上 下
406 / 942
2年生1学期

5月14日(土)曇り時々晴れ 停滞する清水夢愛その4

しおりを挟む
 ようやく雨が落ち着いた土曜日。そんな日であるので、僕は清水先輩から連絡があるかもしれないと思って少し早く起きたけど、特に何事もなく昼前になっていた。

 そういえばGW途中から今週は清水先輩に一度も遭遇しなかった。
 いや、3年生かつ同じ部活でもない清水先輩と会わないのはむしろ普通なのかもしれない。
 けれど、今までは偶然の出会いや朝の散歩の誘ってくれるおかげで定期的に会えていたから、一度も遭遇しなかった今週が珍しく感じる。

 それと同時に僕は何となく寂しさを感じた僕は……思い切って清水先輩にメッセージを送ってみることにした。
 そもそも定期的に会えることにかまけて連絡を怠っていたことが悪いし、そうじゃなくても僕は自分から連絡しない奴だ。

 あれやこれやと考えた結果、お疲れ様の定型文と共に僕は天気の話題を振ってみる。他に振れる話題は来週のテストも思い付いたけど、清水先輩にテスト勉強の話をするのはあまり良くないかもしれないと思って外した。
 メッセージを送った後、テスト勉強を始めようと机に向かうと、すぐにスマホの通知音が鳴った。

――ああ。悪くない天気だ

 短い返信はどう見ても話題の振り方に失敗したように見えた。よく考えればテスト前で集中したい時間だったかもしれないのに、連絡したのが間違いだったかもしれない。
 そう思って会話を止める文を打ち込もうとすると、今度はスマホに通話がかかってくる。

『お疲れ、良助』

「お、お疲れ様です。すみません、忙しい時間帯に連絡してしまって」

『うん? 連絡したのは私の方なんだが?』

「いえ、その前のLINEのメッセージです。そのせいで変に思って連絡してくれたのかと」

『いや、単純にひま……テスト勉強の休憩がてらな』

「暇っていうことは勉強してなかったんですか」

『別に暇だなんて言ってない……小織には言わないでくれ』

「まぁ、勉強しなくてもテストできる人ならあまり強くは言えませんけど」

『うっ……なんか私が嫌味を言ったみたいだ』

 清水先輩がバツの悪そうな顔をしているのが浮かんだので僕は少し笑ってしまう。どうやら清水先輩的に僕の連絡は都合が良いことだったようだ。

『そ、そう言う良助の方はどうなんだ。いきなり丁寧に天気の話なんかして。テスト勉強に嫌気がさしたのか?』

「そういうわけじゃないんですけど……清水先輩に会っていない期間が少しあったので、連絡してみようかと」

『言われてみるとそうか。最後に会ったのは……GW中のどこかだっけ?』

「はい。それと今日の朝、散歩に行こうと言われるかと思っていたのも……なんて、誘われる前提で言うのはおかしいですよね」

『なんだ、散歩に行きたかったのか。それなら言ってくれれば良かったのに。それで出かけても良助が行こうと行ったからと小織に言い訳できたし』

「ということは、この休みはちゃんとテスト勉強しなさい、みたいなこと言われたんですね」

『あ……で、でも、これはサボってるわけじゃなくてだな』

「大丈夫、わかってますから。桜庭先輩も最近はあまり会えてないので急にそれだけ報告することはないと思います」

『そうか……じゃあ、テストが終わったら小織も含めて遊びに行ってみるのもいいかもしれない』

「えっ? 僕はいいですけど、清水先輩たちは忙しいんじゃ……」

『少なくとも私は忙しくないから小織の予定が合えば行けると思うぞ』

「そうなんですね。それじゃあ、楽しみにしています」

『ああ……って待て、良助。もう通話を終わらせようとしていないか? もうちょっと話してもいいんじゃないか?』

「僕も勉強したいのでこれ以上は。それにこれで桜庭先輩にばれたら遊びに行けなくなりそうですし」

『む、むぅ……わかった。お互いがんばろう』

「お互い……ですか?」

『いや、本当に今からやる……はず』

 清水先輩は自信無さ気にそう言いながら通話を切った。ただ、本当のところを言うと、テスト前でなければ僕もまだ話していたかった。

 それでも声が聴けると思っていなかったので、ぎこちなくてもメッセージを送って良かったと思う。

 それからテスト勉強を始めて一区切りした時、僕は考えた。清水先輩はどうしていきなり電話をかけてきたのだろうかと。
 もしも僕と同じ理由なら……いや、また僕は浮ついたことを考えてしまっている。口約束でも遊びに行く予定ができるかもしれないのだから、テストに集中しよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

へたくそ

MO
青春
野球が大好きなのに“へたくそ”な主人公、児玉良太。 チームメイトで野球センス抜群なキャッチャー、松島健介。 後輩マネージャーで児玉に想いを寄せる、町村早苗。 3人の視点から物語は進行していきます。 チームメイトたちとの友情と衝突。 それぞれの想い。 主人公の高校入学から卒業までの陵成高校野球部の姿を描いた物語。 この作品は https://mo-magazines.com/(登場人物一覧も掲載しています) 小説家になろう/カクヨム/エブリスタ/NOVEL DAYS にも掲載しています。

CROWNの絆

須藤慎弥
青春
【注意】 ※ 当作はBLジャンルの既存作『必然ラヴァーズ』、『狂愛サイリューム』のスピンオフ作となります ※ 今作に限ってはBL要素ではなく、過去の回想や仲間の絆をメインに描いているためジャンルタグを「青春」にしております ※ 狂愛サイリュームのはじまりにあります、聖南の副総長時代のエピソードを読了してからの閲覧を強くオススメいたします ※ 女性が出てきますのでアレルギーをお持ちの方はご注意を ※ 別サイトにて会員限定で連載していたものを少しだけ加筆修正し、2年温めたのでついに公開です 以上、ご理解くださいませ。 〜あらすじとは言えないもの〜  今作は、唐突に思い立って「書きたい!!」となったCROWNの過去編(アキラバージョン)となります。  全編アキラの一人称でお届けします。  必然ラヴァーズ、狂愛サイリュームを読んでくださった読者さまはお分かりかと思いますが、激レアです。  三人はCROWN結成前からの顔見知りではありましたが、特別仲が良かったわけではありません。  会えば話す程度でした。  そこから様々な事があって三人は少しずつ絆を深めていき、現在に至ります。  今回はそのうちの一つ、三人の絆がより強くなったエピソードをアキラ視点で書いてみました。  以前読んでくださった方も、初見の方も、楽しんでいただけますように*(๑¯人¯)✧*

麗しのマリリン

松浦どれみ
青春
〜ニックネームしか知らない私たちの、青春のすべて〜 少女漫画を覗き見るような世界観。 2023.08 他作品やコンテストの兼ね合いでお休み中です。 連載再開まで今しばらくお待ちくださいませ。 【あらすじ】 私立清流館学園は学校生活をニックネームで過ごす少し変わったルールがある。 清流館高校1年2組では入学後の自己紹介が始まったところだった。 主人公のマリ、新堂を中心にクラスメイトたちの人間関係が動き出す1年間のお話。 片恋も、友情も、部活も、トラウマも、コンプレックスも、ぜんぶぜんぶ青春だ。 主要メンバー全員恋愛中! 甘くて酸っぱくてじれったい、そんな学園青春ストーリーです。 感想やお気に入り登録してくれると感激です! よろしくお願いします!

私立桃華学園! ~性春謳歌の公式認可《フリーパス》~

cure456
青春
『私立桃華学園』  初中高等部からなる全寮制の元女子校に、期待で色々と膨らませた主人公が入学した。しかし、待っていたのは桃色の学園生活などではなく……?  R15の学園青春バトル! 戦いの先に待つ未来とは――。

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由

棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。 (2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。 女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。 彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。 高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。 「一人で走るのは寂しいな」 「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」 孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。 そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。 陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。 待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。 彼女達にもまた『駆ける理由』がある。 想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。 陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。 それなのに何故! どうして! 陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか! というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。 嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。 ということで、書き始めました。 陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。 表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。

処理中です...