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1年生3学期
1月17日(月)曇り 大山亜里沙の再誕その2
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久しぶりの月曜日からの週始まり。そして、席替えをしてから4日目。僕はまたしてもしょうもない悩みを抱えていた。現在の席の位置関係の問題である。
「りょーちゃん、消しゴム落としたー 拾ってー」
それは松永が隣であることも関わっている。いや、授業中に絡まれそうになってあまり良くない……というわけではなく、位置そのものが良くないのだ。
「なんかうぶクンが前にいる変なカンジ。席近い時はいつも隣だったし」
プリントを後ろに配った時に大山さんからそう言われる。僕もショートヘアの大山さんはまだ見慣れない……などと戯言を言いたいわけじゃなく、この大山さんの位置も良くない。
そう、その問題とは休み時間中にいつメンがどこに集まるかということだ。普通に考えれば僕と松永が隣同士なのだからここへ集まるのが一番手っ取り早いけど、そうなると本田くんをこちらへ来て貰うことになる。
一方、休み時間中の大山さんはというと、基本は席を動かずに隣や後ろの女子と話をしている。
つまりは……いつメンが集まると本田くんと大山さんが非常に気まずい距離間になってしまうのだ。
「さっきの時間めっちゃ眠かったわ……こんな前の席になのに」
「別に席関係なく寝るもんじゃない」
「それはわかってるけど、今までで一番先生の目が厳しいから。俺もぽんちゃんの席が良かったなー」
しかし、松永はそんなことを気にせず、初日から本田くん(ともちろん大倉くん)をこちらの席へ呼び寄せていた。
いつも通り僕が気にし過ぎているのはわかるし、僕もこの数日間は特にそのことをツッコむことなく過ごしている。
だけど、心の中ではあんまり良くないんじゃないかと思っていた。
「あっ。そういえばさ、うぶクン」
「は、はい!?」
そんな中、この日の3時間目の休み時間中、いつメンが集まるタイミングで大山さんが僕へ話しかける。その大山さんの目線にはどうやっても本田くんが目に入っていた。
「何? そんな驚いて」
「な、なんでもないです。何か用事でしょうか……」
「この前話してくれた和菓子屋さんのことなんだケド、どこにあるんだっけ? 今、みんなと行ってみようかなってなってるから」
「ああ、それなら……」
僕は大山さんの方を向いてやや早口で説明する。僕が大山さんと話しているのも何だか状況的に良くないと思ったからそうしてしまった。
「なるほどねぇ。さんきゅー、うぶクン。ところでさ」
「ま、まだ何か?」
「気にしなくても大丈夫だよ?」
「えっ……それは何の……」
「……本田ー! あれからうぶクンにちゃんとおごってあげたのー!?」
大山さんの呼びかけに僕は驚きながら本田くんの方を振り向いてしまう。すると、本田くんは少し面倒くさそうな表情になりながらも口を開いた。
「この土曜日、遊びに行ったついでにちゃんとおごったよ」
「そっかそっか。ならよし!」
そのやり取りに大山さんの周りにいた女子も驚いていたから僕の反応は間違っていなかったのだと思う。
「ね? 気にしなくても大丈夫でしょ?」
「な、何でわかったの……?」
「うーん……なんとなく? まぁ、そういうことだから今後はお気遣いなくってことで」
大山さんはさらりとそう言うと、周りの女子との会話に戻っていった。
一方、呆気に取られた僕がいつメンの方を振り向くと、本田くんは肩をすくめて、松永は謎に頷いていた。
こうして、僕のしょうもない悩みは解決したのだった。
「りょーちゃん、消しゴム落としたー 拾ってー」
それは松永が隣であることも関わっている。いや、授業中に絡まれそうになってあまり良くない……というわけではなく、位置そのものが良くないのだ。
「なんかうぶクンが前にいる変なカンジ。席近い時はいつも隣だったし」
プリントを後ろに配った時に大山さんからそう言われる。僕もショートヘアの大山さんはまだ見慣れない……などと戯言を言いたいわけじゃなく、この大山さんの位置も良くない。
そう、その問題とは休み時間中にいつメンがどこに集まるかということだ。普通に考えれば僕と松永が隣同士なのだからここへ集まるのが一番手っ取り早いけど、そうなると本田くんをこちらへ来て貰うことになる。
一方、休み時間中の大山さんはというと、基本は席を動かずに隣や後ろの女子と話をしている。
つまりは……いつメンが集まると本田くんと大山さんが非常に気まずい距離間になってしまうのだ。
「さっきの時間めっちゃ眠かったわ……こんな前の席になのに」
「別に席関係なく寝るもんじゃない」
「それはわかってるけど、今までで一番先生の目が厳しいから。俺もぽんちゃんの席が良かったなー」
しかし、松永はそんなことを気にせず、初日から本田くん(ともちろん大倉くん)をこちらの席へ呼び寄せていた。
いつも通り僕が気にし過ぎているのはわかるし、僕もこの数日間は特にそのことをツッコむことなく過ごしている。
だけど、心の中ではあんまり良くないんじゃないかと思っていた。
「あっ。そういえばさ、うぶクン」
「は、はい!?」
そんな中、この日の3時間目の休み時間中、いつメンが集まるタイミングで大山さんが僕へ話しかける。その大山さんの目線にはどうやっても本田くんが目に入っていた。
「何? そんな驚いて」
「な、なんでもないです。何か用事でしょうか……」
「この前話してくれた和菓子屋さんのことなんだケド、どこにあるんだっけ? 今、みんなと行ってみようかなってなってるから」
「ああ、それなら……」
僕は大山さんの方を向いてやや早口で説明する。僕が大山さんと話しているのも何だか状況的に良くないと思ったからそうしてしまった。
「なるほどねぇ。さんきゅー、うぶクン。ところでさ」
「ま、まだ何か?」
「気にしなくても大丈夫だよ?」
「えっ……それは何の……」
「……本田ー! あれからうぶクンにちゃんとおごってあげたのー!?」
大山さんの呼びかけに僕は驚きながら本田くんの方を振り向いてしまう。すると、本田くんは少し面倒くさそうな表情になりながらも口を開いた。
「この土曜日、遊びに行ったついでにちゃんとおごったよ」
「そっかそっか。ならよし!」
そのやり取りに大山さんの周りにいた女子も驚いていたから僕の反応は間違っていなかったのだと思う。
「ね? 気にしなくても大丈夫でしょ?」
「な、何でわかったの……?」
「うーん……なんとなく? まぁ、そういうことだから今後はお気遣いなくってことで」
大山さんはさらりとそう言うと、周りの女子との会話に戻っていった。
一方、呆気に取られた僕がいつメンの方を振り向くと、本田くんは肩をすくめて、松永は謎に頷いていた。
こうして、僕のしょうもない悩みは解決したのだった。
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