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1年生2学期
12月11日(土)曇り 明莉との日常その28
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テスト終わりでいつも以上にゆっくりできると思っていた土曜日。そういう始まり方からわかるように、この日の僕はそれほどゆっくりできなかった。
その理由は一週間ほど前に岸本さんや花園さんと約束した誕生日会が日曜日に開催されることになったからだ。特に内容が決まっているわけではないけど、誕生日会というからにはプレゼントを買いに行く必要がある。
だけど、それは大きな問題があった。
「ただいまー」
「おかえり、明莉。帰ってすぐで悪いんだけど、答えて欲しい質問がある」
「ふえー なにー?」
「女子の友達が誕生日プレゼントで喜びそうなものってなに?」
「女子の友達が誕生日プレゼントで……って、ええええええっ!? りょうちゃん、明莉がテスト勉強へ気を取られている間に何してたの!? いきなり飛躍し過ぎじゃない!?」
「飛躍も何もない。単にそういう会があるから二人のプレゼントを……」
「しかもいきなり二人狙いって、りょうちゃん強欲過ぎない!?」
「何の話をしてるんだよ!?」
僕はそうツッコミながらも何となくこんな感じのことになるとは予想していた。でも、まさか昨日の今日で誕生日会の予定が決まるだなんて思ってなかったら僕にはもう時間がない。そうなると、身近で頼れる年齢の近い女子は我が妹しかいなかった。
そんな我が妹へ事情を丁寧に説明すると、わかってくれたような、単に面白そうにしているような、どちらとも取れるにこやかな顔になる。
「わかった! 今から明莉も買い物に付いて行ってあげる!」
「おお! 助かる!」
「じゃあ、着替えてくるからちょっと待ってて。あっ、報酬は何かおごってくれたらいいから」
そういう時に報酬の話をするなら無しにしてくれるんじゃないかと思ってしまったけど、文句は言えない。プレゼントを含めて年末に痛い出費だけど、言い出したのは僕だからそれも仕方ない。
◇
着替えた明莉を連れて自転車で数十分の移動後。僕と明莉はお馴染みのショッピングモールへ到着する。何を買うか決まっていないなら何でも売っているところへ来てから選ぶしかない。
「それで、明莉。さっきの質問の答えはどうなの?」
「女子が誕生日に喜びそうなものでしょ? それはもちろん……」
「あっ、できたらスイーツ系以外でお願いする。明日持って行くから時間が経っちゃうし、プレゼントとしてはどうかなって感じだから」
「何でー!? これから色々味見していきたかったのにー!」
「そっちが目的じゃないか。おごりはするけど、プレゼントの方も頼むよ」
わりと本気で困っているので僕は頭を下げてお願いする。
「しょうがないなー でも、りょうちゃん。誕生日プレゼントで考えるなら女子がって括りにするのはダメだと思うよ。それよりはその相手の好みに合わせたものを買った方がいいし」
「な、なるほど! 確かにそうだ」
「りょうちゃん……結構基本的なことだと思うんだけど?」
明莉は少し呆れられながら言われて僕は反省する。僕の方が長く生きているのに、そういうきっちりとしたプレゼントの送り合いはそれこそ勝手よく知る明莉にしかしたことがなかった。
「それで、その送る予定の二人は何が好きものとか、趣味とかあったりする?」
「一人は読書が好きな子。同じ文芸部なんだ」
「あー 前にも聞いた人ね。だったら、本に関わるグッズとかいいんじゃない? 明莉はあんまり本読まないからわかんないけど、ブックカバーとか栞とか可愛いのあると思う」
「そうか。雑貨屋さんに行けばあるかな……」
「もう一人はどうなの?」
「…………わからない」
「えっ? プレゼント送る相手なのに?」
明莉の疑問はごもっともだけど、僕は花園さんについてようやく和菓子作りが得意ということがわかった程度で、それ以外の趣味趣向はよくわからなかった。それで安直に和菓子関連の物を送るのは恐らく間違っている。
「りょうちゃん……プレゼントするならリサーチしないとダメじゃん」
「面目ない……で、でも、その子も読書とかしそうなタイプだから、同じようにブックカバーとか栞なら良さそうかも」
「ふーん。ちなみに言っておくけど、全く同じプレゼントするのもダメだからね?」
「えっ? なんで?」
「プレゼントって送る人が相手のことを考えて選ぶものなんだから、いくら似た趣味だからって同じプレゼント買ったら絶対めんどくさいから同じ物にしたって思われちゃうもん」
明莉の指摘された僕は普通に驚いてしまう。明莉がそこまで考えるのも凄いけど、シンプルに僕がそういうことに関して無頓着なのがよくわかった。
「もう一つ言うなら読書が好きな子にそういうグッズをプレゼントにするのは誰かと被っちゃう可能性も高いから気を付けた方がいいよ」
「それじゃあ振り出しに戻っちゃうんだけど!?」
「まぁ、つまりは……ちゃんとりょうちゃんが考えないとダメってこと。今のは一応明莉の意見として提案しただけだから」
「……ありがとうございます。おかげで色々ミスせずに済みそうです」
ひたすらダメダメと言われてしまうくらいには僕の考えは甘かったようだ。もしかしたら明莉は最初に相談した時点で僕の間違いに気付いて……
「それより、明莉あっちのコーヒー店に出てるらしい新作スイーツ食べたいんだけど!」
……たわけじゃないようだけど、この少しの間の会話でそれを訂正してくれたのは本当に助かった。
明莉にしっかりと報酬を払わせて頂いた後は明莉の意見を参考にしつつ、僕自身でプレゼント選びをしていった。こういう選んでいる時が一番楽しいというのは聞いたことがあって、僕もそれなりに楽しさは見えてきたけど、それ以上に慣れないことをした疲れが出てきてしまった。
「これで二人のハートはイチコロだね!」
「だから、そういうのじゃないんだってば」
ともかく明日は誕生日会だ。
その理由は一週間ほど前に岸本さんや花園さんと約束した誕生日会が日曜日に開催されることになったからだ。特に内容が決まっているわけではないけど、誕生日会というからにはプレゼントを買いに行く必要がある。
だけど、それは大きな問題があった。
「ただいまー」
「おかえり、明莉。帰ってすぐで悪いんだけど、答えて欲しい質問がある」
「ふえー なにー?」
「女子の友達が誕生日プレゼントで喜びそうなものってなに?」
「女子の友達が誕生日プレゼントで……って、ええええええっ!? りょうちゃん、明莉がテスト勉強へ気を取られている間に何してたの!? いきなり飛躍し過ぎじゃない!?」
「飛躍も何もない。単にそういう会があるから二人のプレゼントを……」
「しかもいきなり二人狙いって、りょうちゃん強欲過ぎない!?」
「何の話をしてるんだよ!?」
僕はそうツッコミながらも何となくこんな感じのことになるとは予想していた。でも、まさか昨日の今日で誕生日会の予定が決まるだなんて思ってなかったら僕にはもう時間がない。そうなると、身近で頼れる年齢の近い女子は我が妹しかいなかった。
そんな我が妹へ事情を丁寧に説明すると、わかってくれたような、単に面白そうにしているような、どちらとも取れるにこやかな顔になる。
「わかった! 今から明莉も買い物に付いて行ってあげる!」
「おお! 助かる!」
「じゃあ、着替えてくるからちょっと待ってて。あっ、報酬は何かおごってくれたらいいから」
そういう時に報酬の話をするなら無しにしてくれるんじゃないかと思ってしまったけど、文句は言えない。プレゼントを含めて年末に痛い出費だけど、言い出したのは僕だからそれも仕方ない。
◇
着替えた明莉を連れて自転車で数十分の移動後。僕と明莉はお馴染みのショッピングモールへ到着する。何を買うか決まっていないなら何でも売っているところへ来てから選ぶしかない。
「それで、明莉。さっきの質問の答えはどうなの?」
「女子が誕生日に喜びそうなものでしょ? それはもちろん……」
「あっ、できたらスイーツ系以外でお願いする。明日持って行くから時間が経っちゃうし、プレゼントとしてはどうかなって感じだから」
「何でー!? これから色々味見していきたかったのにー!」
「そっちが目的じゃないか。おごりはするけど、プレゼントの方も頼むよ」
わりと本気で困っているので僕は頭を下げてお願いする。
「しょうがないなー でも、りょうちゃん。誕生日プレゼントで考えるなら女子がって括りにするのはダメだと思うよ。それよりはその相手の好みに合わせたものを買った方がいいし」
「な、なるほど! 確かにそうだ」
「りょうちゃん……結構基本的なことだと思うんだけど?」
明莉は少し呆れられながら言われて僕は反省する。僕の方が長く生きているのに、そういうきっちりとしたプレゼントの送り合いはそれこそ勝手よく知る明莉にしかしたことがなかった。
「それで、その送る予定の二人は何が好きものとか、趣味とかあったりする?」
「一人は読書が好きな子。同じ文芸部なんだ」
「あー 前にも聞いた人ね。だったら、本に関わるグッズとかいいんじゃない? 明莉はあんまり本読まないからわかんないけど、ブックカバーとか栞とか可愛いのあると思う」
「そうか。雑貨屋さんに行けばあるかな……」
「もう一人はどうなの?」
「…………わからない」
「えっ? プレゼント送る相手なのに?」
明莉の疑問はごもっともだけど、僕は花園さんについてようやく和菓子作りが得意ということがわかった程度で、それ以外の趣味趣向はよくわからなかった。それで安直に和菓子関連の物を送るのは恐らく間違っている。
「りょうちゃん……プレゼントするならリサーチしないとダメじゃん」
「面目ない……で、でも、その子も読書とかしそうなタイプだから、同じようにブックカバーとか栞なら良さそうかも」
「ふーん。ちなみに言っておくけど、全く同じプレゼントするのもダメだからね?」
「えっ? なんで?」
「プレゼントって送る人が相手のことを考えて選ぶものなんだから、いくら似た趣味だからって同じプレゼント買ったら絶対めんどくさいから同じ物にしたって思われちゃうもん」
明莉の指摘された僕は普通に驚いてしまう。明莉がそこまで考えるのも凄いけど、シンプルに僕がそういうことに関して無頓着なのがよくわかった。
「もう一つ言うなら読書が好きな子にそういうグッズをプレゼントにするのは誰かと被っちゃう可能性も高いから気を付けた方がいいよ」
「それじゃあ振り出しに戻っちゃうんだけど!?」
「まぁ、つまりは……ちゃんとりょうちゃんが考えないとダメってこと。今のは一応明莉の意見として提案しただけだから」
「……ありがとうございます。おかげで色々ミスせずに済みそうです」
ひたすらダメダメと言われてしまうくらいには僕の考えは甘かったようだ。もしかしたら明莉は最初に相談した時点で僕の間違いに気付いて……
「それより、明莉あっちのコーヒー店に出てるらしい新作スイーツ食べたいんだけど!」
……たわけじゃないようだけど、この少しの間の会話でそれを訂正してくれたのは本当に助かった。
明莉にしっかりと報酬を払わせて頂いた後は明莉の意見を参考にしつつ、僕自身でプレゼント選びをしていった。こういう選んでいる時が一番楽しいというのは聞いたことがあって、僕もそれなりに楽しさは見えてきたけど、それ以上に慣れないことをした疲れが出てきてしまった。
「これで二人のハートはイチコロだね!」
「だから、そういうのじゃないんだってば」
ともかく明日は誕生日会だ。
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