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1年生2学期
10月28日(木)晴れ 桜庭小織の野望その4
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特にイベント事はない木曜日。そう思っていたら朝の校門で予想外のものが待ち受けていた。それは生徒会の面々と生徒指導を担当する先生方だ。つまり、今日は服装や持ち物の抜き打ち検査をしている。僕からすれば特に問題がない話だけど、男女に関わらず何人かの生徒が捕まっていた。
「問題ないと思ってたんですけどね~」
そんな中、聞き覚えのある声がするのでその方向を見ると、栗原さんが捕まっていた。普段隣にいる時は特に問題がありそうな感じはしないけど、何か引っかかってしまったようだ。
「あっ、産賀くんだー」
「あら、産賀くんじゃない……えっ?」
「あれ? 知り合いなんですか?」
そして、その栗原を捕まえていたのが桜庭先輩だった。その時点で僕は嫌な予感がして軽く会釈して校内へ入ろうとする。
「そこの生徒、こっちへ来なさい」
すると、桜庭副会長はその権力を行使して僕を呼び止めた。それに反抗してしまったら僕は不良になってしまうから渋々二人の元へ寄っていく。
「な、何か問題がありましたか」
「ううん。面白そうだったから呼んだだけよ」
「あははー いいですね」
「いや、何が面白いんですか。何もないなら僕はこれで……」
「あー! 待って待って! 産賀くんには私の無実を証明して貰わないと」
「無実って、栗原さんはどこが引っかかったんですか」
「この子、ちょっとだけお化粧してたの。一応、うちの校則では化粧禁止だから」
そう言われて僕は栗原さんの顔を見るけど……全然わからない。ちょっとだけと言われても普段の栗原さんが化粧しているかどうかすら気付いていないからわかるはずもなかった。
「ほら、産賀くんはしてないって顔してますよ」
「産賀くん……がっかりだわ」
「今ので僕の心証が悪くなるんですか!?」
「冗談よ。でも、私もしないわけじゃないからお化粧の有無くらいはわかるわ。別に認めても内心点を下げるとかじゃないから素直に認めて貰えない?」
「あっ、そうなんですねー すみません、ちょっとだけしてます」
「よろしい。今後は気を付けてね」
二人は流れるように会話を進めていく。これでは無駄に僕の評価が下げられただけだ。
「いいんですか? そんなやんわりした注意で……」
「副会長なのにって言いたいの?」
「産賀くんはどっちの味方なのー?」
駄目だ。よくわからないけど、僕を見つけた時点で二人のターゲットは僕をいじることになっている。余計なことを口走った。
「そういうわけじゃ……」
「まぁ、この場で落とせというわけにもいかないからね。それにお化粧したい気持ちはわからなくもないし」
「副会長……! 私、今度から副会長を支持します!」
「ありがとう。そうね……11月に生徒総会があるからそこでお化粧に関することも議題に出していいかも」
「それで校則は変わったりするんですか?」
「たぶん難しいと思うわ。でも、せっかくならやってみないとね」
桜庭先輩の前向きな発言に栗原さんは感銘を受けていた。僕からすると、桜庭先輩はそんなキャラだっただろうかと思ってしまうけど、今は副会長としての発言だから来月には本当に実践していそうだ。
「時間を取らせて悪かったわね。それじゃあ二人とも今日も一日がんばって」
ようやく桜庭先輩から解放された僕と栗原さんは一緒に教室へ向かう。
「いやー 話がわかってくれる副会長で良かった~……ところで、産賀くんはそんな副会長といつ知り合いに?」
「……話せば長くなるから話さない」
「何それめっちゃ気になるー!」
副会長だから他の生徒と関わることはあるのだろうけど、まさか知り合いと絡む現場に居合わせることになるなんて思わなかった。前にも思った気がするけど、僕の世間は案外狭いのかもしれない。
「問題ないと思ってたんですけどね~」
そんな中、聞き覚えのある声がするのでその方向を見ると、栗原さんが捕まっていた。普段隣にいる時は特に問題がありそうな感じはしないけど、何か引っかかってしまったようだ。
「あっ、産賀くんだー」
「あら、産賀くんじゃない……えっ?」
「あれ? 知り合いなんですか?」
そして、その栗原を捕まえていたのが桜庭先輩だった。その時点で僕は嫌な予感がして軽く会釈して校内へ入ろうとする。
「そこの生徒、こっちへ来なさい」
すると、桜庭副会長はその権力を行使して僕を呼び止めた。それに反抗してしまったら僕は不良になってしまうから渋々二人の元へ寄っていく。
「な、何か問題がありましたか」
「ううん。面白そうだったから呼んだだけよ」
「あははー いいですね」
「いや、何が面白いんですか。何もないなら僕はこれで……」
「あー! 待って待って! 産賀くんには私の無実を証明して貰わないと」
「無実って、栗原さんはどこが引っかかったんですか」
「この子、ちょっとだけお化粧してたの。一応、うちの校則では化粧禁止だから」
そう言われて僕は栗原さんの顔を見るけど……全然わからない。ちょっとだけと言われても普段の栗原さんが化粧しているかどうかすら気付いていないからわかるはずもなかった。
「ほら、産賀くんはしてないって顔してますよ」
「産賀くん……がっかりだわ」
「今ので僕の心証が悪くなるんですか!?」
「冗談よ。でも、私もしないわけじゃないからお化粧の有無くらいはわかるわ。別に認めても内心点を下げるとかじゃないから素直に認めて貰えない?」
「あっ、そうなんですねー すみません、ちょっとだけしてます」
「よろしい。今後は気を付けてね」
二人は流れるように会話を進めていく。これでは無駄に僕の評価が下げられただけだ。
「いいんですか? そんなやんわりした注意で……」
「副会長なのにって言いたいの?」
「産賀くんはどっちの味方なのー?」
駄目だ。よくわからないけど、僕を見つけた時点で二人のターゲットは僕をいじることになっている。余計なことを口走った。
「そういうわけじゃ……」
「まぁ、この場で落とせというわけにもいかないからね。それにお化粧したい気持ちはわからなくもないし」
「副会長……! 私、今度から副会長を支持します!」
「ありがとう。そうね……11月に生徒総会があるからそこでお化粧に関することも議題に出していいかも」
「それで校則は変わったりするんですか?」
「たぶん難しいと思うわ。でも、せっかくならやってみないとね」
桜庭先輩の前向きな発言に栗原さんは感銘を受けていた。僕からすると、桜庭先輩はそんなキャラだっただろうかと思ってしまうけど、今は副会長としての発言だから来月には本当に実践していそうだ。
「時間を取らせて悪かったわね。それじゃあ二人とも今日も一日がんばって」
ようやく桜庭先輩から解放された僕と栗原さんは一緒に教室へ向かう。
「いやー 話がわかってくれる副会長で良かった~……ところで、産賀くんはそんな副会長といつ知り合いに?」
「……話せば長くなるから話さない」
「何それめっちゃ気になるー!」
副会長だから他の生徒と関わることはあるのだろうけど、まさか知り合いと絡む現場に居合わせることになるなんて思わなかった。前にも思った気がするけど、僕の世間は案外狭いのかもしれない。
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