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1年生3学期
3月8日(火)晴れ 桜庭小織との追跡
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油断できないテスト4日目の火曜日。だけど、そんなテストがどうでもよくなる事態が発生した。いや、学生の本分は勉強だし、テスト自体は問題なく済ませられたけど、そのテストが始まる前の学校へ到着した時、僕はその光景を目にする。
(あっ、清水先輩……と男子の先輩……?)
朝の時間帯だと清水先輩に必ず会うわけじゃないからそれだけでも珍しいのに、清水先輩の隣に知らない男子がいるのは非常に珍しいことだった。
そして、二人はそのまま校内へ入る……と思いきや、逸れて校舎から逸れて行く。いったい何の用事があるのだろうと想像してみるけど、そこから導き出せるシチュエーションは1つしか思い付かなかった。
(いや、何追いかけようとしてるんだ、僕は……)
気付かないうちに僕もその方向へ足が向かっていたけど、何とか踏みとどまる。仮に想像できることだとしても覗きに行くのは無粋でしかない。
「でも、わざわざテスト期間中に呼び出すのはどうかと思わない?」
「それはそうですけ……わっ!? さ、桜庭先輩いつの間に!?」
振り向くとそこには若干不服そうな顔の桜庭先輩が経っていた。全く近付く気配がしなかったのは相変わらず怖い。
「さっきからそこにいたわ。今日は何だか嫌な予感がしたから」
「そんな予感で行動してるんですが……」
「でも、あながち間違ってないじゃない? ほら、追いましょう、産賀くん」
桜庭先輩はそう言いながら二人が行った方向に行き始めるので、僕は反論することなく付いて行ってしまった。一人で行くならどうかと思うけど、桜庭先輩が言うなら仕方ないと心の中で言い訳しながら。
そして、他の生徒は誰も通っていない場所を暫く進むと、校舎裏へ到着する。とはいってもこれ言葉通りに校舎の裏側に位置するだけで、広いスペースや言い伝えがある木が生えているわけではない。今いる場所だと化学実験室の窓から見える位置になる。
(産賀くん、ストップ)
僕と桜庭先輩はそこから見られように曲がり角から様子を窺う。そこには後ろ姿の清水先輩と向かい合う男子生徒が見えた。何やら会話を交わしているけど、内容までは聞き取れない。
今更ながら罪悪感が芽生え始めた僕は桜庭先輩の方を見ると、偶然目が合ってしまう。
「……戻りましょうか」
「えっ……」
「今日は大丈夫そうだし。産賀くんがこのまま覗きたいなら別だけど」
諦めるのが早いと感じつつも、このまま覗くのも悪いので僕と桜庭先輩は退散する。
「桜庭先輩は何か聞こえたんですか?」
「ううん。何も」
「えっ!? じゃあ、なんで……」
「別に二人きりで話すのは悪くないから。焦っていて何かあったらいけないと思ったけど、そんな感じじゃなかったし」
「は、はぁ……」
「……あら? 産賀くん、もしかして夢愛から何も聞いてない?」
微妙に会話が噛み合っていないと感じていた僕に対して、桜庭先輩はそう言う。
「何の話かわかりません」
「……ふーん」
「まさか、この前悩んでいた件ですか……?」
「そうそう。でも、内容は聞いてなかったんだ」
「は、はい。それでいったい……」
「夢愛が言ってないなら私の口からは言えないかな。今日付き合わせちゃったのは悪かったけど」
桜庭先輩にそう言われてしまうと、それ以上は聞けなかった。確かに話せる内容ならあの時に相談してくれても良かったはずだ。
「それでも今日のテストの影響が出たらいけないから、今日のこの状況と今の時期を元に推理してみて、とは言っておくわ」
「それ、余計気になるやつじゃないですか」
「そうかしら? それじゃあ、学年は違うけど、お互い学期末がんばりましょう」
桜庭先輩はにこやかにそう言いながら先に下駄箱へ行ってしまった。
そんなことがあって、最初に言った通りテストは終わったけど、その最中も清水先輩の件が頭によぎってしまい、帰りの松永には体調不良を心配されてしまった。
それが特に大きな問題にならなければ、僕が気にすることはない。清水先輩が誰とどうしようが、清水先輩の勝手だ。
でも、それで気にならなくなると言えば嘘になる。何にせよ僕ができるのは清水先輩からの報告を待つことだけだ。
(あっ、清水先輩……と男子の先輩……?)
朝の時間帯だと清水先輩に必ず会うわけじゃないからそれだけでも珍しいのに、清水先輩の隣に知らない男子がいるのは非常に珍しいことだった。
そして、二人はそのまま校内へ入る……と思いきや、逸れて校舎から逸れて行く。いったい何の用事があるのだろうと想像してみるけど、そこから導き出せるシチュエーションは1つしか思い付かなかった。
(いや、何追いかけようとしてるんだ、僕は……)
気付かないうちに僕もその方向へ足が向かっていたけど、何とか踏みとどまる。仮に想像できることだとしても覗きに行くのは無粋でしかない。
「でも、わざわざテスト期間中に呼び出すのはどうかと思わない?」
「それはそうですけ……わっ!? さ、桜庭先輩いつの間に!?」
振り向くとそこには若干不服そうな顔の桜庭先輩が経っていた。全く近付く気配がしなかったのは相変わらず怖い。
「さっきからそこにいたわ。今日は何だか嫌な予感がしたから」
「そんな予感で行動してるんですが……」
「でも、あながち間違ってないじゃない? ほら、追いましょう、産賀くん」
桜庭先輩はそう言いながら二人が行った方向に行き始めるので、僕は反論することなく付いて行ってしまった。一人で行くならどうかと思うけど、桜庭先輩が言うなら仕方ないと心の中で言い訳しながら。
そして、他の生徒は誰も通っていない場所を暫く進むと、校舎裏へ到着する。とはいってもこれ言葉通りに校舎の裏側に位置するだけで、広いスペースや言い伝えがある木が生えているわけではない。今いる場所だと化学実験室の窓から見える位置になる。
(産賀くん、ストップ)
僕と桜庭先輩はそこから見られように曲がり角から様子を窺う。そこには後ろ姿の清水先輩と向かい合う男子生徒が見えた。何やら会話を交わしているけど、内容までは聞き取れない。
今更ながら罪悪感が芽生え始めた僕は桜庭先輩の方を見ると、偶然目が合ってしまう。
「……戻りましょうか」
「えっ……」
「今日は大丈夫そうだし。産賀くんがこのまま覗きたいなら別だけど」
諦めるのが早いと感じつつも、このまま覗くのも悪いので僕と桜庭先輩は退散する。
「桜庭先輩は何か聞こえたんですか?」
「ううん。何も」
「えっ!? じゃあ、なんで……」
「別に二人きりで話すのは悪くないから。焦っていて何かあったらいけないと思ったけど、そんな感じじゃなかったし」
「は、はぁ……」
「……あら? 産賀くん、もしかして夢愛から何も聞いてない?」
微妙に会話が噛み合っていないと感じていた僕に対して、桜庭先輩はそう言う。
「何の話かわかりません」
「……ふーん」
「まさか、この前悩んでいた件ですか……?」
「そうそう。でも、内容は聞いてなかったんだ」
「は、はい。それでいったい……」
「夢愛が言ってないなら私の口からは言えないかな。今日付き合わせちゃったのは悪かったけど」
桜庭先輩にそう言われてしまうと、それ以上は聞けなかった。確かに話せる内容ならあの時に相談してくれても良かったはずだ。
「それでも今日のテストの影響が出たらいけないから、今日のこの状況と今の時期を元に推理してみて、とは言っておくわ」
「それ、余計気になるやつじゃないですか」
「そうかしら? それじゃあ、学年は違うけど、お互い学期末がんばりましょう」
桜庭先輩はにこやかにそう言いながら先に下駄箱へ行ってしまった。
そんなことがあって、最初に言った通りテストは終わったけど、その最中も清水先輩の件が頭によぎってしまい、帰りの松永には体調不良を心配されてしまった。
それが特に大きな問題にならなければ、僕が気にすることはない。清水先輩が誰とどうしようが、清水先輩の勝手だ。
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