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1年生2学期
11月6日(土)曇り時々晴れ 明莉との日常その23
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二週間ぶりの土曜日の休み。でも、10月の土曜日は色々あったことから完全に休める日になるのはもっと久しぶりな気がする。
そんな中、僕はこの日の午前中に母さんに頼まれてとある準備を手伝うことになった。
そして、それは明莉が部活から帰って来た昼過ぎには完全にセッティングされる。
「うわぁ! コタツ出したんだぁ!?」
明莉のその驚きは嬉しい意味だろう。うちではだいたい11月に入った辺りで居間にコタツが設置される。こうなると、居間での勉強効率は格段に落ちてしまうけど、その温かさの魔力には逆らえない。
「おかえり。もう付けてるけど、部活で温まってる感じ?」
「帰るまでで冷えちゃったし入るー!」
そう言って即座に手洗いと着替えを済ませた明莉はコタツへ入ってくる。家族で入るコタツの定位置は決まっていて、明莉はテレビに最も近い位置で、僕は明莉が入っている側から見て左隣の位置だ。
「ふ~ いいコタツだ~」
「お風呂みたいな感想になってる」
「でも、そういう感じはあるでしょ? 布団とは違うコタツならではの温かさっていうか」
「わかるわかる。コタツに入ってるなーって感じだよね」
「お母さん達は出かけてるの?」
「うん。いたらここに入ってるだろうし」
「だよねー もしかしてみかんとか買ってきてくれてるのかな」
コタツが出るまでは居間は僕と明莉が占領することが多いけど、コタツが出れば他の部屋にはないから父さん母さん含めて集結することになる。食卓以外で4人が机を囲むことは意外にないものだから僕にとってコタツは家族のイメージが強い。
「ダメだ、りょうちゃん……あかり、月曜日の朝にここへ入った学校行ける自信ないよ」
「確かになぁ。でも、朝起きて寒い体を温めるには入らないわけにもいかないし」
「せめて学校の机もコタツみたいになってたらなぁ」
「それだと授業中絶対寝ちゃうでしょ」
「だって、あかり達はスカートなんだよ!? ちょっとくらい温かくしてくれてもいいじゃん!」
それはごもっともな意見である。普通にズボンでも寒いと思うのだからスカートなんて考えられないと思ってしまう。
「何回か聞いてるかもしれないけど、冬の間ってどう防寒対策してるの?」
「えっ……りょうちゃんもそういうこと気になるお年頃ですか?」
「あっ、いや……聞いて悪い事なら言わないでいい」
「ううん。別にそんなことないよ。まぁ、重ね着して温かくしたり、カイロ付けたりかなぁ。スカートについては……我慢!」
「おしゃれは我慢か」
「でも、中学の制服のスカート、言うほどおしゃれでもないからなぁ」
「絶対変わらない部分だもんね。あっ、そういうの生徒会とかで何か意見出たりしないの」
「いやいや、生徒会が何かしてくれるなんてドラマや漫画じゃないんだから」
正論を言われてしまった。でも、桜庭先輩は化粧について何か働きかけようと言っていたからスカートの件も誰かが動けば変わる可能性はあるのかもしれない。問題は中学の時点でそんなに動けるほど情熱のある人がいるかどうかだけど。
「寒い話してたらますますコタツから出られなくなっちゃった……これはもう永住だね」
「永住も何も家だから」
「そう言ってるりょうちゃんも今日はもう動ける気がしてないでしょ?」
「……うん。夕飯まで絶対動かない」
すっかりコタツにキャッチされてしまった兄妹は両親が帰って来た後もトイレ以外は本当に夕飯まで動かなかった。月曜日はこの魔力に打ち勝てるように努力したい。
そんな中、僕はこの日の午前中に母さんに頼まれてとある準備を手伝うことになった。
そして、それは明莉が部活から帰って来た昼過ぎには完全にセッティングされる。
「うわぁ! コタツ出したんだぁ!?」
明莉のその驚きは嬉しい意味だろう。うちではだいたい11月に入った辺りで居間にコタツが設置される。こうなると、居間での勉強効率は格段に落ちてしまうけど、その温かさの魔力には逆らえない。
「おかえり。もう付けてるけど、部活で温まってる感じ?」
「帰るまでで冷えちゃったし入るー!」
そう言って即座に手洗いと着替えを済ませた明莉はコタツへ入ってくる。家族で入るコタツの定位置は決まっていて、明莉はテレビに最も近い位置で、僕は明莉が入っている側から見て左隣の位置だ。
「ふ~ いいコタツだ~」
「お風呂みたいな感想になってる」
「でも、そういう感じはあるでしょ? 布団とは違うコタツならではの温かさっていうか」
「わかるわかる。コタツに入ってるなーって感じだよね」
「お母さん達は出かけてるの?」
「うん。いたらここに入ってるだろうし」
「だよねー もしかしてみかんとか買ってきてくれてるのかな」
コタツが出るまでは居間は僕と明莉が占領することが多いけど、コタツが出れば他の部屋にはないから父さん母さん含めて集結することになる。食卓以外で4人が机を囲むことは意外にないものだから僕にとってコタツは家族のイメージが強い。
「ダメだ、りょうちゃん……あかり、月曜日の朝にここへ入った学校行ける自信ないよ」
「確かになぁ。でも、朝起きて寒い体を温めるには入らないわけにもいかないし」
「せめて学校の机もコタツみたいになってたらなぁ」
「それだと授業中絶対寝ちゃうでしょ」
「だって、あかり達はスカートなんだよ!? ちょっとくらい温かくしてくれてもいいじゃん!」
それはごもっともな意見である。普通にズボンでも寒いと思うのだからスカートなんて考えられないと思ってしまう。
「何回か聞いてるかもしれないけど、冬の間ってどう防寒対策してるの?」
「えっ……りょうちゃんもそういうこと気になるお年頃ですか?」
「あっ、いや……聞いて悪い事なら言わないでいい」
「ううん。別にそんなことないよ。まぁ、重ね着して温かくしたり、カイロ付けたりかなぁ。スカートについては……我慢!」
「おしゃれは我慢か」
「でも、中学の制服のスカート、言うほどおしゃれでもないからなぁ」
「絶対変わらない部分だもんね。あっ、そういうの生徒会とかで何か意見出たりしないの」
「いやいや、生徒会が何かしてくれるなんてドラマや漫画じゃないんだから」
正論を言われてしまった。でも、桜庭先輩は化粧について何か働きかけようと言っていたからスカートの件も誰かが動けば変わる可能性はあるのかもしれない。問題は中学の時点でそんなに動けるほど情熱のある人がいるかどうかだけど。
「寒い話してたらますますコタツから出られなくなっちゃった……これはもう永住だね」
「永住も何も家だから」
「そう言ってるりょうちゃんも今日はもう動ける気がしてないでしょ?」
「……うん。夕飯まで絶対動かない」
すっかりコタツにキャッチされてしまった兄妹は両親が帰って来た後もトイレ以外は本当に夕飯まで動かなかった。月曜日はこの魔力に打ち勝てるように努力したい。
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