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1年生2学期

12月15日(水)晴れのち曇り 大山亜里沙との距離間その14

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 12月もあと半月となる水曜日。テストもほとんどが返却を終えて、今度は3学期の3月にある1年生最後のテストに向けた範囲を勉強していく。冬休み明けにはすぐに実力テストもあるから文芸部も大事だけど、勉強も程よくやっていかなければいけない。

「うぶクン、現社のテストどうだった?」

 そんな日の5時間目の休み時間、僕の席に大山さんがやって来てそう声をかける……いや、待って欲しい。いったいどういう事態だ。

「大山さん、どうしたの……?」

「えっ? テストの結果、聞いてるだけだよ?」

「いや、それはそうなんだけど……」

 それは隣の席だった頃は当たり前に聞かれていたことだけど、席が離れた今わざわざ聞きに来ることではない。そう思った僕は隣の席へ目を向ける。

「それがさー あの時の店が――」

 しかし、栗原さんは絶賛他の女子とお話中だった。ということは、大山さんへの栗原さんの用事のついでに僕へ話しかけたわけじゃない。だったら余計にどういう事態なんだと思ってしまう。

「ちなみにアタシは72点」

「僕は……83点」

「負けたぁ。この感じだと他の教科も負けてそうだな~」

「それはどうかわからないけど……」

「という前置きはこれくらいにして……うぶクン、さっきの時間のノート写させて貰える?」

 にこやかに大山さんに頼まれた僕はようやく状況が飲み込めた。大山さんはそれが目的でわざわざ来たのだ。それなら……別の問題が発生する。

「……いいよ。今日はテスト返却あったからそんなに進んでないけど」

「サンキュー! いや~ 返却された後はぐっすりだったからさぁ」

 だけど、僕はその別の問題については触れることができない。その役割は本田くんに移ったはずだけど、今日は僕のところに来ているということは何か不都合なことが起こっているのだ。

「ホント助かった! あっ、そういえばさ。うぶクンは最近あのスイーツ店行ってる? アタシが明莉ちゃんと会ったお店」

「いや、最近は行ってないけど……」

「そうなんだ。アタシはちょいちょい行ってるんだケド、あそこは季節限定メニューとかいっぱい出してるからまた行ってみるといいかも。もちろん、明莉ちゃん連れてね?」

「それだと僕がおごることになっちゃう」

「いいじゃん。なんやかんや言って最後にはおごっちゃうんだから」

「……否定できない」

「でしょー? あっ、それじゃあそろそろ戻るね!」

 チャイムの合図と共に大山さんは自分の席へ戻って行く。先週に続いて世間話ができたのは良いけど、僕の関心はスイーツ店の季節限定メニューではなく、別の問題の方に向いていた。



「そりゃあ……喧嘩じゃない?」

 放課後。部活に行く前の松永を呼び止めて、僕は先ほどのことを話す。それに対して返って来た答えは僕も予想できていたことだった。

「そ、そうか……」

「少なくとも昼休みは一緒に行動してたはずだからそこで何かあったとかじゃない? まー、その後の休み時間中、俺もぽんちゃんの方はよく見てなかったけど」

「うん…………」

「りょーちゃん。考えても仕方ないぞ。こればっかりは当人同士で解決すべきことなんだから。りょーちゃんはたまたまそこで大山ちゃんに頼られただけ」

 わかりやすい表情をしていたのか、僕は松永に指摘されてしまう。

「わ、わかってるよ。ちょっと気になっただけ」

「ならよし。そりゃあ、全く喧嘩しないっていうのも無理だろうし」

「松永は伊月さんと喧嘩したことあるの?」

「えっ。それ聞いちゃう? 俺のトラウマが掘り返される可能性あるよ?」

「す、すまん」

「なーんて、嘘だよ。喧嘩らしい喧嘩はないかな。俺が注意されることはあるけど、俺から怒ったことはない……と思ってる」

 松永は自分で思っている限りはという意味で付け足すけど、松永は僕の前でもそういった喧嘩になりそうなことは避けている印象があるから本当なのだろう。

「呼び止めて悪かった。また明日」

「えー……なんかもう部活行く気なくなったからこのままりょーちゃんと遊びに行こうかと……」

「いや、もう冬休み近いんだから行ける日は行っておけって。僕が言うのもなんだけど」

「へーい」

 松永を見送った後、改めて教室内を見るけど、本田くんも大山さんも既にいなかった。そのまま部活に行ったのならまだその問題は解決していないのだろうけど……松永の言う通り、僕が考えても仕方ない。仕方ないけど、何となくモヤっとしたまま帰宅することになった。
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