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1年生3学期
2月24日(木)曇り時々晴れ 大山亜里沙の再誕その8
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休み明け特注の気だるさがある木曜日。この日も休み時間にボーっとしながらタイトルを考えていたけど、これと決められずに時間が過ぎていった。
「はぁ……」
「うぶクン、どうしたの? ため息なんかついて」
「えっ? 僕、ため息ついてた……?」
後ろの席から話しかけてくれた大山さんに頷かれて、僕は月曜日の清水先輩の姿を思い出す。内容は違うかもしれないけど、何か悩んでいる時は自然と出てきてしまうことがよくわかった。
「自分で気付かないレベルなんて何かあったの?」
「その……文芸部のことで悩んでて。近々提出する作品のタイトルがなかなか思い付かないんだ」
「ふーん。それはアタシが何か言えることはないかなー 他には?」
「えっ? ほ、他と言われても……」
「……こういう言い方はよくないかもだケド、それでため息つくのはちょっと大げさというか、さっきのため息はそんなカンジじゃない気がする」
大山さんは言葉を選びながら言う。それを指摘された僕は……図星だった。
もちろん、このままタイトルが決まらなければ最終的にため息をつくほど悩むことになるのだろうけど、さっきのため息は考える中でも頭によぎる岸本さんの件から出たものだった。
「うぶクンにはアタシも色々聞いて貰ってるし、たまには相談してみてもいいんだよ?」
「それは……」
「あっ、今話しづらかったら放課後でもいいケド」
僕が周りをきょろきょろと見回したので大山さんはそう付け加える。僕はその気遣いに対して一瞬考える。この件も時間が過ぎれば自然と解決できるとは思っているけど、モヤモヤを抱えたまま長くいるのは良くない。
「じゃあ……その少しだけ聞いて貰える?」
「もちろん。でも、次の休み時間ね?」
それから一つ授業を挟んだ後、僕は大山さんに先日のやり取りを相談する。個人名や詳しい内容はぼかしているけど、大山さんは真剣に耳を傾けてくれた。
「……だから、僕の意図と相手の受け取り方が食い違ったんだ」
「うぶクンでもそういうことあるんだ……」
「いや、僕は結構空気を読み切れないところあるよ」
「そうかな? どっちかっていうと空気を読み過ぎちゃったカンジがする。悪い意味じゃなくてね」
「でも、それで相手が不快になってるなら……」
「そこは一旦置いといて……うーん」
僕が口を開けばネガティブなことを言い出すので大山さんは遮って考え始める。その後に出てくるのは僕へのお叱りか、現状を打破する妙案か。今の僕では何も予想できないので大人しく待っていると、大山さんはズバリ言う。
「……わかんないわ!」
「ええっ!?」
「いや、全くわからないわけじゃないけど、詳しいところが端折られてるからちょっと難しくて。うぶクンとその子って今までもすれ違うようなことあったの?」
「こういう風になったのは初めてだから、たぶん今まではなかったと思う。僕が珍しく断るようなことを言ったのが悪かったんだろうけど……」
「それって、その子の中だとうぶクンならこうしてくれるって期待があったってことだよね。つまり、その子にとってのうぶクンは……いつも理想的な答えをくれる存在ってことじゃん」
「そ、そんな大そうなものじゃないよ」
「でも、実際に今回は期待と違ったせいで、思わずその子も違うと思ったワケなんだから、大げさでもないと思うケド?」
大山さんはからかうわけではなく、真面目にそう言うから僕はどう返せばいいかわからなくなったしまった。聞こえはいいけど、僕がイエスマンであり過ぎたせいで今回のことを招いてしまった気もしてしまうので、自分ではその通りだと言えない。
「まぁ、今回のことだけで完全に幻滅したーみたいなことはないと思うから次会う時も普通に話しかけるくらいがちょうどいいと思う。謝ろうにもうぶクン自身が悪いと思ってやったわけじゃないし。」
「それで上手くいけばいいんだけど……」
「うぶクン的にはその子がそんなに許してくれないと思ってるの?」
「そんなことはないよ。きっと話せば……」
「じゃあ、まずはもう一度話すところからってことで」
大山さんは強引にまとめてくるけど……言っていることは正しい。岸本さんは話せばわかってくれる確信があるのに、気まずいという理由で僕は逃げていた。
「……なんかアタシ、思った以上に相談受けるの下手かも。ごめんね、うぶクン。アタシから聞くって言ったのにいい答え出せなくて」
「ううん。聞いて貰えて良かった。ありがとう、大山さん」
大山さんと話せたことでやるべきことがわかったし、誰かに相談するのが苦手な僕にとって気付いて貰った上で聞いてくれたの本当にありがたいことだ。
「ホントに? だったら良かったケド………ともかく、アタシは応援してるから!」
その言葉に僕はもう一度お礼を言う。これで明日の覚悟は完了したけど……そういえばタイトルはまだ決まっていなかった。
「はぁ……」
「うぶクン、どうしたの? ため息なんかついて」
「えっ? 僕、ため息ついてた……?」
後ろの席から話しかけてくれた大山さんに頷かれて、僕は月曜日の清水先輩の姿を思い出す。内容は違うかもしれないけど、何か悩んでいる時は自然と出てきてしまうことがよくわかった。
「自分で気付かないレベルなんて何かあったの?」
「その……文芸部のことで悩んでて。近々提出する作品のタイトルがなかなか思い付かないんだ」
「ふーん。それはアタシが何か言えることはないかなー 他には?」
「えっ? ほ、他と言われても……」
「……こういう言い方はよくないかもだケド、それでため息つくのはちょっと大げさというか、さっきのため息はそんなカンジじゃない気がする」
大山さんは言葉を選びながら言う。それを指摘された僕は……図星だった。
もちろん、このままタイトルが決まらなければ最終的にため息をつくほど悩むことになるのだろうけど、さっきのため息は考える中でも頭によぎる岸本さんの件から出たものだった。
「うぶクンにはアタシも色々聞いて貰ってるし、たまには相談してみてもいいんだよ?」
「それは……」
「あっ、今話しづらかったら放課後でもいいケド」
僕が周りをきょろきょろと見回したので大山さんはそう付け加える。僕はその気遣いに対して一瞬考える。この件も時間が過ぎれば自然と解決できるとは思っているけど、モヤモヤを抱えたまま長くいるのは良くない。
「じゃあ……その少しだけ聞いて貰える?」
「もちろん。でも、次の休み時間ね?」
それから一つ授業を挟んだ後、僕は大山さんに先日のやり取りを相談する。個人名や詳しい内容はぼかしているけど、大山さんは真剣に耳を傾けてくれた。
「……だから、僕の意図と相手の受け取り方が食い違ったんだ」
「うぶクンでもそういうことあるんだ……」
「いや、僕は結構空気を読み切れないところあるよ」
「そうかな? どっちかっていうと空気を読み過ぎちゃったカンジがする。悪い意味じゃなくてね」
「でも、それで相手が不快になってるなら……」
「そこは一旦置いといて……うーん」
僕が口を開けばネガティブなことを言い出すので大山さんは遮って考え始める。その後に出てくるのは僕へのお叱りか、現状を打破する妙案か。今の僕では何も予想できないので大人しく待っていると、大山さんはズバリ言う。
「……わかんないわ!」
「ええっ!?」
「いや、全くわからないわけじゃないけど、詳しいところが端折られてるからちょっと難しくて。うぶクンとその子って今までもすれ違うようなことあったの?」
「こういう風になったのは初めてだから、たぶん今まではなかったと思う。僕が珍しく断るようなことを言ったのが悪かったんだろうけど……」
「それって、その子の中だとうぶクンならこうしてくれるって期待があったってことだよね。つまり、その子にとってのうぶクンは……いつも理想的な答えをくれる存在ってことじゃん」
「そ、そんな大そうなものじゃないよ」
「でも、実際に今回は期待と違ったせいで、思わずその子も違うと思ったワケなんだから、大げさでもないと思うケド?」
大山さんはからかうわけではなく、真面目にそう言うから僕はどう返せばいいかわからなくなったしまった。聞こえはいいけど、僕がイエスマンであり過ぎたせいで今回のことを招いてしまった気もしてしまうので、自分ではその通りだと言えない。
「まぁ、今回のことだけで完全に幻滅したーみたいなことはないと思うから次会う時も普通に話しかけるくらいがちょうどいいと思う。謝ろうにもうぶクン自身が悪いと思ってやったわけじゃないし。」
「それで上手くいけばいいんだけど……」
「うぶクン的にはその子がそんなに許してくれないと思ってるの?」
「そんなことはないよ。きっと話せば……」
「じゃあ、まずはもう一度話すところからってことで」
大山さんは強引にまとめてくるけど……言っていることは正しい。岸本さんは話せばわかってくれる確信があるのに、気まずいという理由で僕は逃げていた。
「……なんかアタシ、思った以上に相談受けるの下手かも。ごめんね、うぶクン。アタシから聞くって言ったのにいい答え出せなくて」
「ううん。聞いて貰えて良かった。ありがとう、大山さん」
大山さんと話せたことでやるべきことがわかったし、誰かに相談するのが苦手な僕にとって気付いて貰った上で聞いてくれたの本当にありがたいことだ。
「ホントに? だったら良かったケド………ともかく、アタシは応援してるから!」
その言葉に僕はもう一度お礼を言う。これで明日の覚悟は完了したけど……そういえばタイトルはまだ決まっていなかった。
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