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1年生3学期
2月11日(金)晴れ 清水夢愛の願望その6
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建国記念日の金曜日。僕は三連休の始まりをダラダラと過ごす予定だったけど、平日と変わらない午前6時過ぎに一件の通知が入る。
――良助!お土産買ってきたぞ!
それは昨日の夕方頃に帰宅したであろう清水先輩からのメッセージだった。それに続けて「暇そうなら来てくれ」と送られてきたので僕は出かける準備を始める。
確かに行く前にそういう約束をしたけれど、帰って来て早々に渡されることになるとは思っていなかった。
「良助、久しぶ……いや、よく考えたら良助とは必ず会うわけじゃないからそんなに久しぶり感はないな」
「気持ちは何となくわかりますよ。修学旅行で遠くに行ってたわけですし。でも、昨日の今日で疲れてないんですか?」
「疲れてはいたが、昨日は帰ってからすぐ寝たからもう回復したよ」
そう言いながら体を動かして見せる清水先輩は寝起きの僕よりも元気そうだった。
「それは良かったです。予定的にはハードそうに見えたので、今日明日辺りは動けないと思ってました」
「予定自体はそれほど詰まってたわけじゃないんだが、天気の影響で色々あったりしたからなぁ。でも、雪は十二分に楽しめたそ。やっぱり本場は違うな」
その楽しそうな顔は写真で見た時と同じ表情だった。月曜日にメッセージを貰った後も昨日以外は何らかのメッセージを貰っていて、写真も数枚送られていたので、僕も先輩から逐一報告を受ける松永と似たような状況になっていた。
そのおかげか僕も清水先輩とそれほど久しぶりに会う感じがしていない。
「おっと。本題に入らないとな。甘いものだけでも選択肢が多くて迷ったが、間違いなさそうなやつは選んだつもりだ」
「ありがとうございます。これは……」
「北海道だと有名なチョコのメーカーらしい。何となくのイメージだが、北海道だとホワイトチョコがあった方がいいと思って色々入ってるやつにして……良助?」
「……あっ、すみません! 本当にありがとうございます!」
説明を受けながら僕が思ってしまったのは……受け取る日が今日で良かったということだった。自意識過剰で考え過ぎではあると思うけど、もしも月曜日にこれを校内で受け取ることがあればたとえお土産とわかっていてもタイミングが悪い。
「それと小織が買った分も持ってきた。じゃがいもを使ったやつらしい」
「有名ですもんね。後でお礼を言っておかないと……」
「これで用事は終わったわけだが……ついでだから散歩に付き合ってくれないか? 荷物を持たせてしまうのは悪いけど」
「全然構いませんよ。修学旅行の詳しい話、もっと聞きたいですし」
「そうそう。それをちょうど話そうと思ってたんだ。まずは私が朝起きるところから……」
「そ、そこからですか?」
「それが色々とあったんだ。朝起きると……」
それから数十分にわたって清水先輩の楽しい修学旅行体験記を聞くことになった。その話ぶりからすると、お土産を渡すのは前提だけど、話したかったからこんなに朝早くに呼んだのかもしれない。
でも、LINEで散々報告した上でまた僕に話したいと思うのは……いや、何でもない。最近の僕は少々浮かれている。
――良助!お土産買ってきたぞ!
それは昨日の夕方頃に帰宅したであろう清水先輩からのメッセージだった。それに続けて「暇そうなら来てくれ」と送られてきたので僕は出かける準備を始める。
確かに行く前にそういう約束をしたけれど、帰って来て早々に渡されることになるとは思っていなかった。
「良助、久しぶ……いや、よく考えたら良助とは必ず会うわけじゃないからそんなに久しぶり感はないな」
「気持ちは何となくわかりますよ。修学旅行で遠くに行ってたわけですし。でも、昨日の今日で疲れてないんですか?」
「疲れてはいたが、昨日は帰ってからすぐ寝たからもう回復したよ」
そう言いながら体を動かして見せる清水先輩は寝起きの僕よりも元気そうだった。
「それは良かったです。予定的にはハードそうに見えたので、今日明日辺りは動けないと思ってました」
「予定自体はそれほど詰まってたわけじゃないんだが、天気の影響で色々あったりしたからなぁ。でも、雪は十二分に楽しめたそ。やっぱり本場は違うな」
その楽しそうな顔は写真で見た時と同じ表情だった。月曜日にメッセージを貰った後も昨日以外は何らかのメッセージを貰っていて、写真も数枚送られていたので、僕も先輩から逐一報告を受ける松永と似たような状況になっていた。
そのおかげか僕も清水先輩とそれほど久しぶりに会う感じがしていない。
「おっと。本題に入らないとな。甘いものだけでも選択肢が多くて迷ったが、間違いなさそうなやつは選んだつもりだ」
「ありがとうございます。これは……」
「北海道だと有名なチョコのメーカーらしい。何となくのイメージだが、北海道だとホワイトチョコがあった方がいいと思って色々入ってるやつにして……良助?」
「……あっ、すみません! 本当にありがとうございます!」
説明を受けながら僕が思ってしまったのは……受け取る日が今日で良かったということだった。自意識過剰で考え過ぎではあると思うけど、もしも月曜日にこれを校内で受け取ることがあればたとえお土産とわかっていてもタイミングが悪い。
「それと小織が買った分も持ってきた。じゃがいもを使ったやつらしい」
「有名ですもんね。後でお礼を言っておかないと……」
「これで用事は終わったわけだが……ついでだから散歩に付き合ってくれないか? 荷物を持たせてしまうのは悪いけど」
「全然構いませんよ。修学旅行の詳しい話、もっと聞きたいですし」
「そうそう。それをちょうど話そうと思ってたんだ。まずは私が朝起きるところから……」
「そ、そこからですか?」
「それが色々とあったんだ。朝起きると……」
それから数十分にわたって清水先輩の楽しい修学旅行体験記を聞くことになった。その話ぶりからすると、お土産を渡すのは前提だけど、話したかったからこんなに朝早くに呼んだのかもしれない。
でも、LINEで散々報告した上でまた僕に話したいと思うのは……いや、何でもない。最近の僕は少々浮かれている。
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