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1年生2学期
10月19日(火)晴れのち曇り 清水夢愛の夢探しその4
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テスト前日の火曜日。岸本さんが前日までお世話になるのは悪いから今日は自分でがんばると言ったので、授業を終えた僕はテスト週間恒例の松永と帰宅することになった。
「一応言っておこうか? 全然勉強してない!」
「いや、今日言うのはさすがにまずいだろ。休み挟まないで明日テストだぞ」
「うん。さすがに全然は嘘だけど、やっぱり前日まで普通に授業してからテストってさぁ」
「まぁ、気持ちはわかる」
「そういうものか? いつやってもテストはテストだと思うが……」
ぬるりと混ざってきた声に僕と松永が振り向くと、いつの間にか清水先輩が後ろに付いていた。前にもこんなことがあったような気がするけど、何故僕たちは会話に入られるまで気付かないのだろうか。本人には言わないけど、アサシンに向いているかもしれない。
「おお! 清水さんお久しぶりです! ミスコン2位おめでとうございました!」
「ありがとう。良助のご友人の松…………ながくん」
どうやら清水先輩もギリギリ覚えてくれたようだ。いや、逆に何でそんなに覚えられないのかわからないけど、恐らく清水先輩的に引っかかりづらい名前なんだ。そういうことにしておこう。
「どうしてひっそり付いて来るんですか。帰る方向も違いますし……明日テストなんですから帰って勉強してください」
「良助……先週はあんなにも頼ってくれたのにどうして今日は冷たいんだ……」
「そういうところあるよね、りょーちゃんって」
ふんわりした関係のくせに何故か二人は見事に連携する。ああ、そうか。僕を振り回すタイプで言えば二人は似ているところもあるのか……って分析している場合じゃない。
「事実を言ったまでです。というか、松永。僕のこと冷たいって思ってたのか」
「いやいや。普段は違うけど、テストに対しては先生や親みたいこと言い出すから」
「良助はそんな風に余裕がない感じなのに終わってみればちゃっかりいい点を取って余裕を見せるタイプだな?」
「そうなんですよー」
「いや、それ悪いことじゃないから。それで言ったら清水先輩はテストの点だけはいいみたいですけど……」
「おいおい。それじゃあ、私がテスト以外は駄目な感じに聞こえるじゃないか」
「でも、課題は出さないんですよね?」
「出さないな」
全く悪びれることなく言った。何がその自信に繋がっているのかわからない。
「へー じゃあ、清水さんは普段の授業で覚えちゃうタイプなんですね」
「そうそう。真面目に授業を聞いていればそうできるもんだ……まぁ、いくつか寝てる授業もあるが」
「やっぱり駄目じゃないですか!?」
「だから、そういうところを補うためにテスト勉強するんだ。違うか?」
「違うとは言いませんけど……凄く勿体ない!」
言葉を濁さず言うなら馬鹿と天才は紙一重とはまさにこのことだ。まぁ、その独特の思考があるからこそテストだけはできてしまうのかもしれない。
「しょうがない。今日はもう帰るとするか。また会おう、二人とも」
そう言い残して清水先輩は来た道を帰って行った。暇で話したかったならわざわざ後を付けずにどこか落ち着いた場所で話せばいいと思うけど、一応はテスト前とわかっているから気を遣っているのだろうか。いや、いいように取り過ぎている気もする。
「なんか今日は清水さんと息が合った気がする!」
「良かったな……」
「なんで疲れてるの、りょーちゃん」
「……放課後だからだよ」
清水先輩や松永みたいなタイプは僕にはない考え方があって、それが楽しいところでもあるけど、二対一でツッコむ立場に回ってしまうと、なかなか厄介なものだと改めて思った。
「一応言っておこうか? 全然勉強してない!」
「いや、今日言うのはさすがにまずいだろ。休み挟まないで明日テストだぞ」
「うん。さすがに全然は嘘だけど、やっぱり前日まで普通に授業してからテストってさぁ」
「まぁ、気持ちはわかる」
「そういうものか? いつやってもテストはテストだと思うが……」
ぬるりと混ざってきた声に僕と松永が振り向くと、いつの間にか清水先輩が後ろに付いていた。前にもこんなことがあったような気がするけど、何故僕たちは会話に入られるまで気付かないのだろうか。本人には言わないけど、アサシンに向いているかもしれない。
「おお! 清水さんお久しぶりです! ミスコン2位おめでとうございました!」
「ありがとう。良助のご友人の松…………ながくん」
どうやら清水先輩もギリギリ覚えてくれたようだ。いや、逆に何でそんなに覚えられないのかわからないけど、恐らく清水先輩的に引っかかりづらい名前なんだ。そういうことにしておこう。
「どうしてひっそり付いて来るんですか。帰る方向も違いますし……明日テストなんですから帰って勉強してください」
「良助……先週はあんなにも頼ってくれたのにどうして今日は冷たいんだ……」
「そういうところあるよね、りょーちゃんって」
ふんわりした関係のくせに何故か二人は見事に連携する。ああ、そうか。僕を振り回すタイプで言えば二人は似ているところもあるのか……って分析している場合じゃない。
「事実を言ったまでです。というか、松永。僕のこと冷たいって思ってたのか」
「いやいや。普段は違うけど、テストに対しては先生や親みたいこと言い出すから」
「良助はそんな風に余裕がない感じなのに終わってみればちゃっかりいい点を取って余裕を見せるタイプだな?」
「そうなんですよー」
「いや、それ悪いことじゃないから。それで言ったら清水先輩はテストの点だけはいいみたいですけど……」
「おいおい。それじゃあ、私がテスト以外は駄目な感じに聞こえるじゃないか」
「でも、課題は出さないんですよね?」
「出さないな」
全く悪びれることなく言った。何がその自信に繋がっているのかわからない。
「へー じゃあ、清水さんは普段の授業で覚えちゃうタイプなんですね」
「そうそう。真面目に授業を聞いていればそうできるもんだ……まぁ、いくつか寝てる授業もあるが」
「やっぱり駄目じゃないですか!?」
「だから、そういうところを補うためにテスト勉強するんだ。違うか?」
「違うとは言いませんけど……凄く勿体ない!」
言葉を濁さず言うなら馬鹿と天才は紙一重とはまさにこのことだ。まぁ、その独特の思考があるからこそテストだけはできてしまうのかもしれない。
「しょうがない。今日はもう帰るとするか。また会おう、二人とも」
そう言い残して清水先輩は来た道を帰って行った。暇で話したかったならわざわざ後を付けずにどこか落ち着いた場所で話せばいいと思うけど、一応はテスト前とわかっているから気を遣っているのだろうか。いや、いいように取り過ぎている気もする。
「なんか今日は清水さんと息が合った気がする!」
「良かったな……」
「なんで疲れてるの、りょーちゃん」
「……放課後だからだよ」
清水先輩や松永みたいなタイプは僕にはない考え方があって、それが楽しいところでもあるけど、二対一でツッコむ立場に回ってしまうと、なかなか厄介なものだと改めて思った。
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