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1年生3学期
3月15日(火)曇りのち晴れ 岸本路子の成長その14
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3月も折り返しの火曜日。この日は文芸部で全体ミーティングをした後、先週決まった新しい部長と副部長の細かい引き継ぎを説明される。
直近にある初めての仕事は新入生を勧誘するためのポスターや配布するチラシについて考えることで、作成自体は得意な人に任せてもいいけど、全体的な管理は部長と副部長が中心に行っていくことになる。
「まー、そんなにガチガチに作成しなきゃいけないわけでもないから、暇な時間に考えるくらいで大丈夫だよー 実際、入りたい人はポスターなんて関係なく来るもんだしー」
森本先輩はそう言うけれど、部活動としての存在感を示すためにはポスターやチラシも手を抜かない方がいいとは思う。最もその辺りのデザインや誘い文句のセンスがあると言われると別だけど。
「わかりました。産賀くんと一緒に考えておきます。いいよね、産賀くん?」
「えっ!? ああ、うん……」
不意に岸本さんから振られて僕はキョドってしまった。昨日はホワイトデーという勢いに乗って何とか話せていたけど……花園さんが言っていたことはまだ解決していない。
でも、改めてげんこつドーナツを食べた感想を貰ったり、少し喋ったりした分には、特に何かを感じることはない。
いや、そもそもの話、特別な感情というのは僕が想像しているものと全く違うものかもしれない。たとえば尊敬とか、同感とか、そういったものも特別な感情と言えるはずだ。
「ウーブ君、何悩んでるの?」
そんな状態の僕を見て声をかけたのはソフィア先輩だった。
「な、悩んでるように見えました?」
「考えごとっていうよりは悩んでる感じだったよ? 副部長で色々やることもあると思うけど、何かあったらソフィアを頼ってね。ソフィアは部長も副部長もやってないけど、近くで見ててわかることもあると思うから!」
「ありがとうございます。でも、今悩んでるのはそれとは別で……」
「ええー!? なになに? 何があったの!?」
放っておいて貰うつもりが逆に興味を持たせてしまった。悩んでいるのに少し楽し気な食い付き方をされるのは僕の悩みが見透かされているのだろうか。
「そんな大したことではないんで……」
「昨日何か起こったとか?」
「昨日……は特に何も」
「それじゃあ、1ヶ月前?」
「1ヶ月前? 先月に何かありましたっけ?」
「いやいや、ウーブ君。昨日が何の日か忘れちゃったの?」
そう指摘されて僕は理解した。ソフィア先輩は僕の悩みがバレンタイン及びホワイトデーに関わることだと思っていることを。
「ソフィア先輩、残念ながらそういう悩みじゃないんですよ」
「えっ、そうなの? ……ゴメン。真剣に悩んでたのにちょっと野次馬っぽく聞いちゃって」
「いえいえ。でも、なんでホワイトデーで悩んでると思ったんですか?」
「それは……」
ソフィア先輩は目線をとある人物に向けた。それは今も森本先輩へ熱心に質問している岸本さんだった。
「なんか最近の岸本ちゃんが……」
「き、岸本さんが?」
「……やっぱり何でもない! ウーブ君の悩みには関係ないもんね」
「えっ!? いや、それは……」
「ところで、本当の悩みについても相談しても大丈夫だよ? もうすぐ進級だし、クラス替えの不安とか、勉強に付いていけるとか、色々あるよね」
「あっ……そ、そうですねー」
何か貴重な意見が聞けそうだったのに誤魔化したせいで聞き逃してしまった。
その後もさっきの話の続きをと言うわけにもいかず、僕はやんわりと悩みそうなことをソフィア先輩に話す時間を過ごした。
今度、ソフィア先輩が気にかけてくれる時があれば……素直に話せるだろうか。聞いてみたいようで、聞かない方がいいような、微妙な感じがする。
直近にある初めての仕事は新入生を勧誘するためのポスターや配布するチラシについて考えることで、作成自体は得意な人に任せてもいいけど、全体的な管理は部長と副部長が中心に行っていくことになる。
「まー、そんなにガチガチに作成しなきゃいけないわけでもないから、暇な時間に考えるくらいで大丈夫だよー 実際、入りたい人はポスターなんて関係なく来るもんだしー」
森本先輩はそう言うけれど、部活動としての存在感を示すためにはポスターやチラシも手を抜かない方がいいとは思う。最もその辺りのデザインや誘い文句のセンスがあると言われると別だけど。
「わかりました。産賀くんと一緒に考えておきます。いいよね、産賀くん?」
「えっ!? ああ、うん……」
不意に岸本さんから振られて僕はキョドってしまった。昨日はホワイトデーという勢いに乗って何とか話せていたけど……花園さんが言っていたことはまだ解決していない。
でも、改めてげんこつドーナツを食べた感想を貰ったり、少し喋ったりした分には、特に何かを感じることはない。
いや、そもそもの話、特別な感情というのは僕が想像しているものと全く違うものかもしれない。たとえば尊敬とか、同感とか、そういったものも特別な感情と言えるはずだ。
「ウーブ君、何悩んでるの?」
そんな状態の僕を見て声をかけたのはソフィア先輩だった。
「な、悩んでるように見えました?」
「考えごとっていうよりは悩んでる感じだったよ? 副部長で色々やることもあると思うけど、何かあったらソフィアを頼ってね。ソフィアは部長も副部長もやってないけど、近くで見ててわかることもあると思うから!」
「ありがとうございます。でも、今悩んでるのはそれとは別で……」
「ええー!? なになに? 何があったの!?」
放っておいて貰うつもりが逆に興味を持たせてしまった。悩んでいるのに少し楽し気な食い付き方をされるのは僕の悩みが見透かされているのだろうか。
「そんな大したことではないんで……」
「昨日何か起こったとか?」
「昨日……は特に何も」
「それじゃあ、1ヶ月前?」
「1ヶ月前? 先月に何かありましたっけ?」
「いやいや、ウーブ君。昨日が何の日か忘れちゃったの?」
そう指摘されて僕は理解した。ソフィア先輩は僕の悩みがバレンタイン及びホワイトデーに関わることだと思っていることを。
「ソフィア先輩、残念ながらそういう悩みじゃないんですよ」
「えっ、そうなの? ……ゴメン。真剣に悩んでたのにちょっと野次馬っぽく聞いちゃって」
「いえいえ。でも、なんでホワイトデーで悩んでると思ったんですか?」
「それは……」
ソフィア先輩は目線をとある人物に向けた。それは今も森本先輩へ熱心に質問している岸本さんだった。
「なんか最近の岸本ちゃんが……」
「き、岸本さんが?」
「……やっぱり何でもない! ウーブ君の悩みには関係ないもんね」
「えっ!? いや、それは……」
「ところで、本当の悩みについても相談しても大丈夫だよ? もうすぐ進級だし、クラス替えの不安とか、勉強に付いていけるとか、色々あるよね」
「あっ……そ、そうですねー」
何か貴重な意見が聞けそうだったのに誤魔化したせいで聞き逃してしまった。
その後もさっきの話の続きをと言うわけにもいかず、僕はやんわりと悩みそうなことをソフィア先輩に話す時間を過ごした。
今度、ソフィア先輩が気にかけてくれる時があれば……素直に話せるだろうか。聞いてみたいようで、聞かない方がいいような、微妙な感じがする。
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