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1年生2学期
12月13日(月)曇りのち晴れ 清水夢愛の夢探しその12
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テスト明けの月曜日。テストが返却される一方で、冬休みまであと2週間になったことから各授業でその話題を出す先生が多くなってきた。毎回言っている気がするけど、この2学期も長いようで短い数ヶ月だった。
そんな師走の空気を感じている僕はこの日の放課後、清水先輩から呼び出された。恐らくその目的は僕の誕生祝いだ。日曜から引き続き誕生日の延長になると、もはやこの12月中はずっと祝われるんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。
「良助。今日呼び出したのは他でもない」
「はい。なんかすみません、清水先輩も忙しいのに……」
「いや、そんなことはない。元々、私が巻き込んだことだからその顛末を知る権利が良助にはある」
「僕が知る権利……あれ?」
どうやら僕は本当に勘違いしていたらしい。少しばかり真剣みのある表情の清水先輩を見てようやく気付いた。今日の話は全く別の話題であることに。
「先週、私の誕生日に両親と話したんだ。高校卒業後はどうしていくかって。改めて聞いても両親は私の好きなようにしていいと言ってくれた。だが、私は今のところそれらしい夢が見つかっていないと言った。そうしたら……大学や専門学校へ進学した方がいいと言われたんだ」
それはこの2学期の間に清水先輩がやっていた夢探しの顛末だった。清水先輩の両親からの回答は特別変わったものではなく、そこそこお金がある、もしくは奨学金を貰うことで成り立つ家庭のよくある答えだった。
「私はそれに対して何も言うことはできないから、両親の言葉に従うことにした。まぁ、どの分野のどの学校へ進学するとか具体的には決まっていないが、ひとまずそういう話に落ち着いたことを伝えたかったんだ」
「そうだったんですね」
「……なんか、すまんな。これまで散々色んなことに手を付けておいて、特に面白くもない話にまとまって」
「そんなことありません。進学って目標が定まったのはいいことじゃないですか」
「まぁ……そうなんだろうな」
僕は本当にそう思って言ったつもりだけど、清水先輩は何だか浮かない顔だった。今の時点で卒業後までしっかり考えている人ばかりではないと思うけど、清水先輩としてはやっぱりこの12月が一つのラインになっていたようだ。それが余裕を持ちたいからなのか、焦りからなのか、僕にはわからない。
「そういうわけだから、これからはどの大学ないし専門学校へ行くかを考えていこうと思う。それと勉強もそれなりにやっていくつもりだ」
「凄く学生らしくていいと思います」
「ああ。でも、この件で良助には色々と付き合って貰ったから改めて感謝するよ。ありがとう」
「いえいえ。僕は何もしてません」
「これからもまた何かあったら話はするが……いや、むしろこれからは良助の手本になるようにがんばっていくよ」
ただ、一つだけわかるのは清水先輩と何かする機会はこれからどんどんと減っていくことだ。特に3年生になれば本格的に受験勉強が始まって、今以上に忙しくなっていくのだろう。
それが寂しくないかといえば嘘になる。なんだかんだ清水先輩と何かやっている時間は僕自身も積極的に手を付けなかったことだったから貴重な経験で楽しいものだった。
「それはそれとしてだ。私は良助に関して何か忘れてる気がするんだが……何だと思う?」
「えっと……僕から言うのも何なんですが、僕の誕生日プレゼントのことかと」
「あー!? テストが挟まってすっかり忘れてた! 今から購買……は開いてないからコンビニでもいいか!? シュークリームじゃなくてもいいから何か買おう!」
そのままの流れでコンビニでおごって貰った僕は何度目かわからないお祝いをされる。
清水先輩との関係は友達と言っていいけれど、その前に一つ上の先輩だ。だから、必然的に学年の違いから距離は生じるもので、僕が意図しないでもその距離は離れていくこともある。
それが離れ過ぎないようにこれからも関わり合えたらいいなと、勝手に思ってしまった。
そんな師走の空気を感じている僕はこの日の放課後、清水先輩から呼び出された。恐らくその目的は僕の誕生祝いだ。日曜から引き続き誕生日の延長になると、もはやこの12月中はずっと祝われるんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。
「良助。今日呼び出したのは他でもない」
「はい。なんかすみません、清水先輩も忙しいのに……」
「いや、そんなことはない。元々、私が巻き込んだことだからその顛末を知る権利が良助にはある」
「僕が知る権利……あれ?」
どうやら僕は本当に勘違いしていたらしい。少しばかり真剣みのある表情の清水先輩を見てようやく気付いた。今日の話は全く別の話題であることに。
「先週、私の誕生日に両親と話したんだ。高校卒業後はどうしていくかって。改めて聞いても両親は私の好きなようにしていいと言ってくれた。だが、私は今のところそれらしい夢が見つかっていないと言った。そうしたら……大学や専門学校へ進学した方がいいと言われたんだ」
それはこの2学期の間に清水先輩がやっていた夢探しの顛末だった。清水先輩の両親からの回答は特別変わったものではなく、そこそこお金がある、もしくは奨学金を貰うことで成り立つ家庭のよくある答えだった。
「私はそれに対して何も言うことはできないから、両親の言葉に従うことにした。まぁ、どの分野のどの学校へ進学するとか具体的には決まっていないが、ひとまずそういう話に落ち着いたことを伝えたかったんだ」
「そうだったんですね」
「……なんか、すまんな。これまで散々色んなことに手を付けておいて、特に面白くもない話にまとまって」
「そんなことありません。進学って目標が定まったのはいいことじゃないですか」
「まぁ……そうなんだろうな」
僕は本当にそう思って言ったつもりだけど、清水先輩は何だか浮かない顔だった。今の時点で卒業後までしっかり考えている人ばかりではないと思うけど、清水先輩としてはやっぱりこの12月が一つのラインになっていたようだ。それが余裕を持ちたいからなのか、焦りからなのか、僕にはわからない。
「そういうわけだから、これからはどの大学ないし専門学校へ行くかを考えていこうと思う。それと勉強もそれなりにやっていくつもりだ」
「凄く学生らしくていいと思います」
「ああ。でも、この件で良助には色々と付き合って貰ったから改めて感謝するよ。ありがとう」
「いえいえ。僕は何もしてません」
「これからもまた何かあったら話はするが……いや、むしろこれからは良助の手本になるようにがんばっていくよ」
ただ、一つだけわかるのは清水先輩と何かする機会はこれからどんどんと減っていくことだ。特に3年生になれば本格的に受験勉強が始まって、今以上に忙しくなっていくのだろう。
それが寂しくないかといえば嘘になる。なんだかんだ清水先輩と何かやっている時間は僕自身も積極的に手を付けなかったことだったから貴重な経験で楽しいものだった。
「それはそれとしてだ。私は良助に関して何か忘れてる気がするんだが……何だと思う?」
「えっと……僕から言うのも何なんですが、僕の誕生日プレゼントのことかと」
「あー!? テストが挟まってすっかり忘れてた! 今から購買……は開いてないからコンビニでもいいか!? シュークリームじゃなくてもいいから何か買おう!」
そのままの流れでコンビニでおごって貰った僕は何度目かわからないお祝いをされる。
清水先輩との関係は友達と言っていいけれど、その前に一つ上の先輩だ。だから、必然的に学年の違いから距離は生じるもので、僕が意図しないでもその距離は離れていくこともある。
それが離れ過ぎないようにこれからも関わり合えたらいいなと、勝手に思ってしまった。
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