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1年生2学期
11月7日(日)晴れ 清水夢愛の夢探しその8
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本来なら家に籠ることが多い日曜日。しかし、この日の僕は珍しく外出することになる。ちょうどコタツの魔力を乗り越えた昨日の夜、清水先輩から連絡が入ってきた。
『良助、明日暇ならみんなでスポーツしないか?』
そのメッセージだけではよくわからなかったけど、続きを聞いたところ要するにスポーツができるアミューズメント施設へ行こうと誘われたことがわかった。どうやら清水先輩の次の興味は体を動かす方面に移ったらしい。
ただ、アミューズメント施設を選んだのは最近生徒会で忙しい桜庭先輩をリフレッシュさせたいという目的もあるようだ。そんな場に僕が呼ばれても良いのだろうかと思うけれど、断る理由もないので参加することになった。
そして、当日。現地集合するとそこには意外な人物がいた。
「あっ、ウーブ君! お疲れ~」
「…………」
「もう。お辞儀だけじゃなくて声かけてあげなよー」
それはソフィア先輩……ではなく、藤原先輩の方だ。清水先輩が言うみんながどんなメンツか予想する時にソフィア先輩は予想できるけど、藤原先輩がいるとは思わない。
「ウーブ君だけだと男子一人になっちゃうから呼んでみたの。どうせシュウも日曜日は暇だし」
「そ、そうだったんですか。すみません、藤原先輩。わざわざ来て貰って……」
「……謝る必要はないよ。呼んだのは……ソフィアの方だから……」
「何、その言い方~! たまには体動かさないと駄目でしょー」
なぜ藤原先輩が暇と把握しているのかはさておき、ソフィア先輩の気遣いはありがたい。ただでさえ先輩に囲まれると少し緊張するのに、男子が僕一人だけだったら余計に緊張していたに違いない。
「よし、全員集まったな! じゃあ、最初は……バドミントンから行くか!」
清水先輩を先頭に僕たちは施設内にあるコートへ向かう。ここには松永を含めた他の友達と何回か来たことがあるけど、僕はみんなに付いて行くばかりだったから詳しい場所や仕組みよくわかっていない。
「あれ? 小織、どうしてバレーボールが置いてあるんだ……?」
「ここは両方できるコートなの。ほら、ネットがあれば両方できるでしょ?」
「へー そういうものなのか」
そんなことを思っていたら清水先輩も僕と同じ状態だった。一方、リフレッシュして貰う側の桜庭先輩はそこそこ知っているようで、いつの間にか清水先輩を教える立場になっている。きっかけは清水先輩からでも最終的に二人の立場はいつも通りの形になるのかもしれない。
「まずは男子チーム対女子チームといくか。小織とソフィア、どっちか入ってくれ」
「こりりん、お先にどうぞー」
「それじゃあ、遠慮なく」
清水先輩が話を進めるのでいきなりコートに立つことになってしまった。遊びに行くこと自体は了承したものの、僕自身は特にスポーツが得意ではないので、なるべく見学する側に回ろうと思っていた。でも、今日は5人だから見学する暇はない可能性が高い。
「藤原先輩……始める前に言って申し訳ないんですけど、僕はバドミントン……というかスポーツ全般苦手です」
「……オレも苦手だから……大丈……ぶじゃないか。そもそも……バドミントンのルール、よく覚えて……ない」
「言われてみれば僕も覚えてません。ダブルスって交互に打たなきゃ駄目とかあるんですっけ……?」
今日は遊びなのだからあまり気にしなくてもいいはずなのに、得意でない側ほど無駄にルールを気にしがちだと我ながら思う。僕と藤原先輩はスマホでダブルスのルールを確認してからポジションについた。
「大丈夫そうかー? 行くぞー!」
清水先輩の合図からラリーが始まる……と思いきや清水先輩のサーブは僕の予想(恐らく藤原先輩も)をはるかに上回る速度で放たれる。当然ながら僕と藤原先輩は一歩も動けなかった。
「夢愛、いきなりそれは酷いんじゃない?」
「そうか? おーい! そっちから始めていいぞー!」
清水先輩はそう言ってくれるけど、まともに打ち返せないと悟った僕と藤原先輩はお互いに助けを求めるように目を合わせる。
それ以降、サーブから本気を出されることはなくなったけど、ラリーの途中でスマッシュを打たれると対応できるはずもなく、終始清水・桜庭ペアのペースだった。ソフィア先輩が点数を数えてくれていたけど、結果は見るまでもない。
「なんだ、二人ともそんなにバドミントン得意じゃなかったのか」
「得意じゃないのもあるんですけど、清水先輩と桜庭先輩が凄かったのもあると思います……」
「あら、私は普通だと思うけど。夢愛にはあんまり勝てないし」
「うーむ……じゃあ、次は男女混合でやるか」
「それはいいけど、そろそろ交代だから次へ行きましょう」
桜庭先輩に言われて気付いたけど、コートの外には次の団体が待ち構えていた。このアミューズメント施設は地域で遊べる限られた場所の一つであり、日曜日ということもあって施設内のスポットはどこも学生や親子連れでいっぱいだった。
それからは空いてる場所に入っては女子の先輩方の運動能力に男子二人は翻弄される。体育祭の時も走れると豪語していたソフィア先輩が運動全般はできると思ったけど、謙遜していた桜庭先輩も僕と比べたらかなり動ける方で誰と組んでも介護されるばかりだった。
「シュウ、降る直前までボールから目を離さないように!」
「……そう言われても」
「シュッて振って、スパーンと打ち抜くんだ!」
あちこち動き続ける中、ようやく僕が腰を降ろせたのはバッティングコーナーで藤原先輩が熱血指導を受けている時だった。
「お疲れみたいね、産賀くん」
そんなベンチ待機している僕に桜庭先輩は声をかける。
「今回も夢愛の唐突な思い付きに巻き込んで悪かったわね」
「いえ、疲れてるのはその通りですけど、ちゃんと僕も楽しんでるんで」
「それなら良かったわ。最近は文芸部の方にもお邪魔したみたいだけど、そっちはソフィアが手引きしてくれたみたいだし、色々助かってるわ。まぁ、今回限りの訪問になったみたいだけど」
「はい。清水先輩はやりたいことを見つけるのに苦戦してるみたいですね」
「うーん……別に苦戦してるわけじゃなくて、本人がやりたいようにやってるだけだと思う。つまりはあんまり今までと変わってないわ」
「そ、そうですか……」
「……だけど、こんな風に誰かを誘って大人数で遊ぶようになったんだから、それだけでも十分な進歩だと思う」
そう言われてみると、今も楽しそうに藤原先輩へ野次(?)を送る清水先輩の姿は今までになかった姿かもしれない。文芸部に訪れて岸本さんのことを気にしていた時も失礼ながら僕は少しだけ意外だと思った。僕が知っている以前の清水先輩ならあまり知らない人に対してだと我が道を貫くものだと思ってしまったからだ。
でも、今の清水先輩は友達や周りの人も含めて興味を広げている。僕の清水先輩に対する古いイメージは改めなければならない。
「……ところで産賀くん」
「はい、何ですか?」
「あの二人ってまだ付き合ってない感じなの?」
「えっ? 文芸部内ではそこまでの仲になってないって言われてますけど……」
「そっちも気になるけど、そうじゃなくて……ほら、あそこ」
桜庭先輩が指差した方向にいたのは大山さんと本田くんを含めたうちのクラスの数名だった。それを見た瞬間、僕はすぐに姿勢を低くした。
「何? 見つかったら都合が悪いの?」
「あっ、いや…………悪いような、そうでもないような……」
「私、夏休みの時に手伝ってからあの二人について何の続報も受けてなかったから気になってたのよね。声かけて来てもいい?」
「ちょっと待ってください! 今は何というか……いい感じではあるらしいです」
「何であやふやな感じなの?」
それは僕がこの件から距離を置いているからだ。そして、そのことから僕は暫くこういう遊びの場に参加していないので、他のグループにいるところを見られると何だか気まずい。そのことを桜庭先輩に伝えるべきか否か迷っていると、桜庭先輩はニヤリと笑う。
「まぁ、色々あるみたいだから今日のところはその情報で満足しておくわ」
「あ、ありがとうございます」
「……うん。やっぱり後輩を弄るのが一番お手軽にリフレッシュできるわね」
「……桜庭先輩。クラスや茶道部でもそういうことやってるんですか?」
「いいえ。誰でもやってるわけじゃないわ。でも、茶道部内にもそういう後輩が一人いるかも」
誰だかわからないけど、その後輩には激しく同情する。僕よりも圧倒的に桜庭先輩と接する回数が多いだろうから苦労しているに違いない。もちろん、これはこれで桜庭先輩らしい接し方だと思うから嫌なわけじゃないけど、変に汗をかかせられるのは勘弁して欲しいものだ。
◇
「今日は十分楽しめたな。たまにはこういう場所で遊ぶのも悪くない」
「うんうん。誘ってくれてありがとね、ゆあゆあ! シュウも少しは健康的になった?」
「……明日……筋肉痛」
約3時間ほどの滞在で遊び尽くした僕たちはそのまま別れの挨拶をして解散する。藤原先輩には来週会った時に何か差し入れするべきかもしれない。そう考えながら僕が駐輪場へ向かっている時だ。
「うぶクン?」
何故か外に出ていた大山さんとバッタリ会ってしまう。今度は姿勢を低くしても誤魔化せない距離だ。
「こ、こんにちは」
「今日来てたんだ? 今から帰り?」
「う、うん。偶然……でもないか。ここら辺だと遊ぶとこ少ないし……」
「前にカラオケで会った時もそんなこと言ってたー 誰と来てたの?」
「部活の先輩方と。大山さんは……」
会話の流れで自然とそう聞いてしまったけど、完全に失敗だった。最近僕が参加していない理由を聞かれたら何と言い訳したらいいんだろう。
「あっ。アタシ、そろそろ戻らなきゃ。また学校でね、うぶクン」
「えっ? うん、また……」
しかし、僕の焦りを知ってか知らずか、大山さんは施設内へ戻って行った。てっきり帰るタイミングが重なっていたのだと思ったけど、外の空気を吸いに来ただけだったようだ。
「……まぁ、いいか」
大山さんの方が気にしていないならそれでいい。全身の疲れからそれ以上は深く考えずに僕は自転車で帰宅していった。
『良助、明日暇ならみんなでスポーツしないか?』
そのメッセージだけではよくわからなかったけど、続きを聞いたところ要するにスポーツができるアミューズメント施設へ行こうと誘われたことがわかった。どうやら清水先輩の次の興味は体を動かす方面に移ったらしい。
ただ、アミューズメント施設を選んだのは最近生徒会で忙しい桜庭先輩をリフレッシュさせたいという目的もあるようだ。そんな場に僕が呼ばれても良いのだろうかと思うけれど、断る理由もないので参加することになった。
そして、当日。現地集合するとそこには意外な人物がいた。
「あっ、ウーブ君! お疲れ~」
「…………」
「もう。お辞儀だけじゃなくて声かけてあげなよー」
それはソフィア先輩……ではなく、藤原先輩の方だ。清水先輩が言うみんながどんなメンツか予想する時にソフィア先輩は予想できるけど、藤原先輩がいるとは思わない。
「ウーブ君だけだと男子一人になっちゃうから呼んでみたの。どうせシュウも日曜日は暇だし」
「そ、そうだったんですか。すみません、藤原先輩。わざわざ来て貰って……」
「……謝る必要はないよ。呼んだのは……ソフィアの方だから……」
「何、その言い方~! たまには体動かさないと駄目でしょー」
なぜ藤原先輩が暇と把握しているのかはさておき、ソフィア先輩の気遣いはありがたい。ただでさえ先輩に囲まれると少し緊張するのに、男子が僕一人だけだったら余計に緊張していたに違いない。
「よし、全員集まったな! じゃあ、最初は……バドミントンから行くか!」
清水先輩を先頭に僕たちは施設内にあるコートへ向かう。ここには松永を含めた他の友達と何回か来たことがあるけど、僕はみんなに付いて行くばかりだったから詳しい場所や仕組みよくわかっていない。
「あれ? 小織、どうしてバレーボールが置いてあるんだ……?」
「ここは両方できるコートなの。ほら、ネットがあれば両方できるでしょ?」
「へー そういうものなのか」
そんなことを思っていたら清水先輩も僕と同じ状態だった。一方、リフレッシュして貰う側の桜庭先輩はそこそこ知っているようで、いつの間にか清水先輩を教える立場になっている。きっかけは清水先輩からでも最終的に二人の立場はいつも通りの形になるのかもしれない。
「まずは男子チーム対女子チームといくか。小織とソフィア、どっちか入ってくれ」
「こりりん、お先にどうぞー」
「それじゃあ、遠慮なく」
清水先輩が話を進めるのでいきなりコートに立つことになってしまった。遊びに行くこと自体は了承したものの、僕自身は特にスポーツが得意ではないので、なるべく見学する側に回ろうと思っていた。でも、今日は5人だから見学する暇はない可能性が高い。
「藤原先輩……始める前に言って申し訳ないんですけど、僕はバドミントン……というかスポーツ全般苦手です」
「……オレも苦手だから……大丈……ぶじゃないか。そもそも……バドミントンのルール、よく覚えて……ない」
「言われてみれば僕も覚えてません。ダブルスって交互に打たなきゃ駄目とかあるんですっけ……?」
今日は遊びなのだからあまり気にしなくてもいいはずなのに、得意でない側ほど無駄にルールを気にしがちだと我ながら思う。僕と藤原先輩はスマホでダブルスのルールを確認してからポジションについた。
「大丈夫そうかー? 行くぞー!」
清水先輩の合図からラリーが始まる……と思いきや清水先輩のサーブは僕の予想(恐らく藤原先輩も)をはるかに上回る速度で放たれる。当然ながら僕と藤原先輩は一歩も動けなかった。
「夢愛、いきなりそれは酷いんじゃない?」
「そうか? おーい! そっちから始めていいぞー!」
清水先輩はそう言ってくれるけど、まともに打ち返せないと悟った僕と藤原先輩はお互いに助けを求めるように目を合わせる。
それ以降、サーブから本気を出されることはなくなったけど、ラリーの途中でスマッシュを打たれると対応できるはずもなく、終始清水・桜庭ペアのペースだった。ソフィア先輩が点数を数えてくれていたけど、結果は見るまでもない。
「なんだ、二人ともそんなにバドミントン得意じゃなかったのか」
「得意じゃないのもあるんですけど、清水先輩と桜庭先輩が凄かったのもあると思います……」
「あら、私は普通だと思うけど。夢愛にはあんまり勝てないし」
「うーむ……じゃあ、次は男女混合でやるか」
「それはいいけど、そろそろ交代だから次へ行きましょう」
桜庭先輩に言われて気付いたけど、コートの外には次の団体が待ち構えていた。このアミューズメント施設は地域で遊べる限られた場所の一つであり、日曜日ということもあって施設内のスポットはどこも学生や親子連れでいっぱいだった。
それからは空いてる場所に入っては女子の先輩方の運動能力に男子二人は翻弄される。体育祭の時も走れると豪語していたソフィア先輩が運動全般はできると思ったけど、謙遜していた桜庭先輩も僕と比べたらかなり動ける方で誰と組んでも介護されるばかりだった。
「シュウ、降る直前までボールから目を離さないように!」
「……そう言われても」
「シュッて振って、スパーンと打ち抜くんだ!」
あちこち動き続ける中、ようやく僕が腰を降ろせたのはバッティングコーナーで藤原先輩が熱血指導を受けている時だった。
「お疲れみたいね、産賀くん」
そんなベンチ待機している僕に桜庭先輩は声をかける。
「今回も夢愛の唐突な思い付きに巻き込んで悪かったわね」
「いえ、疲れてるのはその通りですけど、ちゃんと僕も楽しんでるんで」
「それなら良かったわ。最近は文芸部の方にもお邪魔したみたいだけど、そっちはソフィアが手引きしてくれたみたいだし、色々助かってるわ。まぁ、今回限りの訪問になったみたいだけど」
「はい。清水先輩はやりたいことを見つけるのに苦戦してるみたいですね」
「うーん……別に苦戦してるわけじゃなくて、本人がやりたいようにやってるだけだと思う。つまりはあんまり今までと変わってないわ」
「そ、そうですか……」
「……だけど、こんな風に誰かを誘って大人数で遊ぶようになったんだから、それだけでも十分な進歩だと思う」
そう言われてみると、今も楽しそうに藤原先輩へ野次(?)を送る清水先輩の姿は今までになかった姿かもしれない。文芸部に訪れて岸本さんのことを気にしていた時も失礼ながら僕は少しだけ意外だと思った。僕が知っている以前の清水先輩ならあまり知らない人に対してだと我が道を貫くものだと思ってしまったからだ。
でも、今の清水先輩は友達や周りの人も含めて興味を広げている。僕の清水先輩に対する古いイメージは改めなければならない。
「……ところで産賀くん」
「はい、何ですか?」
「あの二人ってまだ付き合ってない感じなの?」
「えっ? 文芸部内ではそこまでの仲になってないって言われてますけど……」
「そっちも気になるけど、そうじゃなくて……ほら、あそこ」
桜庭先輩が指差した方向にいたのは大山さんと本田くんを含めたうちのクラスの数名だった。それを見た瞬間、僕はすぐに姿勢を低くした。
「何? 見つかったら都合が悪いの?」
「あっ、いや…………悪いような、そうでもないような……」
「私、夏休みの時に手伝ってからあの二人について何の続報も受けてなかったから気になってたのよね。声かけて来てもいい?」
「ちょっと待ってください! 今は何というか……いい感じではあるらしいです」
「何であやふやな感じなの?」
それは僕がこの件から距離を置いているからだ。そして、そのことから僕は暫くこういう遊びの場に参加していないので、他のグループにいるところを見られると何だか気まずい。そのことを桜庭先輩に伝えるべきか否か迷っていると、桜庭先輩はニヤリと笑う。
「まぁ、色々あるみたいだから今日のところはその情報で満足しておくわ」
「あ、ありがとうございます」
「……うん。やっぱり後輩を弄るのが一番お手軽にリフレッシュできるわね」
「……桜庭先輩。クラスや茶道部でもそういうことやってるんですか?」
「いいえ。誰でもやってるわけじゃないわ。でも、茶道部内にもそういう後輩が一人いるかも」
誰だかわからないけど、その後輩には激しく同情する。僕よりも圧倒的に桜庭先輩と接する回数が多いだろうから苦労しているに違いない。もちろん、これはこれで桜庭先輩らしい接し方だと思うから嫌なわけじゃないけど、変に汗をかかせられるのは勘弁して欲しいものだ。
◇
「今日は十分楽しめたな。たまにはこういう場所で遊ぶのも悪くない」
「うんうん。誘ってくれてありがとね、ゆあゆあ! シュウも少しは健康的になった?」
「……明日……筋肉痛」
約3時間ほどの滞在で遊び尽くした僕たちはそのまま別れの挨拶をして解散する。藤原先輩には来週会った時に何か差し入れするべきかもしれない。そう考えながら僕が駐輪場へ向かっている時だ。
「うぶクン?」
何故か外に出ていた大山さんとバッタリ会ってしまう。今度は姿勢を低くしても誤魔化せない距離だ。
「こ、こんにちは」
「今日来てたんだ? 今から帰り?」
「う、うん。偶然……でもないか。ここら辺だと遊ぶとこ少ないし……」
「前にカラオケで会った時もそんなこと言ってたー 誰と来てたの?」
「部活の先輩方と。大山さんは……」
会話の流れで自然とそう聞いてしまったけど、完全に失敗だった。最近僕が参加していない理由を聞かれたら何と言い訳したらいいんだろう。
「あっ。アタシ、そろそろ戻らなきゃ。また学校でね、うぶクン」
「えっ? うん、また……」
しかし、僕の焦りを知ってか知らずか、大山さんは施設内へ戻って行った。てっきり帰るタイミングが重なっていたのだと思ったけど、外の空気を吸いに来ただけだったようだ。
「……まぁ、いいか」
大山さんの方が気にしていないならそれでいい。全身の疲れからそれ以上は深く考えずに僕は自転車で帰宅していった。
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