214 / 942
1年生2学期
11月3日(水)晴れ 松永浩太の惚気話
しおりを挟む
祝日となる文化の日。そんな日とは何の関係もないけど、久しぶりに松永が家へ遊びに来た。
「いらっしゃい、まっちゃん」
「おお。今日は明莉ちゃんもいたんだ。お邪魔しまーす」
「待った! 家に上がりたくばジョノカの写真を見せるのだ」
「いや、普通に入らせてあげて」
明莉の発言に僕はツッコミを入れる。玄関でいきなり人のジョノカ……じゃなくて彼女の写真を要求するやつがあるか。
「まぁまぁ、りょーちゃん。そんなに見たいなら見せてあげよう。ちょっと待ってな」
しかし、それに対して松永はノリノリでスマホを見始める。そんなことあるのか。一応僕と遊ぶつもりで来て玄関で彼女の写真を見せびらかすことが。
「これが俺の彼女の伊月茉奈ちゃん」
「へぇ~ めっちゃ可愛いじゃん!」
「いやー それほどでもー」
「まっちゃんどうやって落としたの?」
「それは……中に入って話させて貰おうか」
明莉は松永をすぐに上げて居間へと導く。この時点で僕は完全に置いてけぼりだった。
「伊月さんかぁ。同じ学校だけど会ったことはないなぁ。どこの部活に入ってるの?」
「家庭科部だよ。あと今は委員会で美化委員やってるらしい」
「うーん。どっちも会うタイミングないなぁ……ていうか、それだとまっちゃんも知り合うタイミングなくない?」
「俺が中学3年で体育委員になった時にたまたま一緒になった。それから校内で見かけると話すようになってねー」
「へぇー それで連絡先を交換したの?」
「それは委員会の時かな。でも、初めはグループで話してたから個人でやり取りはしてなかったなぁ。遊びに行ったのも運動会終わった後、体育委員の打ち上げした時が初めてだし」
中学の体育委員でそんなことをしていたのは初耳である。いや、僕が部活も委員会もやってなかったから打ち上げに行くような状況になってなかったこともあるけど。
「じゃあ、付き合うまでの期間は短かった系?」
「いや、そんなこともないかな。その打ち上げが終わった後、俺は一応受験生だったし、勉強することになったんだけど、その時期も勉強進んでますか?とか体調を崩さないようにしてくださいとか、結構声をかけてくれて」
「おー! つまり、アタックしてきたのは伊月さんの方だったんだ!」
「そうそう。それで受験勉強のリフレッシュがてら二人で遊びに行くことが何回か増えてさー」
その話は「昨日もちょっと遊んじゃってさー」みたいなことで聞いた気がする。その時点では単に友達や先輩後輩の関係だったんだろうけど、よく受験勉強中にそんなことができたものだ。
「去年のクリスマスも一緒に遊んだりした?」
「もちろん。ただ、さすがに年明けからは本腰を入れたかったから暫くは連絡だけにしといて、2月に今の高校受かってから今度は俺からも誘ったりして……」
「じゃあ、卒業式の時のまっちゃんはもうリア充だったんだ」
「その時はまだ。付き合いだしたのはそれが終わって春休みに入ってからだった」
「どっちから告ったの?」
「茉奈ちゃんから来てくれた。俺もいい雰囲気だとは思ったけど……ほら、俺シャイだから」
「嘘だー まっちゃん、ちょっと待ってたんでしょ?」
僕もそう思う。松永はそういうことで踏み止まるタイプではない……他に付き合った話を聞いていないから感覚で言っているけど。
「さすが明莉ちゃん。実質俺の妹だぜ」
「いや、それはないから」
「急に冷たいなー まぁ、シャイは違うかもだけど、俺もちょっと迷ってて茉奈ちゃんの方が勇気を出してくれたんだ。あれからもう7ヶ月なんて……時は早い」
「そんなに経つんだー もっと早く言ってくれれば良かったのに」
「明莉ちゃんに言うタイミングないじゃん」
「りょうちゃんにも結構黙ってたくせにー」
「それはまぁ……ねぇ?」
僕に聞かれても困る。伊月さんと付き合い始めた後も松永は変わらず松永だったから「彼女できた?」なんて質問が出てくるわけがない。つまり僕は悪くない。
「最近はどこ遊びに行ったの?」
「今は茉奈ちゃんの方が受験生だからあんまり行けてないけど……」
「ちょっと待った……この話まだ続くの?」
無限に続けられそうな会話を僕が静止すると、明莉と松永から疑問に満ちた顔を見せられる。
「なんで止めるのりょうちゃん。面白いじゃん」
「りょーちゃんはあんまり聞いてくれないんだからたまには話させてよ」
「聞いてくれないって、別に聞きたい話でもない――」
「ちなみに初めて遊びに行った場所はどこだったの? 何か写真残ってない?」
「その頃はまだツーショットとかする感じじゃなかったから一番古い写真は……」
その後も松永&伊月さんのあれこれを聞かされることになり、明莉は楽しそうにしていた。惚気話を延々と聞かされてもどういう感情でいたらいいかわからない僕とはすごい違いだ。それが男女の違いか、年齢の違いか、はたまた根本的な問題か……疲れるから考えるのはやめておこう。
「いらっしゃい、まっちゃん」
「おお。今日は明莉ちゃんもいたんだ。お邪魔しまーす」
「待った! 家に上がりたくばジョノカの写真を見せるのだ」
「いや、普通に入らせてあげて」
明莉の発言に僕はツッコミを入れる。玄関でいきなり人のジョノカ……じゃなくて彼女の写真を要求するやつがあるか。
「まぁまぁ、りょーちゃん。そんなに見たいなら見せてあげよう。ちょっと待ってな」
しかし、それに対して松永はノリノリでスマホを見始める。そんなことあるのか。一応僕と遊ぶつもりで来て玄関で彼女の写真を見せびらかすことが。
「これが俺の彼女の伊月茉奈ちゃん」
「へぇ~ めっちゃ可愛いじゃん!」
「いやー それほどでもー」
「まっちゃんどうやって落としたの?」
「それは……中に入って話させて貰おうか」
明莉は松永をすぐに上げて居間へと導く。この時点で僕は完全に置いてけぼりだった。
「伊月さんかぁ。同じ学校だけど会ったことはないなぁ。どこの部活に入ってるの?」
「家庭科部だよ。あと今は委員会で美化委員やってるらしい」
「うーん。どっちも会うタイミングないなぁ……ていうか、それだとまっちゃんも知り合うタイミングなくない?」
「俺が中学3年で体育委員になった時にたまたま一緒になった。それから校内で見かけると話すようになってねー」
「へぇー それで連絡先を交換したの?」
「それは委員会の時かな。でも、初めはグループで話してたから個人でやり取りはしてなかったなぁ。遊びに行ったのも運動会終わった後、体育委員の打ち上げした時が初めてだし」
中学の体育委員でそんなことをしていたのは初耳である。いや、僕が部活も委員会もやってなかったから打ち上げに行くような状況になってなかったこともあるけど。
「じゃあ、付き合うまでの期間は短かった系?」
「いや、そんなこともないかな。その打ち上げが終わった後、俺は一応受験生だったし、勉強することになったんだけど、その時期も勉強進んでますか?とか体調を崩さないようにしてくださいとか、結構声をかけてくれて」
「おー! つまり、アタックしてきたのは伊月さんの方だったんだ!」
「そうそう。それで受験勉強のリフレッシュがてら二人で遊びに行くことが何回か増えてさー」
その話は「昨日もちょっと遊んじゃってさー」みたいなことで聞いた気がする。その時点では単に友達や先輩後輩の関係だったんだろうけど、よく受験勉強中にそんなことができたものだ。
「去年のクリスマスも一緒に遊んだりした?」
「もちろん。ただ、さすがに年明けからは本腰を入れたかったから暫くは連絡だけにしといて、2月に今の高校受かってから今度は俺からも誘ったりして……」
「じゃあ、卒業式の時のまっちゃんはもうリア充だったんだ」
「その時はまだ。付き合いだしたのはそれが終わって春休みに入ってからだった」
「どっちから告ったの?」
「茉奈ちゃんから来てくれた。俺もいい雰囲気だとは思ったけど……ほら、俺シャイだから」
「嘘だー まっちゃん、ちょっと待ってたんでしょ?」
僕もそう思う。松永はそういうことで踏み止まるタイプではない……他に付き合った話を聞いていないから感覚で言っているけど。
「さすが明莉ちゃん。実質俺の妹だぜ」
「いや、それはないから」
「急に冷たいなー まぁ、シャイは違うかもだけど、俺もちょっと迷ってて茉奈ちゃんの方が勇気を出してくれたんだ。あれからもう7ヶ月なんて……時は早い」
「そんなに経つんだー もっと早く言ってくれれば良かったのに」
「明莉ちゃんに言うタイミングないじゃん」
「りょうちゃんにも結構黙ってたくせにー」
「それはまぁ……ねぇ?」
僕に聞かれても困る。伊月さんと付き合い始めた後も松永は変わらず松永だったから「彼女できた?」なんて質問が出てくるわけがない。つまり僕は悪くない。
「最近はどこ遊びに行ったの?」
「今は茉奈ちゃんの方が受験生だからあんまり行けてないけど……」
「ちょっと待った……この話まだ続くの?」
無限に続けられそうな会話を僕が静止すると、明莉と松永から疑問に満ちた顔を見せられる。
「なんで止めるのりょうちゃん。面白いじゃん」
「りょーちゃんはあんまり聞いてくれないんだからたまには話させてよ」
「聞いてくれないって、別に聞きたい話でもない――」
「ちなみに初めて遊びに行った場所はどこだったの? 何か写真残ってない?」
「その頃はまだツーショットとかする感じじゃなかったから一番古い写真は……」
その後も松永&伊月さんのあれこれを聞かされることになり、明莉は楽しそうにしていた。惚気話を延々と聞かされてもどういう感情でいたらいいかわからない僕とはすごい違いだ。それが男女の違いか、年齢の違いか、はたまた根本的な問題か……疲れるから考えるのはやめておこう。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
期末テストで一番になれなかったら死ぬ
村井なお
青春
努力の意味を見失った少女。ひたむきに生きる病弱な少年。
二人はその言葉に一生懸命だった。
鶴崎舞夕は高校二年生である。
昔の彼女は成績優秀だった。
鹿島怜央は高校二年生である。
彼は成績優秀である。
夏も近いある日、舞夕は鹿島と出会う。
そして彼女は彼に惹かれていく。
彼の口にした一言が、どうしても忘れられなくて。
婚約破棄を訴える夫候補が国賊だと知っているのは私だけ~不義の妹も一緒におさらば~
岡暁舟
恋愛
「シャルロッテ、君とは婚約破棄だ!」
公爵令嬢のシャルロッテは夫候補の公爵:ゲーベンから婚約破棄を突きつけられた。その背後にはまさかの妹:エミリーもいて・・・でも大丈夫。シャルロッテは冷静だった。
ヒカリノツバサ~女子高生アイドルグラフィティ~
フジノシキ
青春
試合中の事故が原因でスキージャンプ選手を辞めた葛西美空、勉強も運動もなんでも70点なアニメ大好き柿木佑香、地味な容姿と性格を高校で変えたい成瀬玲、高校で出会った三人は、「アイドル同好会」なる部活に入ることになり……。
三人の少女がアイドルとして成長していく青春ストーリー。
かのじょにせつなき青春なんてにあわない~世界から忘れられた歌姫を救いだせ~
すずと
青春
「あなただけが私を忘れてくれなければ良い。だから聞いて、私の歌を」
そう言って俺の最推しの歌姫は、俺だけに単独ライブを開いてくれた。なのに、俺は彼女を忘れてしまった。
大阪梅田の歩道橋を四ツ木世津《よつぎせつ》が歩いていると、ストリートライブをしている女性歌手がいた。
周りはストリートライブなんか興味すら持たずに通り過ぎていく。
そんなことは珍しくもないのだが、ストリートライブをしていたのは超人気歌手の出雲琴《いずもこと》こと、クラスメイトの日夏八雲《ひなつやくも》であった。
超人気歌手のストリートライブなのに誰も見向きもしないなんておかしい。
自分以外にも誰か反応するはずだ。
なんだか、世界が彼女を忘れているみたいで怖かった。
疑問に思った世津は、その疑問の調査をする名目で八雲とお近づきになるが──?
超人気歌手だった彼女とその最推しの俺との恋にまつまる物語が始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スカートなんて履きたくない
もちっぱち
青春
齋藤咲夜(さいとうさや)は、坂本翼(さかもとつばさ)と一緒に
高校の文化祭を楽しんでいた。
イケメン男子っぽい女子の同級生の悠(はるか)との関係が友達よりさらにどんどん近づくハラハラドキドキのストーリーになっています。
女友達との関係が主として描いてます。
百合小説です
ガールズラブが苦手な方は
ご遠慮ください
表紙イラスト:ノノメ様
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
C-LOVERS
佑佳
青春
前半は群像的ラブコメ調子のドタバタ劇。
後半に行くほど赤面不可避の恋愛ストーリーになっていきますので、その濃淡をご期待くださいますと嬉しいです。
(各話2700字平均)
♧あらすじ♧
キザでクールでスタイリッシュな道化師パフォーマー、YOSSY the CLOWN。
世界を笑顔で満たすという野望を果たすため、今日も世界の片隅でパフォーマンスを始める。
そんなYOSSY the CLOWNに憧れを抱くは、服部若菜という女性。
生まれてこのかた上手く笑えたことのない彼女は、たった一度だけ、YOSSY the CLOWNの芸でナチュラルに笑えたという。
「YOSSY the CLOWNに憧れてます、弟子にしてください!」
そうして頭を下げるも煙に巻かれ、なぜか古びた探偵事務所を紹介された服部若菜。
そこで出逢ったのは、胡散臭いタバコ臭いヒョロガリ探偵・柳田良二。
YOSSY the CLOWNに弟子入りする術を知っているとかなんだとか。
柳田探偵の傍で、服部若菜が得られるものは何か──?
一方YOSSY the CLOWNも、各所で運命的な出逢いをする。
彼らのキラリと光る才に惹かれ、そのうちに孤高を気取っていたYOSSY the CLOWNの心が柔和されていき──。
コンプレックスにまみれた六人の男女のヒューマンドラマ。
マイナスとマイナスを足してプラスに変えるは、YOSSY the CLOWNの魔法?!
いやいや、YOSSY the CLOWNのみならずかも?
恋愛も家族愛もクスッと笑いも絆や涙までてんこ盛り。
佑佳最愛の代表的物語、Returned U NOW!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる