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1年生3学期
2月12日(土)晴れ 明莉との日常その35
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三連休二日目かつバレンタインが明後日に迫った土曜日。この日の明莉が帰って来た15時頃に本番のチョコを作り始めることになる。仮に今日の出来が悪かったとしても明日を予備日にしておけば何とか間に合うからだ。
そして、この前のお試しの時は僕もそこそこ手伝ったけど、今回は明莉自身が作る必要があるから僕は見守る役になる。
「りょうちゃん……最初のチョコ刻むのって包丁じゃないとダメ?」
「ま、まぁ、溶かせればいいとは思うけど、一応挑戦してみたら?」
「あかりの血液が混ざった魔の生チョコが完成しちゃうかもしれないよ?」
「こわいこと言わないで。ゆっくり切ればいけるから」
明莉は決して手先が不器用なわけではないし、怖がりなわけでもないけど、料理に関して言えば恐怖心や面倒くささが勝ってしまうらしい。
それなのに今回手作りチョコに挑むのはやはり周りに合わせるためなのだろうか。
そんな明莉は何とか下準備を終えると、次は刻んだチョコに鍋で温めた生クリームと混ぜ合わせて完全に溶かす工程に移っていく。
今回の生チョコ作りで一番大変なのはこの部分……というかこの作業が全てと言える。既存品のチョコと生クリームを使えば味のベースは完成しているし、この後は冷蔵する時間になるので難しい作業はほとんどないと言っていい。
「生クリーム、温まったかな……あっつ!」
「いきなり鍋に触ったら駄目じゃないか!? ミトン付けて!」
「それで、これをさっきのチョコ……あれ? 鍋とボウルのどっちに入れるんだっけ?」
「ボウルだよ。別に暗記テストじゃないんだから一旦止まってレシピ確認すればいいから」
「いやぁ、そこはりょうちゃんに任せようかなぁと」
明莉はそう言いながら鍋の方にチョコを入れようとしていたので、僕は「ストップ!」と大きな声を出す。
「ごめんごめん。でも、最終的に溶かすんだからどっちに入れても一緒じゃない?」
「そうかもしれないけど、何事も最初はレシピ通りにやるのが一番いいの。それで上手くできなかったら元も子もないだろう?」
「さすがりょうちゃん、料理担当だけあるね」
普段なら明莉に褒められると無条件に嬉しいけど、今回ばかりは少し心配になった。
これはシスコンだからひいき目に見ているとかじゃなくて、普段の明莉はこんなにポンコツではない。
だけど、割と工程が少ないこの生チョコ作りでもひやひやしてしまうのは、明莉と料理が何か根本的な部分で噛み合わないせいだと思う。
その後はなるべく口を出すまいと思っていたけど、レシピから逸れそうになる度に僕は注意することになった。一応、作業には一切手を出していないので、音声ガイドに従って作っていったと考えれば明莉の手作りと言えるものだろう。
「あとは1時間ほど待つだけだよね! 終わったー!」
「お、おめでとう……って、まだ切り分けと最後のトッピングが残ってるぞ。砂糖やココアパウダーをまぶすか、それともオリジナルにするか」
「忘れてないって。オリジナル要素にするなら……ゴマとかかけてみる?」
「不味くはならないと思うけど、よりによって本番前にそれ試していくの……?」
「意外と美味しいかもしれないし。大丈夫、人数分は残すから!」
その言い方からして、明莉は今日作るまでトッピングのことは何も考えていなかったようだ。
それから切り分けやトッピングでも危ない場面はあったけど、明莉はバレンタインの手作りチョコを完成させた。
やり切った明莉は嬉しそうに完成品を冷蔵庫へ納める中、明莉以上に疲れている僕を見て母さんは「お疲れ」と声をかけてくれる。
たぶん、母さんが教えた方が明莉をもっと上手く誘導できたと思うけど、平日忙しい中でそれまで任せるのは忍びないので、これで良かったのだと思う。
そして、この前のお試しの時は僕もそこそこ手伝ったけど、今回は明莉自身が作る必要があるから僕は見守る役になる。
「りょうちゃん……最初のチョコ刻むのって包丁じゃないとダメ?」
「ま、まぁ、溶かせればいいとは思うけど、一応挑戦してみたら?」
「あかりの血液が混ざった魔の生チョコが完成しちゃうかもしれないよ?」
「こわいこと言わないで。ゆっくり切ればいけるから」
明莉は決して手先が不器用なわけではないし、怖がりなわけでもないけど、料理に関して言えば恐怖心や面倒くささが勝ってしまうらしい。
それなのに今回手作りチョコに挑むのはやはり周りに合わせるためなのだろうか。
そんな明莉は何とか下準備を終えると、次は刻んだチョコに鍋で温めた生クリームと混ぜ合わせて完全に溶かす工程に移っていく。
今回の生チョコ作りで一番大変なのはこの部分……というかこの作業が全てと言える。既存品のチョコと生クリームを使えば味のベースは完成しているし、この後は冷蔵する時間になるので難しい作業はほとんどないと言っていい。
「生クリーム、温まったかな……あっつ!」
「いきなり鍋に触ったら駄目じゃないか!? ミトン付けて!」
「それで、これをさっきのチョコ……あれ? 鍋とボウルのどっちに入れるんだっけ?」
「ボウルだよ。別に暗記テストじゃないんだから一旦止まってレシピ確認すればいいから」
「いやぁ、そこはりょうちゃんに任せようかなぁと」
明莉はそう言いながら鍋の方にチョコを入れようとしていたので、僕は「ストップ!」と大きな声を出す。
「ごめんごめん。でも、最終的に溶かすんだからどっちに入れても一緒じゃない?」
「そうかもしれないけど、何事も最初はレシピ通りにやるのが一番いいの。それで上手くできなかったら元も子もないだろう?」
「さすがりょうちゃん、料理担当だけあるね」
普段なら明莉に褒められると無条件に嬉しいけど、今回ばかりは少し心配になった。
これはシスコンだからひいき目に見ているとかじゃなくて、普段の明莉はこんなにポンコツではない。
だけど、割と工程が少ないこの生チョコ作りでもひやひやしてしまうのは、明莉と料理が何か根本的な部分で噛み合わないせいだと思う。
その後はなるべく口を出すまいと思っていたけど、レシピから逸れそうになる度に僕は注意することになった。一応、作業には一切手を出していないので、音声ガイドに従って作っていったと考えれば明莉の手作りと言えるものだろう。
「あとは1時間ほど待つだけだよね! 終わったー!」
「お、おめでとう……って、まだ切り分けと最後のトッピングが残ってるぞ。砂糖やココアパウダーをまぶすか、それともオリジナルにするか」
「忘れてないって。オリジナル要素にするなら……ゴマとかかけてみる?」
「不味くはならないと思うけど、よりによって本番前にそれ試していくの……?」
「意外と美味しいかもしれないし。大丈夫、人数分は残すから!」
その言い方からして、明莉は今日作るまでトッピングのことは何も考えていなかったようだ。
それから切り分けやトッピングでも危ない場面はあったけど、明莉はバレンタインの手作りチョコを完成させた。
やり切った明莉は嬉しそうに完成品を冷蔵庫へ納める中、明莉以上に疲れている僕を見て母さんは「お疲れ」と声をかけてくれる。
たぶん、母さんが教えた方が明莉をもっと上手く誘導できたと思うけど、平日忙しい中でそれまで任せるのは忍びないので、これで良かったのだと思う。
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