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1年生冬休み

1月2日(日)晴れのち曇り 祖父母宅での冬休み

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 冬休み9日目。今日は京都の祖父母の家へ里帰りする日だ。夏休みと同じく1泊2日の滞在予定で、今回も父さんが少し渋滞と戦いながら朝早くから運転してくれたので、僕や明莉は車内でウトウトしていられた。

 祖父母宅に到着すると、今回はお盆ではないからじいちゃんと共にばあちゃんが玄関で待っていてくれた。

「おじいちゃんおばあちゃん、あけましておめでとー! 今年もよろしくお願いしまーす!」

 一番乗りに挨拶した明莉に続いて、僕も新年の挨拶をする。

「よう来たね、明莉、良助。寒いから早う入って」

「ばあさん、その前に……ほら、明莉と良助。いつものやつじゃ」

 じいちゃんから明莉と僕へ手渡されたのは虎が書かれたぽち袋だった。どうやら僕もまだお年玉を貰っていいようだ。

「わー! ありがとう、おじいちゃん! おばあちゃんも!」

「すみません、お父さんお母さん。いつも頂いてしまって」

 父さんがそう言った後に僕もお礼を続けると、じいちゃんは「大した額じゃないから気にせんでええ」と言う。でも、じいちゃんはこういう時にばあちゃんがちょっと注意するくらいには入れてくれる。

 それから居間に入るとここでもコタツが用意されていて、僕らが足を入れた途端にお茶やお菓子、みかんが次々と出てくる。この後の昼ご飯には豪華な食事が並ぶから今日明日で少し太るのは確実だろう。
 だけど、僕はその環境に浸かりきる前にばあちゃんへ言っておくべきことがあった。

「ばあちゃん。これ、文化祭でうちの文芸部が作った冊子。良かったら暇な時に読んでみて」

「あ~! 持ってきてくれたんだねぇ。良助もいくつか書いてるのかい?」

「載ってる中だと一つだけだよ。ペンネームは……ダイ・アーリー」

「だいあーりー? 不思議な名前だね?」

「ま、まぁ、そこは深く気にしないで。あと、短歌は載ってないんだけど、文化祭の展示したやつがあるんだ」

 僕はそう言いながら僕の短歌が印刷された用紙を取り出す。文化祭の展示品はおすすめ本以外廃棄されるものだったけど、片付けの際に部長へ相談して貰っておいたのだ。適当な紙に手書きしても良かったけど、この方がばあちゃんにも文化祭の雰囲気を少しだけ感じてもらえると思って。

「へぇ、これが……あら!「祖父母から 伸びたと言われる 身長が 僕の元気を 表す証」って……」

「えっと……せっかくばあちゃんに色々教えて貰ったからここでの話を題材にしようと思って……」

「……嬉しいねぇ。おじいさん! これ、良助が書いたって!」

 想像以上に喜んでくれたばあちゃんはじいちゃんを呼んでその用紙を見せる。そうしたらじいちゃんも何か賞を取ったみたいに喜んでくれるので、僕は少々恥ずかしくなってしまった。でも、二人に喜んで貰えたなら題材にしてよかったと思う。

 その後、喜んだ影響があったかはわからないけど、更にもてなされることになって、僕らが寝正月と食べ正月になってしまったのは言うまでもない。
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