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1年生2学期
12月2日(木)晴れ 変革は難しい
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この日は11月に行われた生徒総会で検討されることになった項目について、検討の結果が発表される。一番変わったところで言えば購買や自販機の商品について来年度の追加が決定されていたことだろう。今年度の3年生はその恩恵を受けられないけど、確か生徒総会の時に1・2年生から出ていた意見だからそこは成功と言える。
ただ、それ以外の校則に関わる部分について変更なしという結果に終わった。服装や化粧は引き続き古き良き校則に従うことになる。
「あーあ。ダメだったのかー」
その結果を受けて栗原さんはがっかりしていた。今日も化粧をしているのかどうかはわからないけど、そういうことが正式にできない限りは栗原さんにとって少し窮屈な学生生活になってしまう。
「産賀くん、副会長と知り合いだったよね?」
「えっ。うん。そうだけど……何?」
「今度会った時でいいから伝えて欲しいんだけど……」
栗原さんの次の言葉に僕は身構えてしまう。これで生徒会に対する文句を言われてしまったら、僕でせき止めなければならない。
「次の総会ではがんばってくださいって」
「ほっ……」
「おや? 何で安心してるの?」
「い、いや……わかったよ。そう伝えておく」
「副会長、この前の会の時もビシッとしててかっこよかったんだよねー できる女性で感じ!」
僕の心配とは裏腹に栗原さんの副会長に対する評価は以前に注意された時よりも高くなっていた。僕は桜庭先輩として知り合っているから栗原さんのような感想はあまり出てこないけど、そうでなければこういう感想になったんだろうか。
「というか、産賀くんと副会長が知り合った話、結局聞いてなくない?」
「それ長くなるから話さないって言った気がするし、てっきり忘れてるものかと……」
「忘れてないし、長くてもいいから話してよー 副会長ってどんな人なのかも知りたいし」
「そ、それで言うなら同じ茶道部の野島さんの方が詳しいから!」
どうにも誤魔化せなかった僕は思わず野島さんを巻き込んでしまう。でも、桜庭先輩について野島さんの方が詳しいのはたぶん事実だ。
その呼びかけに振り向いた野島さんは僕の方を一度だけ見てから話し出す。
「頼られてしまったからには仕方ない。質問を受け付けましょう」
「そもそも茶道部なのが初耳だったー で、副会長は茶道部だとどんな感じなの、野島ちゃん?」
「それはもう副会長の時に見せるような絵に描いたような模範的な人で誰に対しても優しく、人を弄ったりすることなんて全くないような……」
「えっ、そうなの?」
あまりに褒め称える言葉を並べるので僕は思わず口を挟んでしまった。その瞬間、野島さんはニヤリと笑う。
「あれ? 産賀くんはどこが疑問だったのかな? これはもしかしたら私が部活で知らないような桜庭先輩を知ってるとしか思えない!」
「ええっ!?」
「ほらー やっぱり産賀くんの方が詳しいんじゃん? 普段はどんなこと話してるの? 運命的な出会いだったり?」
「いや、僕はただ……野島さん!」
「私は何も悪くないよ? それに私も産賀くんと桜庭先輩がどんな風に知り合ったかは聞いてないから興味あるし」
僕はスケープゴートにする相手を間違えてしまったようだ。結局、逃げ場を失った僕は長くなりそうな話を適度に省略しながら桜庭先輩との出会いを二人と話した。もちろん、最初はちょっと敵視されていたことは言えるはずもないので、清水先輩と会った時からついでに仲良くなったことにしている。
そんな僕の話は置いといて、元からあったものを大きく変えることはたとえ学校であっても難しいのだと思った。
「産賀くんって、もしかして女子の先輩に好かれるタイプだったり?」
「ここだけの話、茶道部の先輩界隈では産賀くんはちょっとした話題の人なんだよねぇ。あっ、本人って知られてるわけじゃなくて、清水先輩と桜庭先輩が話すから謎の後輩としてなんだけど」
……やっぱり置いておけないかもしれない。早いうちに謎の後輩の話は控えめにして貰うように頼もう。
ただ、それ以外の校則に関わる部分について変更なしという結果に終わった。服装や化粧は引き続き古き良き校則に従うことになる。
「あーあ。ダメだったのかー」
その結果を受けて栗原さんはがっかりしていた。今日も化粧をしているのかどうかはわからないけど、そういうことが正式にできない限りは栗原さんにとって少し窮屈な学生生活になってしまう。
「産賀くん、副会長と知り合いだったよね?」
「えっ。うん。そうだけど……何?」
「今度会った時でいいから伝えて欲しいんだけど……」
栗原さんの次の言葉に僕は身構えてしまう。これで生徒会に対する文句を言われてしまったら、僕でせき止めなければならない。
「次の総会ではがんばってくださいって」
「ほっ……」
「おや? 何で安心してるの?」
「い、いや……わかったよ。そう伝えておく」
「副会長、この前の会の時もビシッとしててかっこよかったんだよねー できる女性で感じ!」
僕の心配とは裏腹に栗原さんの副会長に対する評価は以前に注意された時よりも高くなっていた。僕は桜庭先輩として知り合っているから栗原さんのような感想はあまり出てこないけど、そうでなければこういう感想になったんだろうか。
「というか、産賀くんと副会長が知り合った話、結局聞いてなくない?」
「それ長くなるから話さないって言った気がするし、てっきり忘れてるものかと……」
「忘れてないし、長くてもいいから話してよー 副会長ってどんな人なのかも知りたいし」
「そ、それで言うなら同じ茶道部の野島さんの方が詳しいから!」
どうにも誤魔化せなかった僕は思わず野島さんを巻き込んでしまう。でも、桜庭先輩について野島さんの方が詳しいのはたぶん事実だ。
その呼びかけに振り向いた野島さんは僕の方を一度だけ見てから話し出す。
「頼られてしまったからには仕方ない。質問を受け付けましょう」
「そもそも茶道部なのが初耳だったー で、副会長は茶道部だとどんな感じなの、野島ちゃん?」
「それはもう副会長の時に見せるような絵に描いたような模範的な人で誰に対しても優しく、人を弄ったりすることなんて全くないような……」
「えっ、そうなの?」
あまりに褒め称える言葉を並べるので僕は思わず口を挟んでしまった。その瞬間、野島さんはニヤリと笑う。
「あれ? 産賀くんはどこが疑問だったのかな? これはもしかしたら私が部活で知らないような桜庭先輩を知ってるとしか思えない!」
「ええっ!?」
「ほらー やっぱり産賀くんの方が詳しいんじゃん? 普段はどんなこと話してるの? 運命的な出会いだったり?」
「いや、僕はただ……野島さん!」
「私は何も悪くないよ? それに私も産賀くんと桜庭先輩がどんな風に知り合ったかは聞いてないから興味あるし」
僕はスケープゴートにする相手を間違えてしまったようだ。結局、逃げ場を失った僕は長くなりそうな話を適度に省略しながら桜庭先輩との出会いを二人と話した。もちろん、最初はちょっと敵視されていたことは言えるはずもないので、清水先輩と会った時からついでに仲良くなったことにしている。
そんな僕の話は置いといて、元からあったものを大きく変えることはたとえ学校であっても難しいのだと思った。
「産賀くんって、もしかして女子の先輩に好かれるタイプだったり?」
「ここだけの話、茶道部の先輩界隈では産賀くんはちょっとした話題の人なんだよねぇ。あっ、本人って知られてるわけじゃなくて、清水先輩と桜庭先輩が話すから謎の後輩としてなんだけど」
……やっぱり置いておけないかもしれない。早いうちに謎の後輩の話は控えめにして貰うように頼もう。
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