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2年生1学期
4月21日(木)曇りのち雨 拡散する大山亜里沙その2
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雨でまた気温が下がった木曜日。今週も世界史の授業中の大山さんは寝てはいなかったけど、意識が飛んでしまったらしく、ノートを写させて欲しいと頼んできた。
それに対して、僕は次からはきちんと授業を受けさせるために色々言ってみるけど、最終的には何故か僕の方が折れて、結局ノートを貸してしまった。
「はい、うぶクン。こちらをどうぞ」
そんな中、3時間の休み時間に大山さんは紙パックのジュースを僕に差し出す。
「ど、どうしたの?」
「ノートのお礼。1年生の時は後回しにすることが多かったケド、2年生からは定期的にやっておこうと思って」
「いや、お礼が欲しくて色々言ってるわけじゃないんだけど」
「それとこれとは別だから。とりあえず受け取っておいて」
「ありがとう……これ、自販機じゃなくて購買で売ってるやつ?」
「そうそう! 今日はお昼買わなきゃいけなかったから、ちょうどいいタイミングだと思って。このヨーグルトとかミルクティーの紙パックは購買じゃないと買えないし。というか、他の店でも見なくない?」
「確かに。専売なのかな」
「あっ、そういえば、さっき購買の前で変な人と会ってさ」
「変な人……」
「いや、変は言い過ぎか。購買から少し離れたところで唸りながら悩んでる……たぶん先輩?がいて」
そう言われた途端、僕は思い当たる状況と人物がすぐに浮かんだ。
「へ、へぇ……」
「髪が長くて、顔立ちもかなり整ってる女子で、なんかどっかで見たコトあるような気がするんだケド……思い出せない」
「そ、そうなんだ」
「……うぶクンは心当たりない?」
「な、なんで僕があると思ったの?」
「いや、そのどっかで見たがうぶクンに関わることだったような……あー! 思い出した! いつだかうぶクンと女子の先輩が一緒に歩いてるのをみんな見たってやつ!」
「……清水先輩のこと?」
「たぶん、その先輩だったと思う!」
大山さんはすっきりした顔でそう言う。それに対して僕はやっぱりそうかという顔になった。
「ていうか、うぶクンわかってたんじゃない?」
「まぁ、なんとなくは」
「じゃあ、言ってくれたらいいじゃん」
「確信がなかったから……それにしてもまた迷ってたんだ」
「言い方は悪いかもだケド、優柔不断なカンジなの?」
「そういうわけじゃなくて、購買をよく使うせいで食べ飽きてるらしくて。それでなかなか選べなくなってるんだ」
「……コンビニしたら良くない?」
「……ごもっともです」
そもそも清水先輩はあまり食に興味がなくて購買で済ませようとしているところがあるのだけど、詳しく言っても仕方ないと思って、大山さんにはそう返しておいた。
「それでさ……結局、その清水先輩とうぶクンはどういう関係なの? 文芸部の先輩じゃないんでしょ?」
しかし、大山さんはそれで話を終わりにせず更に深掘りしてくる。
「どうと言われても……たまたま知り合った先輩・後輩としか言えない」
「えー!? そのたまたまが気になるんだケド……今度見かけたら話しかけてみようかなぁ」
「えっ!?」
「なーんてね。うぶクンが本当にイヤなら絶対しないから」
「イヤではないし、話しかけるのは自由だと思うけど、いきなりよく知らない先輩に話しかけるの怖くないの?」
「まぁ、本当に知らなかったからコワいかもだケド、うぶクンの知り合いって知ってるから大丈夫じゃない?」
大山さんはさも当然のように言うので、僕は目を丸くした。僕からすればそれがよく知らない状態なんだけど、大山さんにとってはそうじゃないらしい。
そうこうしているうちにチャイムが鳴ったのでこの話は流れてしまったけど、もしも大山さんが今度清水先輩を見かけることがあれば、接触する可能性があるのかもしれない。
……いや、違う。いつの間にか購買の話に逸らされて、ノートの件をすっかり忘れていた。
それに対して、僕は次からはきちんと授業を受けさせるために色々言ってみるけど、最終的には何故か僕の方が折れて、結局ノートを貸してしまった。
「はい、うぶクン。こちらをどうぞ」
そんな中、3時間の休み時間に大山さんは紙パックのジュースを僕に差し出す。
「ど、どうしたの?」
「ノートのお礼。1年生の時は後回しにすることが多かったケド、2年生からは定期的にやっておこうと思って」
「いや、お礼が欲しくて色々言ってるわけじゃないんだけど」
「それとこれとは別だから。とりあえず受け取っておいて」
「ありがとう……これ、自販機じゃなくて購買で売ってるやつ?」
「そうそう! 今日はお昼買わなきゃいけなかったから、ちょうどいいタイミングだと思って。このヨーグルトとかミルクティーの紙パックは購買じゃないと買えないし。というか、他の店でも見なくない?」
「確かに。専売なのかな」
「あっ、そういえば、さっき購買の前で変な人と会ってさ」
「変な人……」
「いや、変は言い過ぎか。購買から少し離れたところで唸りながら悩んでる……たぶん先輩?がいて」
そう言われた途端、僕は思い当たる状況と人物がすぐに浮かんだ。
「へ、へぇ……」
「髪が長くて、顔立ちもかなり整ってる女子で、なんかどっかで見たコトあるような気がするんだケド……思い出せない」
「そ、そうなんだ」
「……うぶクンは心当たりない?」
「な、なんで僕があると思ったの?」
「いや、そのどっかで見たがうぶクンに関わることだったような……あー! 思い出した! いつだかうぶクンと女子の先輩が一緒に歩いてるのをみんな見たってやつ!」
「……清水先輩のこと?」
「たぶん、その先輩だったと思う!」
大山さんはすっきりした顔でそう言う。それに対して僕はやっぱりそうかという顔になった。
「ていうか、うぶクンわかってたんじゃない?」
「まぁ、なんとなくは」
「じゃあ、言ってくれたらいいじゃん」
「確信がなかったから……それにしてもまた迷ってたんだ」
「言い方は悪いかもだケド、優柔不断なカンジなの?」
「そういうわけじゃなくて、購買をよく使うせいで食べ飽きてるらしくて。それでなかなか選べなくなってるんだ」
「……コンビニしたら良くない?」
「……ごもっともです」
そもそも清水先輩はあまり食に興味がなくて購買で済ませようとしているところがあるのだけど、詳しく言っても仕方ないと思って、大山さんにはそう返しておいた。
「それでさ……結局、その清水先輩とうぶクンはどういう関係なの? 文芸部の先輩じゃないんでしょ?」
しかし、大山さんはそれで話を終わりにせず更に深掘りしてくる。
「どうと言われても……たまたま知り合った先輩・後輩としか言えない」
「えー!? そのたまたまが気になるんだケド……今度見かけたら話しかけてみようかなぁ」
「えっ!?」
「なーんてね。うぶクンが本当にイヤなら絶対しないから」
「イヤではないし、話しかけるのは自由だと思うけど、いきなりよく知らない先輩に話しかけるの怖くないの?」
「まぁ、本当に知らなかったからコワいかもだケド、うぶクンの知り合いって知ってるから大丈夫じゃない?」
大山さんはさも当然のように言うので、僕は目を丸くした。僕からすればそれがよく知らない状態なんだけど、大山さんにとってはそうじゃないらしい。
そうこうしているうちにチャイムが鳴ったのでこの話は流れてしまったけど、もしも大山さんが今度清水先輩を見かけることがあれば、接触する可能性があるのかもしれない。
……いや、違う。いつの間にか購買の話に逸らされて、ノートの件をすっかり忘れていた。
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