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1年生3学期
1月18日(火)曇り時々雪 岸本路子の成長その3
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部活動の火曜日。この日も基本的には冊子に向けたネタ出しの時間になった。そんな中で森本先輩と水原先輩から先の土日にあったビックイベントの話題が聞こえてくる。
「今年度はこういう問題だったんだー ……英語とかさっぱりわからん」
「それならネタ出しする前に勉強した方がいいんじゃないか? 実力テストは本当に大丈夫だったのか?」
「お母さん以上にお母さんみたいなこと言わないでー」
ちょうど昨日から今日にかけて全国共通テストの解答速報が様々な媒体で流れ始めていた。僕はニュースで知ったくらいだったけど、特に水原先輩は今それをスマホでチェックしているようだ。
「そもそも汐里は生き急ぎ過ぎだってー まだ習ってない範囲もあるんだからー」
「いや、実際は今の段階でもかなり解ける内容だぞ。さっぱりだと言うなら絶対に勉強した方がいい」
「はいはいー 実力テストの結果次第で3年生になったら本気出しまーす」
森本先輩のゆるっとした態度に水原先輩は説教モードに入りそうに見える。でも、それは森本先輩のことを心配しているからこそ言えることだろう。
「実力テストかぁ……」
「岸本さん? 何かあったの?」
「……正直に言うと、冬休み中はもちろん宿題はしていたのだけれど、時間があるから積み本を消化したり、今回の創作のことを考えてたりしたから勉強の方は疎かになってて。だから……」
「結果が……あまり良くなさそうと?」
「う、うん。やっぱり勉強もがんばらないと駄目だよね……」
そう言いながら岸本さんは少し落ち込む。まだテスト結果が返却されていないけど、手応えはあまりなかったようだ。
「ま、まぁ、実力テストはあくまで今の学力を見るわけだからここで良くなくても大丈夫だよ」
「産賀くんは……全然焦っていないように見えるからできてるんだよね」
「できてるなんてそんな。たぶん普通くらいだよ」
「そんな言い方をするのはだいたいできてる人だと思う」
岸本さんは少しもの言いたげ目で僕を見てきた。そんなことを言われてもと困ってしまう一方で、僕はまた……岸本さんの雰囲気がどこか違う感じがしていた。
この前は髪を切った直後だからと言われてしまったけど、それだけじゃない。ただ、具体的にどう違うかと言われると、全体的な雰囲気としか言えない。
「産賀くん? 何かあった?」
しかし、それをまた口に出そうものなら今度こそ変に思われてしまう可能性がある。もう少し観察してから判断しないといけない。
「なんでもない。ところで……岸本さんが冬休み中に読んでたのってどういう本?」
「そ、それは……」
「あっ、ごめん。言いづらかったら別に言わなくても大丈夫だから」
「ううん。その……ジャンルは色々あったのだけれど、創作に向けて恋愛系の小説を中心に読んでたの」
僕は思わず「おー」と感心する。実力テストでの勉強は疎かになっていたのかもしれないけど、岸本さんは創作に向けてはしっかり準備できているようだ。
「産賀くんは……おすすめの恋愛小説はあったりする……?」
「うーん……僕が読んだことがあるのは恋愛っていうよりはラブコメのライトノベルばかりだからなぁ。あっ、あの映画化されたやつは読んだことあるかも。小説の方のタイトルだと、確か……」
その後、少しだけ恋愛小説の話をしてみたけど……これに関しては僕が役立つことは無さそうだ。ついでに言えば岸本さんの雰囲気のこともよくわからなかったし、創作のアイデアも全然練れなかったので、今日は何も進まない日だった。
「今年度はこういう問題だったんだー ……英語とかさっぱりわからん」
「それならネタ出しする前に勉強した方がいいんじゃないか? 実力テストは本当に大丈夫だったのか?」
「お母さん以上にお母さんみたいなこと言わないでー」
ちょうど昨日から今日にかけて全国共通テストの解答速報が様々な媒体で流れ始めていた。僕はニュースで知ったくらいだったけど、特に水原先輩は今それをスマホでチェックしているようだ。
「そもそも汐里は生き急ぎ過ぎだってー まだ習ってない範囲もあるんだからー」
「いや、実際は今の段階でもかなり解ける内容だぞ。さっぱりだと言うなら絶対に勉強した方がいい」
「はいはいー 実力テストの結果次第で3年生になったら本気出しまーす」
森本先輩のゆるっとした態度に水原先輩は説教モードに入りそうに見える。でも、それは森本先輩のことを心配しているからこそ言えることだろう。
「実力テストかぁ……」
「岸本さん? 何かあったの?」
「……正直に言うと、冬休み中はもちろん宿題はしていたのだけれど、時間があるから積み本を消化したり、今回の創作のことを考えてたりしたから勉強の方は疎かになってて。だから……」
「結果が……あまり良くなさそうと?」
「う、うん。やっぱり勉強もがんばらないと駄目だよね……」
そう言いながら岸本さんは少し落ち込む。まだテスト結果が返却されていないけど、手応えはあまりなかったようだ。
「ま、まぁ、実力テストはあくまで今の学力を見るわけだからここで良くなくても大丈夫だよ」
「産賀くんは……全然焦っていないように見えるからできてるんだよね」
「できてるなんてそんな。たぶん普通くらいだよ」
「そんな言い方をするのはだいたいできてる人だと思う」
岸本さんは少しもの言いたげ目で僕を見てきた。そんなことを言われてもと困ってしまう一方で、僕はまた……岸本さんの雰囲気がどこか違う感じがしていた。
この前は髪を切った直後だからと言われてしまったけど、それだけじゃない。ただ、具体的にどう違うかと言われると、全体的な雰囲気としか言えない。
「産賀くん? 何かあった?」
しかし、それをまた口に出そうものなら今度こそ変に思われてしまう可能性がある。もう少し観察してから判断しないといけない。
「なんでもない。ところで……岸本さんが冬休み中に読んでたのってどういう本?」
「そ、それは……」
「あっ、ごめん。言いづらかったら別に言わなくても大丈夫だから」
「ううん。その……ジャンルは色々あったのだけれど、創作に向けて恋愛系の小説を中心に読んでたの」
僕は思わず「おー」と感心する。実力テストでの勉強は疎かになっていたのかもしれないけど、岸本さんは創作に向けてはしっかり準備できているようだ。
「産賀くんは……おすすめの恋愛小説はあったりする……?」
「うーん……僕が読んだことがあるのは恋愛っていうよりはラブコメのライトノベルばかりだからなぁ。あっ、あの映画化されたやつは読んだことあるかも。小説の方のタイトルだと、確か……」
その後、少しだけ恋愛小説の話をしてみたけど……これに関しては僕が役立つことは無さそうだ。ついでに言えば岸本さんの雰囲気のこともよくわからなかったし、創作のアイデアも全然練れなかったので、今日は何も進まない日だった。
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