175 / 942
1年生2学期
9月25日(土)晴れ 大山亜里沙との距離間その4
しおりを挟む
一旦創作から解放された土曜日。ただ、短歌も文化祭までには納得できるものを仕上げないといけないから暇な時間に考えておく必要がある。
そんなことを書いておきながらこの日は彼岸の墓参りを済ませた後、暇を持て余すという最上級に贅沢な時間を過ごしていた。
しかし、その時間は松永からの電話で破られることになる。
『もしもし、りょーちゃん?』
事前に電話をかける許可を取らないのはいつものことだったけど、松永の口調はいつものような元気さがなかった。
「急にどうしたんだ?」
『いやー……そのー……』
「なんだ、歯切れが悪いな。言いづらい話なのに電話したのか?」
『一応メッセージより口で伝えた方がいいかと思って』
「だったら、遠慮せず言ってくれ」
今更松永から何を言われようとそれほど驚くことはない。それでも松永は少し時間をかけて恐らく言葉を選び終わった後に話し出す。
『実は月曜日の振替休日にまた集まりがあるんだ。いつものぽんちゃんと大山ちゃんのやつね』
「あー……なるほど。大丈夫、僕は暇だから――」
『いや、そうじゃなくて……今回からりょーちゃんは無理に参加しなくてもいいって言おうと思ってさ』
「……えっ?」
『りょーちゃんは協力したいって気持ちはまだあるだろうけど、こういうの得意じゃないから結構無理してたのはわかってた。それでも夏休み中は他のメンツにするのが難しくて付き合って貰ってたんだけど』
「それは……うん」
『それから大山ちゃんが遊ぶなら4人組までがいいって、りょーちゃんのおかげでわかったから今回からそんなに大所帯にしなくてもいいかなーって思って』
尚も遠慮しながら話す松永は夏休みの最後の方で僕が本田くんと大山さんの件で悩んでいたことを気にしてくれていたのだろう。その一方で僕が本田くんに協力すべきだと思っているからそこについても解決しようとしてくれている。
『あっ。他のみんなには俺が上手い事言っとくから、そこは気にしないでいいよ』
「……わかった。こういうのは松永に任せた方が間違いないし、僕はまた手伝いがいるようだったら協力するよ」
それを早い段階で読み取れたから僕は食い下がることなく、松永の厚意に甘えることにした。
『OK。ぽんちゃんにもそう伝えとく。それよりさ、りょーちゃん――』
それから松永はもう一つの話題へ上手く切り替える。
こうして、僕は本田くんと大山さんの件についてはひとまず一歩引いた立場で見ることになった。戦力外通告とも取れてしまうことを松永は気にしていたのかもしれないけど、実際に夏休み中の僕は最後の夏祭りのセッティング以外で役立った気はしていない。
それに僕は他人の恋を応援する前に自分が本気で恋をしたことがないのだから上手く立ち回れるはずがなかったのだ。その点、松永は僕よりも圧倒的に進んでいて頼りがいがある。
……なんて風に書いてみるけど、付いて行けない自分にほんのちょっとだけやるせなさを感じてしまった。
そんなことを書いておきながらこの日は彼岸の墓参りを済ませた後、暇を持て余すという最上級に贅沢な時間を過ごしていた。
しかし、その時間は松永からの電話で破られることになる。
『もしもし、りょーちゃん?』
事前に電話をかける許可を取らないのはいつものことだったけど、松永の口調はいつものような元気さがなかった。
「急にどうしたんだ?」
『いやー……そのー……』
「なんだ、歯切れが悪いな。言いづらい話なのに電話したのか?」
『一応メッセージより口で伝えた方がいいかと思って』
「だったら、遠慮せず言ってくれ」
今更松永から何を言われようとそれほど驚くことはない。それでも松永は少し時間をかけて恐らく言葉を選び終わった後に話し出す。
『実は月曜日の振替休日にまた集まりがあるんだ。いつものぽんちゃんと大山ちゃんのやつね』
「あー……なるほど。大丈夫、僕は暇だから――」
『いや、そうじゃなくて……今回からりょーちゃんは無理に参加しなくてもいいって言おうと思ってさ』
「……えっ?」
『りょーちゃんは協力したいって気持ちはまだあるだろうけど、こういうの得意じゃないから結構無理してたのはわかってた。それでも夏休み中は他のメンツにするのが難しくて付き合って貰ってたんだけど』
「それは……うん」
『それから大山ちゃんが遊ぶなら4人組までがいいって、りょーちゃんのおかげでわかったから今回からそんなに大所帯にしなくてもいいかなーって思って』
尚も遠慮しながら話す松永は夏休みの最後の方で僕が本田くんと大山さんの件で悩んでいたことを気にしてくれていたのだろう。その一方で僕が本田くんに協力すべきだと思っているからそこについても解決しようとしてくれている。
『あっ。他のみんなには俺が上手い事言っとくから、そこは気にしないでいいよ』
「……わかった。こういうのは松永に任せた方が間違いないし、僕はまた手伝いがいるようだったら協力するよ」
それを早い段階で読み取れたから僕は食い下がることなく、松永の厚意に甘えることにした。
『OK。ぽんちゃんにもそう伝えとく。それよりさ、りょーちゃん――』
それから松永はもう一つの話題へ上手く切り替える。
こうして、僕は本田くんと大山さんの件についてはひとまず一歩引いた立場で見ることになった。戦力外通告とも取れてしまうことを松永は気にしていたのかもしれないけど、実際に夏休み中の僕は最後の夏祭りのセッティング以外で役立った気はしていない。
それに僕は他人の恋を応援する前に自分が本気で恋をしたことがないのだから上手く立ち回れるはずがなかったのだ。その点、松永は僕よりも圧倒的に進んでいて頼りがいがある。
……なんて風に書いてみるけど、付いて行けない自分にほんのちょっとだけやるせなさを感じてしまった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる