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2年生1学期
4月30日(土)晴れ 停滞する清水夢愛その3
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GW2日目の土曜日。この日の僕は何となく早く目が覚める。すると、ちょうどそのタイミングでLINEに1つの通知が入った。それを見た僕は短い返事を送り返して支度を始める。
今日は肌寒いけれど快晴だった。だから、昨日天気予報を見た時点で、清水先輩から散歩へ行こうと誘われる予感がしていたのかもしれない。
3年生になった清水先輩は僕が想像していたよりもあまり変わっていなかった。
いや、3年生になったからといって1年中忙しくなるわけじゃないし、部活でも普通に先輩方が来てくれるのだから、意外なことのように言うのは本当なら間違っているのだろう。
だけど、未だに僕は清水先輩との関係性がそれほど深いものだと思っていない。友達と言ってもいいけど、同級生の友達とは違うし、先輩なのは間違いないけど、部活の先輩とは違う。
偶然の出会いとちょっとした騒動から繋がった不思議な縁。
だからこそ、清水先輩が3年生になって少し環境が変われば、この関係性は変わるものだと思っていた。
「清水先輩って、茶道部だと普段どんな感じなんですか?」
「なんだ改まって。茶道部は……お茶を立てたり飲んだりしている」
「いえ、そういうことじゃなくて、空き時間に部員とどんな風に話しているとか、そういうのです」
「部員と? それも喋ったことあるじゃないか。自分で言うのもなんだが、私の愛想が良くなったから色々話せるようになったと」
「その色々をもっと詳しく聞きたいです」
「く、詳しく? うーむ……」
珍しく清水先輩を困らせてしまったけど、僕は食い下がる。先日野島さんから言われてしまったけど、僕はあまり清水先輩自身のことを詳しく聞いてこなかった。
「本当に何でもない話だ。こうやって良助と話している時みたいな。この前は……表面張力の話をした」
「随分マニアックな話題ですね……」
「し、仕方ないだろう。その時私の中では表面張力の話題しかなかったんだから。良助は私の興味が転々とするの知ってるじゃないか」
「そうですけど……表面張力」
自分で繰り返して笑ってしまった僕に対して、清水先輩は少し頬を膨らませて不服そうにする。
「もうこの話はやめよう。急にどうしたんだ、私の部活の話なんて」
「あんまり聞いたことなかったから聞いてみたくなったんです。野島さんから僕の話を聞いていることも全然知らなかったわけですし」
「あれは実香の方から話してきただけだから……」
「悪いって言ってるわけじゃないんですよ。ただ、それを聞いたから茶道部での言動が気になっちゃって」
「そんなに気になってるなら部活見学に来れば良いじゃないか」
清水先輩はさらりとそう言う。
「いや、見学するのはちょっと……」
「別に見学や入部はいつやってもいいはずだぞ? 茶道部にも男子はいるし、兼部している奴もいる」
「兼部させる方向性で話してます?」
「うむ。そうなったら面白そうだ」
「面白そうって……」
「だって、部活でも良助と一緒なら話せる時間が増えるじゃないか」
そう言いながら清水先輩は微笑む。その発言がからかうためか、本気で言っているのか……僕にはわかる。わかってしまうくらいには、清水先輩と話しているのだ。
それだけの時間を過ごしたのに、今まで清水先輩のことを詳しく聞こうとしなかったは、ほんの少し前だと単に気付いてないだけだった。それ以外にも話す話題は無限にあるのだから。
でも、最近の僕は……聞けなかったんだと思う。その先にあるものを聞いてしまうと、清水先輩との関係がわからなくなる気がして。
そんな僕が今日聞いてしまったのは気まぐれか、好奇心か、それとも別の何かか。同じくらい時間を過ごした清水先輩にはどう見えているんだろう。
今日は肌寒いけれど快晴だった。だから、昨日天気予報を見た時点で、清水先輩から散歩へ行こうと誘われる予感がしていたのかもしれない。
3年生になった清水先輩は僕が想像していたよりもあまり変わっていなかった。
いや、3年生になったからといって1年中忙しくなるわけじゃないし、部活でも普通に先輩方が来てくれるのだから、意外なことのように言うのは本当なら間違っているのだろう。
だけど、未だに僕は清水先輩との関係性がそれほど深いものだと思っていない。友達と言ってもいいけど、同級生の友達とは違うし、先輩なのは間違いないけど、部活の先輩とは違う。
偶然の出会いとちょっとした騒動から繋がった不思議な縁。
だからこそ、清水先輩が3年生になって少し環境が変われば、この関係性は変わるものだと思っていた。
「清水先輩って、茶道部だと普段どんな感じなんですか?」
「なんだ改まって。茶道部は……お茶を立てたり飲んだりしている」
「いえ、そういうことじゃなくて、空き時間に部員とどんな風に話しているとか、そういうのです」
「部員と? それも喋ったことあるじゃないか。自分で言うのもなんだが、私の愛想が良くなったから色々話せるようになったと」
「その色々をもっと詳しく聞きたいです」
「く、詳しく? うーむ……」
珍しく清水先輩を困らせてしまったけど、僕は食い下がる。先日野島さんから言われてしまったけど、僕はあまり清水先輩自身のことを詳しく聞いてこなかった。
「本当に何でもない話だ。こうやって良助と話している時みたいな。この前は……表面張力の話をした」
「随分マニアックな話題ですね……」
「し、仕方ないだろう。その時私の中では表面張力の話題しかなかったんだから。良助は私の興味が転々とするの知ってるじゃないか」
「そうですけど……表面張力」
自分で繰り返して笑ってしまった僕に対して、清水先輩は少し頬を膨らませて不服そうにする。
「もうこの話はやめよう。急にどうしたんだ、私の部活の話なんて」
「あんまり聞いたことなかったから聞いてみたくなったんです。野島さんから僕の話を聞いていることも全然知らなかったわけですし」
「あれは実香の方から話してきただけだから……」
「悪いって言ってるわけじゃないんですよ。ただ、それを聞いたから茶道部での言動が気になっちゃって」
「そんなに気になってるなら部活見学に来れば良いじゃないか」
清水先輩はさらりとそう言う。
「いや、見学するのはちょっと……」
「別に見学や入部はいつやってもいいはずだぞ? 茶道部にも男子はいるし、兼部している奴もいる」
「兼部させる方向性で話してます?」
「うむ。そうなったら面白そうだ」
「面白そうって……」
「だって、部活でも良助と一緒なら話せる時間が増えるじゃないか」
そう言いながら清水先輩は微笑む。その発言がからかうためか、本気で言っているのか……僕にはわかる。わかってしまうくらいには、清水先輩と話しているのだ。
それだけの時間を過ごしたのに、今まで清水先輩のことを詳しく聞こうとしなかったは、ほんの少し前だと単に気付いてないだけだった。それ以外にも話す話題は無限にあるのだから。
でも、最近の僕は……聞けなかったんだと思う。その先にあるものを聞いてしまうと、清水先輩との関係がわからなくなる気がして。
そんな僕が今日聞いてしまったのは気まぐれか、好奇心か、それとも別の何かか。同じくらい時間を過ごした清水先輩にはどう見えているんだろう。
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