上 下
163 / 942
1年生2学期

9月13日(月)曇り 大山亜里沙との距離間その3

しおりを挟む
 体育祭前の月曜日。昨日の明莉からのお願いを叶えるため、僕は大山さんに話を聞く必要がある。出る種目を聞くだけならLINEでも良かった気がするけど、それだけのためにLINEで連絡するのはどうなんだろうと思ったから直接聞くことにしたのだ。

 ただ、いざ今日を迎えると出る種目を聞くだけで直接話しかけるのもどうなんだろうと思い始めるという駄目なループにハマってしまった。いや、大山さんが隣の席にいる時なら別にそんなことも思わなかったんだけど、今は僕とは教室の位置的に真反対にいるし、大山さんの席の周りには常に誰かしらがいる。そうなると、非常に話しかけづらい。

「産賀くん、どこ見てるの?」

「うわっ!?」

「あはは。今日もいいリアクション~」

 急に栗原さんが話しかけるのでボーっとしていた僕は驚く。そんな栗原さんも多くの休み時間は大山さんの席へ行ってしまうのだからこちらの席の近くに大山さんが来ることは無さそうだ。

「もしかして、亜里沙のこと見てた?」

「えっ!? いや、その……」

「惜しかったよねー、本田くん。あともう二つ席が前だったら亜里沙の隣だったのに」

 そう、今回の席替えで本田くんは大山さんの隣の列ではあったけど、席としては2つ後ろだった……言うほど惜しいだろうか? 遠からず近からずくらいだと思うけど、ひとまず適当に笑い返しておく。

 すると、栗原さんはそれが話を続けていい合図に思ったのか、そのまま喋りだす。

「ねぇねぇ、体育祭で二人に何か進展あるかな?」

「体育祭で? イベントではあるけど、体育祭ってそうなるようなことあるっけ……?」

「フォークダンスがあるでしょ? ……あれ? 産賀くん、知らない系?」

 知らない系だ。フォークダンスなんてそんな……フォークダンスってなんだっけ? ダンスには全然明るくないし、体育祭のダンスは選択体育の人が披露するやつだけだと思っていた。

「一応ここの高校だと定番なんだけど、先輩に聞かなかった? 今週何回か練習するらしいよ」

「全然知らなかった……というか、そんなちょっとの練習で踊れるようになるの……?」

「そんなに本格的なやつじゃないっぽいからそれっぽく動いとけば大丈夫じゃない?」

「そ、そうかな……」

「えー じゃあ、産賀くんは私が指導してあげよっか?」

「えっ!?」

「あははー 冗談冗談」

 すっかり栗原さんの暇つぶしに付き合わされてしまったからこの日は大山さんに話しかけることはできなかった。その後、フォークダンスについて少し調べたら民族舞踊と訳されるように、その土地ごと踊りのことだと出てきた。そして、学校行事で取り入れる場合はダンスや選曲は色々あるけど、専ら男女が組んで踊るものになるらしい。

 確かに進展があるかもしれない種目だけど……踊ることに関して僕は他人を気にしている場合ではない。
しおりを挟む

処理中です...