上 下
324 / 942
1年生3学期

2月21日(月)曇り時々雪 清水夢愛の願望その7

しおりを挟む
 2月三週目の月曜日。今週末は文芸部の作品締切、来週の3月に入ってからは学期末テストがやって来るので、それらの準備や仕上げをしなければならない週だ。先々週辺りからずっとバレンタインに気を取られていたけど、今日から気を取り直していこうと思う。

 そんな日の放課後。僕が下校していると、この時間帯に会うのが恒例になっている清水先輩の後姿を見つける。清水先輩の家の方向とは全く違うところにいるけど、それ自体は珍しくないので僕は自転車から降りて話しかけることにした。

「清水先輩、お疲れさ――」

「はぁ……」

 清水先輩は大きなため息をついたので、僕は驚いて言葉が続かなかった。それから少し遅れて清水先輩は僕を認識する。

「ああ、良助。どうしたんだ? こんなところで」

「い、いえ。僕は普段の帰り道なので。清水先輩こそどうしたんですか? ため息なんてついて……」

「え。私、ため息ついてた……?」

 冗談ではなく本当に聞いているようだったので、僕は素直に頷く。

「そ、そうか……うーん」

「何かあったのなら話だけでも聞きますよ」

「それはありがたいんだが……この件はもう少し自分で考えてから聞いて貰った方がいい気がするんだ。だから、気持ちだけ受け取っておくよ」

「わ、わかりました……」

 いつもの感じですぐに聞くようにしてしまったけど、今回は勇み足だったようだ。悩み続けると良くないとは思うけど、自分で考える時間が大切なのもわかる。直近まで進路を悩んでいた清水先輩なら尚更その時間はいりそうだ。
 でも、先週は修学旅行であんなにテンションが上がっていたのに、こんな状態になるのはいったい何があったのだろうか。

「それにしても適当に歩いていても良助と会うのはいったい何なんだろうな。学校ならまだわかるが」

「その台詞、そのまま清水先輩に返したいです。今日も特に疑問を抱かなかったですけど、適当に歩いててこっちに来ることがびっくりです」

「もしかしたら、無意識に良助と会おうとしてここへ来てたのかもな」

「えっ!?」

「だって、本当に何も考えてなかったし。だから、良助のことを……なんかおかしなこと言ったか?」

 清水先輩は焦っている僕を見てそう言う。それに対して僕は首を振ることしかいなかった。

 清水先輩が無意識というからには本当に無意識なんだろうけど……突然そういう言い方をされてしまうと、変にドキドキさせられてしまう。というか、最近の僕は清水先輩の発言の受け取り方が良くない方向へ行きがちだ。
 自分自身のことは反省しつつ、清水先輩の件は良い方向へ解決するように願う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フルコンタクト!!

みそしょうゆ
青春
極真空手。それは、素早い一撃で攻撃する寸止めとは違い、決められた時間内に直接打撃によって相手にダメージを与え、基本的に頭部による蹴り技が当たって「技あり」。それが2個で「一本勝ち」となる競技である。 そんな極真空手の『型』競技でかつて天才小学生と呼ばれた佐々木心真(ささきしんま)はこの春高校生となる。好きなことは勿論空手………ではなく!空手からはちょっと距離をおいて、小説アプリの投稿者になっていた。心真と幼い頃から空手を一緒にしている親友は中学後半で空手の才能が花開き、全国大会2連覇中。週一回来るか来ないかのペースで道場に通うenjoy勢の心真と言わばガチ勢の親友。2人の物語は、1人の空手ファンの女の子が現れる時、大きく揺れ動く…!

婚約破棄を訴える夫候補が国賊だと知っているのは私だけ~不義の妹も一緒におさらば~

岡暁舟
恋愛
「シャルロッテ、君とは婚約破棄だ!」 公爵令嬢のシャルロッテは夫候補の公爵:ゲーベンから婚約破棄を突きつけられた。その背後にはまさかの妹:エミリーもいて・・・でも大丈夫。シャルロッテは冷静だった。

C-LOVERS

佑佳
青春
前半は群像的ラブコメ調子のドタバタ劇。 後半に行くほど赤面不可避の恋愛ストーリーになっていきますので、その濃淡をご期待くださいますと嬉しいです。 (各話2700字平均) ♧あらすじ♧ キザでクールでスタイリッシュな道化師パフォーマー、YOSSY the CLOWN。 世界を笑顔で満たすという野望を果たすため、今日も世界の片隅でパフォーマンスを始める。 そんなYOSSY the CLOWNに憧れを抱くは、服部若菜という女性。 生まれてこのかた上手く笑えたことのない彼女は、たった一度だけ、YOSSY the CLOWNの芸でナチュラルに笑えたという。 「YOSSY the CLOWNに憧れてます、弟子にしてください!」 そうして頭を下げるも煙に巻かれ、なぜか古びた探偵事務所を紹介された服部若菜。 そこで出逢ったのは、胡散臭いタバコ臭いヒョロガリ探偵・柳田良二。 YOSSY the CLOWNに弟子入りする術を知っているとかなんだとか。 柳田探偵の傍で、服部若菜が得られるものは何か──? 一方YOSSY the CLOWNも、各所で運命的な出逢いをする。 彼らのキラリと光る才に惹かれ、そのうちに孤高を気取っていたYOSSY the CLOWNの心が柔和されていき──。 コンプレックスにまみれた六人の男女のヒューマンドラマ。 マイナスとマイナスを足してプラスに変えるは、YOSSY the CLOWNの魔法?! いやいや、YOSSY the CLOWNのみならずかも? 恋愛も家族愛もクスッと笑いも絆や涙までてんこ盛り。 佑佳最愛の代表的物語、Returned U NOW!

スカートなんて履きたくない

もちっぱち
青春
齋藤咲夜(さいとうさや)は、坂本翼(さかもとつばさ)と一緒に 高校の文化祭を楽しんでいた。 イケメン男子っぽい女子の同級生の悠(はるか)との関係が友達よりさらにどんどん近づくハラハラドキドキのストーリーになっています。 女友達との関係が主として描いてます。 百合小説です ガールズラブが苦手な方は ご遠慮ください 表紙イラスト:ノノメ様

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

意味がわかると怖い話

井見虎和
ホラー
意味がわかると怖い話 答えは下の方にあります。 あくまで私が考えた答えで、別の考え方があれば感想でどうぞ。

劇中劇とエンドロール

nishina
青春
尾根暁は高校の演劇部に所属しながら、将来は女優を目指している。しかしオーディションは落選ばかり、家族には無駄な夢は諦めろと言われて燻る毎日を送っていた。 そんなある日、小説を書くのが趣味のクラスメイトの少年、加百葵と親しくなり演劇部のシナリオを依頼することとなる。 しかし、ひょんなことから練習中に演劇部員達は葵の書いたシナリオそっくりの世界に迷い込んでしまう。この世界が本当に葵のシナリオ通りなら、悪女のお姫様役の花色光と、彼女に処刑される魔女役である黒神梓はこの世界で死んでしまうことになる。暁と部員達は彼女らを助け、元の世界に戻る為に奮闘する。 小説家になろうでも連載中です。進みはあちらの方が早いですが、近い内に同じ進行になる予定です。

処理中です...