちゃんが誤魔化してるじゃん!」

「ご、ごめん」

「……それで、りょうちゃん的にはどうなの? その美人先輩とは」

「どうもこうも……仲良くさせて貰ってるだけだよ」

「ほんとにー?」

「ほんとほんと」

「うーん……俄然明日どうなるのか気になってきた。妹同伴も考えてみない?」

「それはちょっと……」

 冗談だと思ったので僕はわざとらしいリアクションをしながら断ろうとしたけど、明莉はわりと本気に聞こえる言い方でもう一度言ってきた。

 結局、この日は明莉からの情報よりも僕から話した情報の方が多かったような気がする。
 そして、話を聞いた明莉は僕と同じくらいソワソワし始めていたので、同じ血が流れているというか、身内の浮ついた話は誰しも気になってしまうんだなぁと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...