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1年生2学期
9月9日(木)曇り 大山亜里沙との距離間その2
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本日の授業をこなした後の帰りのホームルーム。先週行った校内実力テストの結果が返って来た。マークシート方式だったから全部の採点にそれほど時間がかからなかったんだろう。細長い紙には5教科と全体の得点及び学年内順位が書かれていた。
「産賀くんは何位だったー?」
そう聞いてきたのは栗原さんだった。主人公席になってから数日。僕が短い休み時間で暇そうにしていると、栗原さんや野島さんに絡まれるようになっていた。
「僕は31位」
「えー!? それって半分より上じゃん! 産賀くん、頭良かったんだね」
1年は6クラスの合計がだいたい200人くらいだったと思うので、半分よりは上なのは間違いない。5教科で目立って悪い得点もないから僕としてもちょっと嬉しかった。
「私はこの順位だし……今度から産賀くんに勉強教えて貰おうかなー」
「えっ」
「あははー 冗談だって」
別に嫌というわけじゃないけど、栗原さんの距離間の詰め方は予想できない。恐らくそれは僕と栗原さんの認識の違いがあるからだろう。
それからホームルームが終わって、松永たちと少し実力テストの話をしてから僕はそのまま帰ろうとした時だ。
「うぶクン! ちょっと待って」
僕を呼び止めたのは大山さんだった。席替えをした後大山さんの席は廊下側の真ん中あたりの席になっていた。足を止めた僕の傍まで大山さんがやって来る。
「どうしたの、大山さん」
「実力テストの順位どうだった?」
「えっ? 31位だったよ」
「おお、凄いじゃん」
「大山さんは?」
「22位!」
大山さんはドヤ顔でそう言う。どうやら僕は実力テストでも勝てないようだ。今回は勝負なしにして貰って助かった。
「学年で20位代は凄いなぁ」
「ふふーん、そうでしょ?」
「うん。それじゃあ……」
「あー! 待って! 実力テストのことも言いたかったけど、それより現社のノート写させてくれない?」
大山さんはまた帰ろうとした僕を止めて言う。そういえば昨日はすっかり忘れて……いても仕方がない。今の席では大山さんが眠っていたことは確認できないから。
「いいけど、僕に頼むより隣の席の人に頼んだ方がいいんじゃない?」
「えー……今更他の人に頼むのはなんかなぁ……」
「そうなの?」
「そうそう。それにうぶクンのノートが一番見やすいし」
そもそも他人のノートを見ないからよくわからないけど、大山さんが言うからにはそうなんだろう。
「でも、今日は現社のノートないから、明日でも……いや、今日僕が写して送るよ」
「いやいや、どうせ明日のも写させて貰うし、手間かかるから明日でもいいよ?」
「明日も寝るの確定しないで」
それに対して大山さんは笑って誤魔化す。こうやっていつも通りの話をしていると、席が変わったのに何も変わっていないように思える。
(あっ……)
いや、違う。そもそも大山さんが隣の席でなくなっただけで、僕は急に距離を取り過ぎている。席替えする前までは順位の話をしていたけど、大山さんから来てくれなければ僕から話しかけることもなかった。栗原さんの距離がわからないなんて言ってたけど、大山さんからすれば今の僕の方がよくわからなかったのかもしれない。
「大山さん、ごめ――」
「うん?」
「いや、えっと……ともかく明日また声かけるよ」
「ホントありがとねー それじゃ、また明日!」
また”ごめん”と言ってしまいそうになったけど、何とか踏みとどまった。さっき考えたのはあくまで僕が考えたことで大山さんは何とも思ってないかもしれない。それで突然謝ったらそれこそ変な距離の取り方だ。
人付き合いについて僕の悪いところが出てしまった日だけど、思えば夏休み中も大山さんとの距離の取り方は良いものとは言えなかった。本田くんの件は別にして、友達としての大山さんとの距離間はちゃんと思い出していこうと思った。
「産賀くんは何位だったー?」
そう聞いてきたのは栗原さんだった。主人公席になってから数日。僕が短い休み時間で暇そうにしていると、栗原さんや野島さんに絡まれるようになっていた。
「僕は31位」
「えー!? それって半分より上じゃん! 産賀くん、頭良かったんだね」
1年は6クラスの合計がだいたい200人くらいだったと思うので、半分よりは上なのは間違いない。5教科で目立って悪い得点もないから僕としてもちょっと嬉しかった。
「私はこの順位だし……今度から産賀くんに勉強教えて貰おうかなー」
「えっ」
「あははー 冗談だって」
別に嫌というわけじゃないけど、栗原さんの距離間の詰め方は予想できない。恐らくそれは僕と栗原さんの認識の違いがあるからだろう。
それからホームルームが終わって、松永たちと少し実力テストの話をしてから僕はそのまま帰ろうとした時だ。
「うぶクン! ちょっと待って」
僕を呼び止めたのは大山さんだった。席替えをした後大山さんの席は廊下側の真ん中あたりの席になっていた。足を止めた僕の傍まで大山さんがやって来る。
「どうしたの、大山さん」
「実力テストの順位どうだった?」
「えっ? 31位だったよ」
「おお、凄いじゃん」
「大山さんは?」
「22位!」
大山さんはドヤ顔でそう言う。どうやら僕は実力テストでも勝てないようだ。今回は勝負なしにして貰って助かった。
「学年で20位代は凄いなぁ」
「ふふーん、そうでしょ?」
「うん。それじゃあ……」
「あー! 待って! 実力テストのことも言いたかったけど、それより現社のノート写させてくれない?」
大山さんはまた帰ろうとした僕を止めて言う。そういえば昨日はすっかり忘れて……いても仕方がない。今の席では大山さんが眠っていたことは確認できないから。
「いいけど、僕に頼むより隣の席の人に頼んだ方がいいんじゃない?」
「えー……今更他の人に頼むのはなんかなぁ……」
「そうなの?」
「そうそう。それにうぶクンのノートが一番見やすいし」
そもそも他人のノートを見ないからよくわからないけど、大山さんが言うからにはそうなんだろう。
「でも、今日は現社のノートないから、明日でも……いや、今日僕が写して送るよ」
「いやいや、どうせ明日のも写させて貰うし、手間かかるから明日でもいいよ?」
「明日も寝るの確定しないで」
それに対して大山さんは笑って誤魔化す。こうやっていつも通りの話をしていると、席が変わったのに何も変わっていないように思える。
(あっ……)
いや、違う。そもそも大山さんが隣の席でなくなっただけで、僕は急に距離を取り過ぎている。席替えする前までは順位の話をしていたけど、大山さんから来てくれなければ僕から話しかけることもなかった。栗原さんの距離がわからないなんて言ってたけど、大山さんからすれば今の僕の方がよくわからなかったのかもしれない。
「大山さん、ごめ――」
「うん?」
「いや、えっと……ともかく明日また声かけるよ」
「ホントありがとねー それじゃ、また明日!」
また”ごめん”と言ってしまいそうになったけど、何とか踏みとどまった。さっき考えたのはあくまで僕が考えたことで大山さんは何とも思ってないかもしれない。それで突然謝ったらそれこそ変な距離の取り方だ。
人付き合いについて僕の悪いところが出てしまった日だけど、思えば夏休み中も大山さんとの距離の取り方は良いものとは言えなかった。本田くんの件は別にして、友達としての大山さんとの距離間はちゃんと思い出していこうと思った。
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