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1年生3学期

2月16日(水)曇り バレンタインのあとしまつ

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 我が高校の入試2日目となる水曜日。本日は面接の日だ。昨日に引き続いて1年前を頑張って思い出すと、待ち時間も見られているという教えられていたからひどく緊張した時間が続いていたような気がする。試験は自分との戦いだけど、面接は相手がいるからより緊張するものだと思う。

「りょーちゃん、昨日買った飲み物まだ冷蔵庫入ってる?」

 そんな中、今日も今日とて在校生は休みだから家にいるのだけど、なぜか昨日安心したはずの松永がまた遊びに来ていた。

「いや、どうせ家にいても暇だし、受験中はあくまで自主学習みたいな空気あるから遠くへ遊びに行くわけにもいかないじゃん?」

「だったらくつろいでないで勉強するか?」

「勘弁してよー」

 本当に昨日心配していた松永はどこへ行ってしまったのだろうか。今も伊月さんが面接をがんばっているというのに。

「それで飲み物は?」

「ある……って、待て松永!」

「えっ? 今更りょーちゃんの家の冷蔵庫でドン引きするようなことは……」

 いつの間にか松永が冷蔵庫の扉に手をかけていたので止めようとするけど、既に手遅れだった。松永の目に入ったのは……

「……わーお。チョコだらけだ」

 冷蔵コーナーの真ん中辺りをチョコレートが陣取っていた。

「もしかして、これ全部明莉ちゃんが交換したやつ?」

「全部じゃないけど、ほとんどそうだよ。なぜか配った数よりも貰った数の方が増えてる」

「まぁ、気合い入れて作っちゃう子もいるだろうなぁ。でも、これだけ貰ったのが一昨日って考えると結構多いな。りょーちゃんは食べ助けしないの?」

「できるわけないだろ。ちゃんと食べないと感想が言えないじゃないか」

「そうかもしれないけど、バレンタインのチョコなんて交換した時点でほとんど満足できそうだけどなぁ。何事も準備して始まる直前が楽しいものだし」

「そ、そういうものかな……?」

 確かに明莉からチョコを交換した報告を受けたけど、味についてはあげた方も貰った方も特に言及していなかった。それは松永が言う通り、バレンタインというイベントでお互いにチョコ交換した事実が大事なのかもしれない。

 しかし、そうなると……今の僕には困ることがある。

「松永……聞きたいことがある」

「えっ? 急にどうしたの? なんかカミングアウトする流れ?」

「実は……」

 それから僕はバレンタイン当日に岸本さんからチョコを貰った話をした。さっきの松永の理屈で言えば岸本さん的にはバレンタインの目的は果たせているのだろう。
 でも、岸本さんは渡す直前にやたら味のことを気にしていた。

「こういう場合……どうすればいいの?」

「どうするって、美味しいかったならそう言えばいいじゃん。むしろ当日に食べてから何も言わなかったの?」

「もちろん、帰ってから食べてお礼とちょっとした感想はLINEで送ったけど、あれだけ言ってから今度直接会った時に何か言った方がいいのかと思って」

「それはりょーちゃんの自由じゃない? 俺は岸本さんが普段から感想求めるタイプかわかんないから何とも言えない」

「そ、そうか……」

「あっ。りょーちゃんがチョコの感想を言うことで岸本さんを落とそうとしてるなら話は別だけど……」

「そんなわけないだろ!? 貰ったのは義理というか、友チョコというか……ともかくそういう感じじゃないから!」

「冗談だって。まー、初めて作ったんだし、直接言ってあげてもいいんじゃない?」

 松永はニヤニヤしながらそう言う。真面目に相談したのにそういう方向へ持って行かれるのはバレンタインだから仕方ないのだろうか。

「こういう話聞くと、普段のりょーちゃんの方がよっぽど心配性だと思うなぁ。昨日は俺のこと心配し過ぎとか言ってたけど」

「それは……自覚してる。だからこそ昨日の松永はちょっと珍しかった」

「そう? まぁ、俺にとって茉奈ちゃんはそういう対象ってだけ。りょーちゃんの場合は見知ってる人全員に対してそうなってるからなぁ」

「め、面目ない……」

「いやいや、そこがりょーちゃんのいいところでもあるから」

 松永がそうフォローしてくれるけど、僕からすれば難儀な部分だから困ってしまうのだ。なるべく良い方向に持っていければいいけど、大抵はネガティブな発想になってしまう。

 それはそれとして、松永の意見も貰ったので岸本さんへの感想は改めて直接言うことにした。その内容について悩むことについては……良い方向に持っていけるようにしたい。
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