303 / 942
1年生3学期
1月31日(月)晴れ 大山亜里沙の再誕その5
しおりを挟む
1月最終日。しかし、僕の意識はその2週間後のバレンタインに向いていた。なので、昨日から暇な時間にチョコのレシピを見ている……のだけど、このレシピが無限に出てくるので非常に困っていた。
時期が近付いたというものあって、今年のトレンドだとか、ひと手間かけているように見えるだとか、とてもちょっと見ただけでは頭に入って来ないのだ。
ただ、そんな現状を一発で解決できる方法を僕は思いついていた。明莉が男子が好むチョコを聞いたように僕もチョコを手作りしていそうな女子に意見を聞けばいいのだ。
小学校の頃はそもそもお菓子の持ち込みが禁止だったから作っていたかわからないけど、中学生になると休み時間中にチョコの交換が行われていたことからその頃から恐らくチョコの手作りを始めている人も多いと思う。
「そんな感じでさー 参っちゃうよね」
そして、勝手なイメージだけど、今後ろの席で喋っている大山さんはそれに当てはまりそうな気がするのだ。そうであるなら話を聞けば手っ取り早くチョコに関して情報収集できる。
しかし……バレンタインが直前に迫る中、男子が女子にその話題を振るのはどうなのだろうかという気持ちがそれを実行に写すことを邪魔していた。
いや、別に妹の話と言えば何か思われることはないんだろうけど、やっぱり直接的に聞くのは何となく恥ずかしい。
「おや? どしたのうぶクン?」
「えっと……大山さんってお菓子作りって得意だったりする?」
「ホントにどしたの急に? 心理テストか何か?」
「ううん。ちょっとね」
そんなわけで、僕は非常に遠回りして大山さんの口からバレンタインの話を出させることにした。今思えば何とも無駄な努力なのだけど、そういうところは案外気にするタイプなのだ。
そのふわっとした質問に対して、大山さんは特に怪しむことなく考え始める。
「うーん……できないわけじゃないけど得意ってわけでもないかな。然るべき時じゃないと作らないカンジ」
「なるほどね。じゃあ、その然るべき時って言うのは……」
「そうだなぁ……たまに友達が家へ遊びに来た時にちょっと作ってみよう的な? でも、やってたのは小学校の時だけかなー」
「あっ、そういう……」
「なにが?」
「ううん、何でもない!」
答えにたどり着けると思ったけど、そう簡単にはいなかった。いや、この話は大山さんがバレンタインチョコを手作りしていないと成立しないからまずはそこから探るべきなのだろうか。何とかして僕からバレンタインを匂わせないようにする方法は――
「あっ。まさかうぶクン……バレンタインの話しようとしてる?」
「えっ!? い、いや、それはその……」
「もしかして、明莉ちゃんに何か言われたの?」
「べ、別にチョコが欲しいとかそんな話じゃ……あれ?」
一瞬で思惑がバレてしまったけど、明莉の話まで読まれてしまい僕は驚く。
「なんでわかったの……?」
「なんとなく? うぶクンが露骨にチョコ欲しいアピールするとは思えないし、何か聞きたそうな感じだったから、明莉ちゃん関連かなーって。わざわざアタシに聞くくらいだし」
大山さんの的確な指摘に僕は何も返せなかった。これは普段から僕が無意識に明莉の話をしているおかげなのか、それとも単に僕の施行が読まれやすいだけなのか。どちらにしても本当に大山さんは邪推することも引くこともなかったのだから最初から素直に話しておけば良かった。
「それでそれで! もしかして、明莉ちゃんに好きな人ができたカンジなの!?」
「それはないよ。友チョコの話だっから」
「えー ホントかなー? そうは言いつつも実はってことは……」
「そ、そんなことあるわけ……ないよね?」
「どうかなー? じゃあ、詳しい話を聞かせて貰いましょうか」
それから大山さんに詳しい事情を話すと、手作りチョコについて色々な情報を得られた。でも、それ以上に大山さんの察しの良さに驚く日だった。
大山さんがやたら明莉がそんなことを言いだした裏読みをしていることについては……その察しの良さが外れていることを願うばかりである。
時期が近付いたというものあって、今年のトレンドだとか、ひと手間かけているように見えるだとか、とてもちょっと見ただけでは頭に入って来ないのだ。
ただ、そんな現状を一発で解決できる方法を僕は思いついていた。明莉が男子が好むチョコを聞いたように僕もチョコを手作りしていそうな女子に意見を聞けばいいのだ。
小学校の頃はそもそもお菓子の持ち込みが禁止だったから作っていたかわからないけど、中学生になると休み時間中にチョコの交換が行われていたことからその頃から恐らくチョコの手作りを始めている人も多いと思う。
「そんな感じでさー 参っちゃうよね」
そして、勝手なイメージだけど、今後ろの席で喋っている大山さんはそれに当てはまりそうな気がするのだ。そうであるなら話を聞けば手っ取り早くチョコに関して情報収集できる。
しかし……バレンタインが直前に迫る中、男子が女子にその話題を振るのはどうなのだろうかという気持ちがそれを実行に写すことを邪魔していた。
いや、別に妹の話と言えば何か思われることはないんだろうけど、やっぱり直接的に聞くのは何となく恥ずかしい。
「おや? どしたのうぶクン?」
「えっと……大山さんってお菓子作りって得意だったりする?」
「ホントにどしたの急に? 心理テストか何か?」
「ううん。ちょっとね」
そんなわけで、僕は非常に遠回りして大山さんの口からバレンタインの話を出させることにした。今思えば何とも無駄な努力なのだけど、そういうところは案外気にするタイプなのだ。
そのふわっとした質問に対して、大山さんは特に怪しむことなく考え始める。
「うーん……できないわけじゃないけど得意ってわけでもないかな。然るべき時じゃないと作らないカンジ」
「なるほどね。じゃあ、その然るべき時って言うのは……」
「そうだなぁ……たまに友達が家へ遊びに来た時にちょっと作ってみよう的な? でも、やってたのは小学校の時だけかなー」
「あっ、そういう……」
「なにが?」
「ううん、何でもない!」
答えにたどり着けると思ったけど、そう簡単にはいなかった。いや、この話は大山さんがバレンタインチョコを手作りしていないと成立しないからまずはそこから探るべきなのだろうか。何とかして僕からバレンタインを匂わせないようにする方法は――
「あっ。まさかうぶクン……バレンタインの話しようとしてる?」
「えっ!? い、いや、それはその……」
「もしかして、明莉ちゃんに何か言われたの?」
「べ、別にチョコが欲しいとかそんな話じゃ……あれ?」
一瞬で思惑がバレてしまったけど、明莉の話まで読まれてしまい僕は驚く。
「なんでわかったの……?」
「なんとなく? うぶクンが露骨にチョコ欲しいアピールするとは思えないし、何か聞きたそうな感じだったから、明莉ちゃん関連かなーって。わざわざアタシに聞くくらいだし」
大山さんの的確な指摘に僕は何も返せなかった。これは普段から僕が無意識に明莉の話をしているおかげなのか、それとも単に僕の施行が読まれやすいだけなのか。どちらにしても本当に大山さんは邪推することも引くこともなかったのだから最初から素直に話しておけば良かった。
「それでそれで! もしかして、明莉ちゃんに好きな人ができたカンジなの!?」
「それはないよ。友チョコの話だっから」
「えー ホントかなー? そうは言いつつも実はってことは……」
「そ、そんなことあるわけ……ないよね?」
「どうかなー? じゃあ、詳しい話を聞かせて貰いましょうか」
それから大山さんに詳しい事情を話すと、手作りチョコについて色々な情報を得られた。でも、それ以上に大山さんの察しの良さに驚く日だった。
大山さんがやたら明莉がそんなことを言いだした裏読みをしていることについては……その察しの良さが外れていることを願うばかりである。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる