産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

文字の大きさ
上 下
211 / 942
1年生2学期

10月31日(日)晴れ 明莉との日常その22

しおりを挟む
 10月最終日でハロウィン当日。しかし、この日は特に外出予定がない僕はハロウィンのイベント感をテレビやゲームでしか感じられなかった。

「りょうちゃん、トリート!」

「いや、選択肢ないの!?」

 そんな中、友達と出かける前の明莉がハロウィンらしいことをしてくれる。内容は極端だけど。

「それに家の中で貰ってもあんまり意味ないのでは」

「りょうちゃん、そんなこと言ったらハロウィンの意味なんてもうずっとねじ曲がってるよ?」

「確かに……」

 本来のハロウィンは宗教的な意味があったらしいけど、今の日本のハロウィンは専ら仮装をしてお菓子を貰ったり食べたりする日になっている。ただ、こういうイベント事があるとそれに伴った限定商品が出てきて楽しめるから決して悪いことではないと思う・

「でも、僕が今からお菓子を渡すとなると、キッチンから取って来るだけになるぞ?」

「その距離でもパシれたらお得じゃない?」

「おいおい。というか、出かける前に貰っても困るんじゃないか?」

「もー せっかくのハロウィンなのに寂しいりょうちゃんにそれらしい雰囲気を感じて貰おうと思ったのに~」

 そ、そうだったのか! 優しい妹の気遣いだとは全く気付いていなかった。何かディスられた気もするけど、そうなればお菓子を渡すしかない。

「はい、お菓子をどうぞ」

「わーい! ……あれ? ちゃんとハロウィンっぽいお菓子だ」

「実は昨日の帰りに買っておいたんだ。期間限定のやつだよ」

「今日出かける予定ないのに?」

「そ、それはそうだけど、昨日クラスで貰ったお礼に月曜日に持って行くやつだから」

「なるほどねー ということは……昨日何も持ってなかったりょうちゃんはイタズラされまくったの?」

「ううん、無事だった」

「なぁんだ」

 明莉はつまらなさそうに言うけど、ハロウィンのこのやり取りで本当にイタズラする人なんているのだろうか。栗原さんにはそれっぽいことを言われたけど、特に何かされたわけでもないし……トリックオアトリートの合言葉も本来の意味を失いつつあるのかもしれない。

「それじゃあ、魑魅魍魎が蔓延る街へ出かけて来ますかぁ」

「この辺で仮装してうろつく人なんているの……?」

「まぁ、ショッピングモールの店員さんくらいじゃない? 何か面白い妖怪がいたら撮ってくるね!」

「あんまり他の人を撮るのは良くないからやめといて」

「あかりが言ってるのは本物の方だよ?」

「なおさら駄目でしょ!? ちゃんと逃げて!」

 明莉は僕の反応に笑いながらそのまま出かけて行った。ハロウィン当日に街へ繰り出したことがないから本当にどうなっているかわからないけど、少なくとも都会のように仮装パーティー会場になることはない。なっていたらそれなりのニュースになる。
 
 その夜、帰って来た明莉が見せてくれた写真は美味しそうなハロウィン限定スイーツだった。本物の魑魅魍魎がこの周辺にいたとしても期間限定の商品と映えを気にするこの時代の子たちは気付くことがないのだろうと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...