上 下
247 / 942
1年生2学期

12月6日(月)曇り 誕生日の延長戦

しおりを挟む
 期末テスト1日目。この前の中間テストと違って朝の教室が寒い中から始まるのは思考的にもペンを動かす手の動き的にも厳しいものだ。

 ただ、この日の感想はテストの内容よりもわたくしごとの方が中心になる。

「りょーちゃん、昨日は誕生日おめでとう! これ、のど飴」

「なんでのど飴?」

「今持ってるものがこれしかなかった」

「そういうことか。でも、ありがとう」

「う、産賀くん、おめでとう。ボクは何も持ってきてないけど……」

「その言葉だけで十分だよ」

「あれ? 飴あげたはずの俺より対応が良くない?」

 テストが始まる前に松永と大倉くんはそう声をかけてくれた。昨日もLINEでメッセージを送ってくれていたから僕としては本当に十分だったけど、直接言われるのはまた嬉しいものだ。

「良ちゃん、オレも今度何か持ってくるよ。のど飴以外で」

「おー うぶクン誕生日だったんだ。おめでとー」

 そのお祝いの声を周りが聞いたことで、僕は思った以上にクラスの人からお祝いの言葉を貰うことになる。こういう風に他の人が誕生日を祝う流れの時に僕は声を出せないタイプだから少し申し訳ないけど、これはこれでまた嬉しかった。

「産賀くん。一日遅れだけれど、改めてお誕生日おめでとう」

「おめでとうございます。リョウスケの新たな1年が良い日々でありますように」

 テスト終わりには少しだけ一緒に勉強することになった岸本さんと花園さんにも祝って貰えた。この二人とは後日誕生日会的なものをやる予定だから少なくともあと一回は祝われることになる。

――良助、今日は購買が開いてないからシュークリームは後日だ
――ちなみに私は誕生日過ぎてからだと、言ってくれなければたぶん忘れる

 清水先輩に先日話したことについてのメッセージ貰ったことも含めると、今日は今までで一番多くの人から誕生日を祝われたかもしれない。
 中学の時も松永や周りの友達が誕生日を祝ってくれることはあったけど、部活は途中から幽霊部員になった僕はそのクラスでの繋がり以外は何もなかった。
 それが高校になって少しだけ繋がりが広くなったことがたくさん祝われたと感じる理由である気がする。

 テストもそれなりにできて、祝われた嬉しさで満足感溢れる日だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

光のもとで1

葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。 小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。 自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。 そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。 初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする―― (全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます) 10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。

かのじょにせつなき青春なんてにあわない~世界から忘れられた歌姫を救いだせ~

すずと
青春
「あなただけが私を忘れてくれなければ良い。だから聞いて、私の歌を」  そう言って俺の最推しの歌姫は、俺だけに単独ライブを開いてくれた。なのに、俺は彼女を忘れてしまった。  大阪梅田の歩道橋を四ツ木世津《よつぎせつ》が歩いていると、ストリートライブをしている女性歌手がいた。  周りはストリートライブなんか興味すら持たずに通り過ぎていく。  そんなことは珍しくもないのだが、ストリートライブをしていたのは超人気歌手の出雲琴《いずもこと》こと、クラスメイトの日夏八雲《ひなつやくも》であった。  超人気歌手のストリートライブなのに誰も見向きもしないなんておかしい。  自分以外にも誰か反応するはずだ。  なんだか、世界が彼女を忘れているみたいで怖かった。  疑問に思った世津は、その疑問の調査をする名目で八雲とお近づきになるが──?  超人気歌手だった彼女とその最推しの俺との恋にまつまる物語が始まる。

ヒカリノツバサ~女子高生アイドルグラフィティ~

フジノシキ
青春
試合中の事故が原因でスキージャンプ選手を辞めた葛西美空、勉強も運動もなんでも70点なアニメ大好き柿木佑香、地味な容姿と性格を高校で変えたい成瀬玲、高校で出会った三人は、「アイドル同好会」なる部活に入ることになり……。 三人の少女がアイドルとして成長していく青春ストーリー。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

スカートなんて履きたくない

もちっぱち
青春
齋藤咲夜(さいとうさや)は、坂本翼(さかもとつばさ)と一緒に 高校の文化祭を楽しんでいた。 イケメン男子っぽい女子の同級生の悠(はるか)との関係が友達よりさらにどんどん近づくハラハラドキドキのストーリーになっています。 女友達との関係が主として描いてます。 百合小説です ガールズラブが苦手な方は ご遠慮ください 表紙イラスト:ノノメ様

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

C-LOVERS

佑佳
青春
前半は群像的ラブコメ調子のドタバタ劇。 後半に行くほど赤面不可避の恋愛ストーリーになっていきますので、その濃淡をご期待くださいますと嬉しいです。 (各話2700字平均) ♧あらすじ♧ キザでクールでスタイリッシュな道化師パフォーマー、YOSSY the CLOWN。 世界を笑顔で満たすという野望を果たすため、今日も世界の片隅でパフォーマンスを始める。 そんなYOSSY the CLOWNに憧れを抱くは、服部若菜という女性。 生まれてこのかた上手く笑えたことのない彼女は、たった一度だけ、YOSSY the CLOWNの芸でナチュラルに笑えたという。 「YOSSY the CLOWNに憧れてます、弟子にしてください!」 そうして頭を下げるも煙に巻かれ、なぜか古びた探偵事務所を紹介された服部若菜。 そこで出逢ったのは、胡散臭いタバコ臭いヒョロガリ探偵・柳田良二。 YOSSY the CLOWNに弟子入りする術を知っているとかなんだとか。 柳田探偵の傍で、服部若菜が得られるものは何か──? 一方YOSSY the CLOWNも、各所で運命的な出逢いをする。 彼らのキラリと光る才に惹かれ、そのうちに孤高を気取っていたYOSSY the CLOWNの心が柔和されていき──。 コンプレックスにまみれた六人の男女のヒューマンドラマ。 マイナスとマイナスを足してプラスに変えるは、YOSSY the CLOWNの魔法?! いやいや、YOSSY the CLOWNのみならずかも? 恋愛も家族愛もクスッと笑いも絆や涙までてんこ盛り。 佑佳最愛の代表的物語、Returned U NOW!

僕が僕を許せる日まで

星夜るな
青春
当たり前の日々が突然崩れたあの日…。 何度もあの日、自分がいたら、早く帰れていたら…なんていうことを考える毎日。 僕は、あの日々を壊した犯人を許さない。 自分を許せない僕が新しい日々の中で変わっていく日常を描いた作品です。

処理中です...