産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

文字の大きさ
上 下
314 / 942
1年生3学期

2月11日(金)晴れ 清水夢愛の願望その6 

しおりを挟む
 建国記念日の金曜日。僕は三連休の始まりをダラダラと過ごす予定だったけど、平日と変わらない午前6時過ぎに一件の通知が入る。

――良助!お土産買ってきたぞ!

 それは昨日の夕方頃に帰宅したであろう清水先輩からのメッセージだった。それに続けて「暇そうなら来てくれ」と送られてきたので僕は出かける準備を始める。
 確かに行く前にそういう約束をしたけれど、帰って来て早々に渡されることになるとは思っていなかった。

「良助、久しぶ……いや、よく考えたら良助とは必ず会うわけじゃないからそんなに久しぶり感はないな」

「気持ちは何となくわかりますよ。修学旅行で遠くに行ってたわけですし。でも、昨日の今日で疲れてないんですか?」

「疲れてはいたが、昨日は帰ってからすぐ寝たからもう回復したよ」

 そう言いながら体を動かして見せる清水先輩は寝起きの僕よりも元気そうだった。

「それは良かったです。予定的にはハードそうに見えたので、今日明日辺りは動けないと思ってました」

「予定自体はそれほど詰まってたわけじゃないんだが、天気の影響で色々あったりしたからなぁ。でも、雪は十二分に楽しめたそ。やっぱり本場は違うな」

 その楽しそうな顔は写真で見た時と同じ表情だった。月曜日にメッセージを貰った後も昨日以外は何らかのメッセージを貰っていて、写真も数枚送られていたので、僕も先輩から逐一報告を受ける松永と似たような状況になっていた。
 そのおかげか僕も清水先輩とそれほど久しぶりに会う感じがしていない。

「おっと。本題に入らないとな。甘いものだけでも選択肢が多くて迷ったが、間違いなさそうなやつは選んだつもりだ」

「ありがとうございます。これは……」

「北海道だと有名なチョコのメーカーらしい。何となくのイメージだが、北海道だとホワイトチョコがあった方がいいと思って色々入ってるやつにして……良助?」

「……あっ、すみません! 本当にありがとうございます!」

 説明を受けながら僕が思ってしまったのは……受け取る日が今日で良かったということだった。自意識過剰で考え過ぎではあると思うけど、もしも月曜日にこれを校内で受け取ることがあればたとえお土産とわかっていてもタイミングが悪い。

「それと小織が買った分も持ってきた。じゃがいもを使ったやつらしい」

「有名ですもんね。後でお礼を言っておかないと……」

「これで用事は終わったわけだが……ついでだから散歩に付き合ってくれないか? 荷物を持たせてしまうのは悪いけど」

「全然構いませんよ。修学旅行の詳しい話、もっと聞きたいですし」

「そうそう。それをちょうど話そうと思ってたんだ。まずは私が朝起きるところから……」

「そ、そこからですか?」

「それが色々とあったんだ。朝起きると……」

 それから数十分にわたって清水先輩の楽しい修学旅行体験記を聞くことになった。その話ぶりからすると、お土産を渡すのは前提だけど、話したかったからこんなに朝早くに呼んだのかもしれない。
 
 でも、LINEで散々報告した上でまた僕に話したいと思うのは……いや、何でもない。最近の僕は少々浮かれている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

放課後はネットで待ち合わせ

星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】 高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。 何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。 翌日、萌はルビーと出会う。 女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。 彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。 初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

処理中です...