156 / 942
1年生2学期
9月6日(月)晴れ 主人公補正はかからない
しおりを挟む
9月初めての月曜日。この日は早速4時間目を使って体育祭の練習が行われた。とはいっても小中学校の時のようにしっかりした練習ではなく、入場からの流れと整列を少しやっただけで、それほどキツさは感じなかった。
そんな練習を終えてからホームルームを迎えた時だ。
「新学期を迎えたし、席替えやるぞー」
担任の杉岡先生はまたしても何の前触れもなく席替えを宣言した。確かにタイミングとしては全然あると思うけど、さらりと言われるから普通に驚く。
「この席ともお別れか」
そう呟いたのは本田くんだった。本田くんからすれば大山さんと席が近い絶好の席だったから席替えに思うところはあるのかもしれない。
「そうだねー うぶクンも長い間お世話になりました……」
一方、芝居がかった感じで言う大山さんはそんなに惜しんでいる感じではない。いや、これは僕に対して言っているので本田くんのことは関係ないし、大山さんはこの前の席替えもこんな感じだった。
「お世話なんてそんな……これからはちゃんと現社の授業受けてね」
「……でも、二度あることは三度あるって言うじゃない?」
新学期を迎えても大山さんは現社の授業をまともに受けるつもりはないらしい。さすがに今回も隣の席になることはないだろうけど、近くの席だったらまた頼られてしまうかもしれない。
そんなことを思いながらクラスの全員がクジを引き終わると、黒板に数字を割り振った用紙が張り出される。少しばかりざわついた後に移動が始まると、教室は新しい景色になった。
そして、僕の新しい席は……窓際の一番後ろになった。そう、様々な作品における主人公の席だ。以前、大倉くんと話したように今までこの席になった覚えがないから初めての位置になる。特に窓際が好きというわけではないけど、後ろの席として最上級の位置は何となく優越感があるものだ。
そんな感想を抱いた僕の隣の席に来たのは……
「あはは、産賀くんじゃーん。ボウリング以来だっけ?」
栗原さんだった。夏休み中に二回遊んだせいか、栗原さん的に距離が縮まっているのかもしれないが、改めて教室で会うと少し緊張する。
「えっ? 栗原さんって産賀くんと仲いいの!?」
「うんうん。夏休みに何回か遊んだよ」
「へぇ~ ふーん……」
栗原さんの発言に喰い付いたのは一つ前の席にいた野島さんだった。僕からすれば茶道部の野島さんで合ってるよなというくらいの認識だけど、野島さんは僕のことをしっかり認識しているらしい。
「ねぇ、産賀くん。夏休み中にも桜庭先輩や清水先輩に会ってたって話だけど……」
「えっ!? 誰からそんな話を……」
「桜庭先輩と清水先輩」
いやマジですか先輩。僕の知らない間に茶道部で僕のことが話されてるなんて考えてもなかった。
それに対して、僕が何とも言えない表情をしていると、今度は栗原さんが野島さんの話に喰い付く。
「えー! なになに? その先輩との関係って!」
「私も詳しくはわかんないんだけど、どうなの?」
興味津々に聞いて来る二人に僕はお茶を濁す笑いを返す。新しい席は位置としては絶好だけど、環境としては大変なところになってしまったかもしれない。
そんな練習を終えてからホームルームを迎えた時だ。
「新学期を迎えたし、席替えやるぞー」
担任の杉岡先生はまたしても何の前触れもなく席替えを宣言した。確かにタイミングとしては全然あると思うけど、さらりと言われるから普通に驚く。
「この席ともお別れか」
そう呟いたのは本田くんだった。本田くんからすれば大山さんと席が近い絶好の席だったから席替えに思うところはあるのかもしれない。
「そうだねー うぶクンも長い間お世話になりました……」
一方、芝居がかった感じで言う大山さんはそんなに惜しんでいる感じではない。いや、これは僕に対して言っているので本田くんのことは関係ないし、大山さんはこの前の席替えもこんな感じだった。
「お世話なんてそんな……これからはちゃんと現社の授業受けてね」
「……でも、二度あることは三度あるって言うじゃない?」
新学期を迎えても大山さんは現社の授業をまともに受けるつもりはないらしい。さすがに今回も隣の席になることはないだろうけど、近くの席だったらまた頼られてしまうかもしれない。
そんなことを思いながらクラスの全員がクジを引き終わると、黒板に数字を割り振った用紙が張り出される。少しばかりざわついた後に移動が始まると、教室は新しい景色になった。
そして、僕の新しい席は……窓際の一番後ろになった。そう、様々な作品における主人公の席だ。以前、大倉くんと話したように今までこの席になった覚えがないから初めての位置になる。特に窓際が好きというわけではないけど、後ろの席として最上級の位置は何となく優越感があるものだ。
そんな感想を抱いた僕の隣の席に来たのは……
「あはは、産賀くんじゃーん。ボウリング以来だっけ?」
栗原さんだった。夏休み中に二回遊んだせいか、栗原さん的に距離が縮まっているのかもしれないが、改めて教室で会うと少し緊張する。
「えっ? 栗原さんって産賀くんと仲いいの!?」
「うんうん。夏休みに何回か遊んだよ」
「へぇ~ ふーん……」
栗原さんの発言に喰い付いたのは一つ前の席にいた野島さんだった。僕からすれば茶道部の野島さんで合ってるよなというくらいの認識だけど、野島さんは僕のことをしっかり認識しているらしい。
「ねぇ、産賀くん。夏休み中にも桜庭先輩や清水先輩に会ってたって話だけど……」
「えっ!? 誰からそんな話を……」
「桜庭先輩と清水先輩」
いやマジですか先輩。僕の知らない間に茶道部で僕のことが話されてるなんて考えてもなかった。
それに対して、僕が何とも言えない表情をしていると、今度は栗原さんが野島さんの話に喰い付く。
「えー! なになに? その先輩との関係って!」
「私も詳しくはわかんないんだけど、どうなの?」
興味津々に聞いて来る二人に僕はお茶を濁す笑いを返す。新しい席は位置としては絶好だけど、環境としては大変なところになってしまったかもしれない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
へたくそ
MO
青春
野球が大好きなのに“へたくそ”な主人公、児玉良太。
チームメイトで野球センス抜群なキャッチャー、松島健介。
後輩マネージャーで児玉に想いを寄せる、町村早苗。
3人の視点から物語は進行していきます。
チームメイトたちとの友情と衝突。
それぞれの想い。
主人公の高校入学から卒業までの陵成高校野球部の姿を描いた物語。
この作品は
https://mo-magazines.com/(登場人物一覧も掲載しています)
小説家になろう/カクヨム/エブリスタ/NOVEL DAYS
にも掲載しています。
CROWNの絆
須藤慎弥
青春
【注意】
※ 当作はBLジャンルの既存作『必然ラヴァーズ』、『狂愛サイリューム』のスピンオフ作となります
※ 今作に限ってはBL要素ではなく、過去の回想や仲間の絆をメインに描いているためジャンルタグを「青春」にしております
※ 狂愛サイリュームのはじまりにあります、聖南の副総長時代のエピソードを読了してからの閲覧を強くオススメいたします
※ 女性が出てきますのでアレルギーをお持ちの方はご注意を
※ 別サイトにて会員限定で連載していたものを少しだけ加筆修正し、2年温めたのでついに公開です
以上、ご理解くださいませ。
〜あらすじとは言えないもの〜
今作は、唐突に思い立って「書きたい!!」となったCROWNの過去編(アキラバージョン)となります。
全編アキラの一人称でお届けします。
必然ラヴァーズ、狂愛サイリュームを読んでくださった読者さまはお分かりかと思いますが、激レアです。
三人はCROWN結成前からの顔見知りではありましたが、特別仲が良かったわけではありません。
会えば話す程度でした。
そこから様々な事があって三人は少しずつ絆を深めていき、現在に至ります。
今回はそのうちの一つ、三人の絆がより強くなったエピソードをアキラ視点で書いてみました。
以前読んでくださった方も、初見の方も、楽しんでいただけますように*(๑¯人¯)✧*
麗しのマリリン
松浦どれみ
青春
〜ニックネームしか知らない私たちの、青春のすべて〜
少女漫画を覗き見るような世界観。
2023.08
他作品やコンテストの兼ね合いでお休み中です。
連載再開まで今しばらくお待ちくださいませ。
【あらすじ】
私立清流館学園は学校生活をニックネームで過ごす少し変わったルールがある。
清流館高校1年2組では入学後の自己紹介が始まったところだった。
主人公のマリ、新堂を中心にクラスメイトたちの人間関係が動き出す1年間のお話。
片恋も、友情も、部活も、トラウマも、コンプレックスも、ぜんぶぜんぶ青春だ。
主要メンバー全員恋愛中!
甘くて酸っぱくてじれったい、そんな学園青春ストーリーです。
感想やお気に入り登録してくれると感激です!
よろしくお願いします!
私立桃華学園! ~性春謳歌の公式認可《フリーパス》~
cure456
青春
『私立桃華学園』
初中高等部からなる全寮制の元女子校に、期待で色々と膨らませた主人公が入学した。しかし、待っていたのは桃色の学園生活などではなく……?
R15の学園青春バトル! 戦いの先に待つ未来とは――。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる