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1年生2学期
12月14日(火)晴れ 岸本路子との親交その18
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火曜日で一週間ぶりの部活日。今日は勉強会の前に久しぶりのミーティングが開かれて、冬休み前から年明け以降の予定がざっくりと話される。来週の金曜日はもう終業式になり、冬休み中は基本的に活動しないようなので、今日を含めて今年はあと3回しか部活日はない。
年明け以降は学園誌の制作がメインになることから、冬休み中はそれに寄稿する作品について少しずつ考えておくように言われた。文化祭より期間が短いので、それほど長文にする必要はないらしい。
その代わり、卒業生や今年度で学校を離れる先生方にも配られる予定だからできればそれに沿うような作品や空気を損なわい作品が望まれる。
そんな文芸部としての活動も重要だけど、森本先輩からこの日一番いいテンションで言われたのは……
「それとー 長らくお待たせしましたが文化祭の打ち上げ兼忘年会を土曜日に開きたいと思います。事前にもお知らせしましたが、みんなでお鍋を囲めるお店になりますー 一人辺りに2,000円頂くのでどうしても今月はピンチだと言うとは個別にあたしへ相談してくださーい」
とうとう忘年会と抱き合わせになった文化祭の打ち上げの件だった。なんだかんだ文芸部として学校外で集まるのは新入生歓迎会以来になる。
「それじゃあ、ミーティングは終了しまーす。続けて勉強会に入るので各々準備してくださーい」
それからこちらも久しぶりの勉強会をやって、本日の活動は終了した。この勉強会で色々と学べていはいるけど、正直なところ学園誌の方は全くのノープランだ。岸本さんから貰った本を読みつつ、自分も創作モードに切り替えなければならない。
「おお、岸本ちゃん。可愛いペン使ってるね!」
僕がそんなことを考えていると、ソフィア先輩が岸本さんにそう声をかける。その岸本さんの手には僕がプレゼントしたボールペンが握られていた。
「あっ、はい。この前プレゼントとして貰ったものなんです」
「へー! 誰から貰ったの?」
「えっと……」
岸本さんはそこで困ったような反応をする。そして、聞き耳を立てるのは良くないと思いながらも気になって聞いてしまっていた僕も困ってしまう。こういう場合、岸本さんに助け舟を出すのは余計なことになる可能性があるから黙っている方が正しい気がする。
「……友達からです」
「そうなんだー でも、ボールペンをプレゼントするなんて凄いね!」
「そ、そうですか?」
岸本さんの疑問と全く同じ文を心の中でも僕も思う。その「凄い」というのはいい意味なのか悪い意味なのか。可愛いと言ってくれたのだからデザイン的には間違いなかったはずだ。明莉にも見て貰ったしそこは自信がある。
でも、そもそもボールペンがプレゼントとして間違っていると言われると、それは僕のチョイスミスだ。今日も岸本さんが使っているところを目にした時、やっぱりもっといいプレゼントがあったんじゃないかと、少し思う僕がいた。
しかし、ソフィア先輩から出た言葉はもっと予想外のものだった。
「ソフィア、この前ネットの記事で見たんだけど、ボールペンをプレゼントするのって”あなたが特別な存在”って意味があるんだって。あげた人が意味を知ってるかは別にしても毎日使えるような物をあげるのはその人のことよく考えてる意味でもあるからそういう感情があるらしくて」
「そそそ、そうなんですね!」
「だから、その友達は岸本ちゃんのこと、すっごく思って渡したんだと――」
「ソフィアさん! 十分です!」
岸本さんはソフィア先輩を止めてくれたけど、その時点で僕はもう耳が真っ赤になっていた。いや、僕は意味を知っていなかった側だし、当日一緒に見てくれた明莉もたぶんそこまで意図していなかったと思う。
だけど、ソフィア先輩が目を通せる範囲の記事でそういうことが書かれているということは……岸本さんもどこかで知っていた可能性があるということだ。僕はようやく日曜日の岸本さんが妙な反応をしていた意味がわかった。
「う、産賀くん」
「は、はい!?」
「さっきの……聞いてた?」
「……ごめん。聞いてた」
「……………………」
「……………………」
「わ、わたし、そういう意味があるなんて全然知らなかった!」
「ぼ、僕も! でも、本当に無理して使わなくてもいいからね?」
「ううん。無理はしてない。本当に嬉しいと思って……」
「何の話してるの?」
「うわぁ!?」
「きゃっ!?」
突然、ソフィア先輩に割り込まれて僕と岸本さんは同時に悲鳴をあげる。
「なんか前にも似たようなことあったなぁ。あっ。もしかして、さっきの友達って……」
「ソフィア先輩! あの、あれです。学園誌について質問があるんですけど!!!」
「そ、そうでした! わたしも冬休み中に入る前に聞いておきたいことがあります!」
「もう仲良しだね~ じゃあ、答えてあげましょう」
この後、ソフィア先輩に質問した内容はあんまり覚えてないし、部室から出るまで岸本さんの顔を見ることができなかった。
ホワイトデーで返す物に意味があるのは聞いたことがあるけど、まさか普通のプレゼントまで意味が付けられているとは……下調べはちゃんとしておくものだと思った。
年明け以降は学園誌の制作がメインになることから、冬休み中はそれに寄稿する作品について少しずつ考えておくように言われた。文化祭より期間が短いので、それほど長文にする必要はないらしい。
その代わり、卒業生や今年度で学校を離れる先生方にも配られる予定だからできればそれに沿うような作品や空気を損なわい作品が望まれる。
そんな文芸部としての活動も重要だけど、森本先輩からこの日一番いいテンションで言われたのは……
「それとー 長らくお待たせしましたが文化祭の打ち上げ兼忘年会を土曜日に開きたいと思います。事前にもお知らせしましたが、みんなでお鍋を囲めるお店になりますー 一人辺りに2,000円頂くのでどうしても今月はピンチだと言うとは個別にあたしへ相談してくださーい」
とうとう忘年会と抱き合わせになった文化祭の打ち上げの件だった。なんだかんだ文芸部として学校外で集まるのは新入生歓迎会以来になる。
「それじゃあ、ミーティングは終了しまーす。続けて勉強会に入るので各々準備してくださーい」
それからこちらも久しぶりの勉強会をやって、本日の活動は終了した。この勉強会で色々と学べていはいるけど、正直なところ学園誌の方は全くのノープランだ。岸本さんから貰った本を読みつつ、自分も創作モードに切り替えなければならない。
「おお、岸本ちゃん。可愛いペン使ってるね!」
僕がそんなことを考えていると、ソフィア先輩が岸本さんにそう声をかける。その岸本さんの手には僕がプレゼントしたボールペンが握られていた。
「あっ、はい。この前プレゼントとして貰ったものなんです」
「へー! 誰から貰ったの?」
「えっと……」
岸本さんはそこで困ったような反応をする。そして、聞き耳を立てるのは良くないと思いながらも気になって聞いてしまっていた僕も困ってしまう。こういう場合、岸本さんに助け舟を出すのは余計なことになる可能性があるから黙っている方が正しい気がする。
「……友達からです」
「そうなんだー でも、ボールペンをプレゼントするなんて凄いね!」
「そ、そうですか?」
岸本さんの疑問と全く同じ文を心の中でも僕も思う。その「凄い」というのはいい意味なのか悪い意味なのか。可愛いと言ってくれたのだからデザイン的には間違いなかったはずだ。明莉にも見て貰ったしそこは自信がある。
でも、そもそもボールペンがプレゼントとして間違っていると言われると、それは僕のチョイスミスだ。今日も岸本さんが使っているところを目にした時、やっぱりもっといいプレゼントがあったんじゃないかと、少し思う僕がいた。
しかし、ソフィア先輩から出た言葉はもっと予想外のものだった。
「ソフィア、この前ネットの記事で見たんだけど、ボールペンをプレゼントするのって”あなたが特別な存在”って意味があるんだって。あげた人が意味を知ってるかは別にしても毎日使えるような物をあげるのはその人のことよく考えてる意味でもあるからそういう感情があるらしくて」
「そそそ、そうなんですね!」
「だから、その友達は岸本ちゃんのこと、すっごく思って渡したんだと――」
「ソフィアさん! 十分です!」
岸本さんはソフィア先輩を止めてくれたけど、その時点で僕はもう耳が真っ赤になっていた。いや、僕は意味を知っていなかった側だし、当日一緒に見てくれた明莉もたぶんそこまで意図していなかったと思う。
だけど、ソフィア先輩が目を通せる範囲の記事でそういうことが書かれているということは……岸本さんもどこかで知っていた可能性があるということだ。僕はようやく日曜日の岸本さんが妙な反応をしていた意味がわかった。
「う、産賀くん」
「は、はい!?」
「さっきの……聞いてた?」
「……ごめん。聞いてた」
「……………………」
「……………………」
「わ、わたし、そういう意味があるなんて全然知らなかった!」
「ぼ、僕も! でも、本当に無理して使わなくてもいいからね?」
「ううん。無理はしてない。本当に嬉しいと思って……」
「何の話してるの?」
「うわぁ!?」
「きゃっ!?」
突然、ソフィア先輩に割り込まれて僕と岸本さんは同時に悲鳴をあげる。
「なんか前にも似たようなことあったなぁ。あっ。もしかして、さっきの友達って……」
「ソフィア先輩! あの、あれです。学園誌について質問があるんですけど!!!」
「そ、そうでした! わたしも冬休み中に入る前に聞いておきたいことがあります!」
「もう仲良しだね~ じゃあ、答えてあげましょう」
この後、ソフィア先輩に質問した内容はあんまり覚えてないし、部室から出るまで岸本さんの顔を見ることができなかった。
ホワイトデーで返す物に意味があるのは聞いたことがあるけど、まさか普通のプレゼントまで意味が付けられているとは……下調べはちゃんとしておくものだと思った。
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