148 / 942
1年生夏休み
8月29日(日)晴れ 大山亜里沙との夏遊びその4
しおりを挟む
夏休み40日目。本番を迎えた夏祭りは神社を中心に屋台が並びんでいた。7月にあった夏祭りよりは人は多くないけど、それでも夏の終わりを楽しもうと親子連れや学生がたくさん訪れている。
そんな中、僕は先に桜庭先輩と合流してから集合場所へ向かう。僕が若干緊張していることを桜庭先輩にからかわれながら進んでいくと、既に本田くんと大山さんが着いていた。
「遅れてごめん」
「ううん。アタシたちも今集まったばかりだから」
そう言った大山さんは何と浴衣を着ていた。わざわざ着て来るということは今日の祭りを結構楽しみにしていたのかもしれない。そうなると、これは脈あり……なんて考えるは邪推だろうか。
「良ちゃん、そちらの人が……」
「こんばんは。2年の桜庭小織です。今日はお邪魔してごめんなさいね」
本田くんに話を振られた桜庭先輩はにこやかに微笑む。その雰囲気は僕から見ると、ちょっと猫を被っているように感じた。僕も最初会った時は違う印象だったからこれは外行用の桜庭先輩に違いない。
すると、大山さんは一歩前へ出て桜庭先輩に話しかける。
「アタシは大山亜里沙って言います。産賀くんとは今同じクラスです」
「ご丁寧にどうも、大山さん」
「桜庭先輩は産賀くんとはどこで知り合ったんですか?」
興味ありげに聞く大山さんを見て、僕はちょっとだけドキっとするけど、その質問は想定内だ。むしろ聞かれない方がおかしい。
「図書館を利用している時に偶然出会って、それから学校で再会してから話すようになったの。お互い本が好きだったこともあってね」
「へー 何かロマンチックな出会いですね!」
少し嘘を織り交ぜているけど、最初の出会いと再会の話は真実だ。まぁ、本当は清水先輩が主体なんだけど。それにしてもこのエピソードは他人が聞くとロマンチックになるのか。
軽い自己紹介を終えて歩き始めると、一旦は大山さんと桜庭先輩が二人で喋っていた。初めて会う人にもどんどん向かって行ける大山さんもそれに対応する桜庭先輩もコミュ力強者だ。僕なら話すきっかけを作るのにもひと苦労している。
「良ちゃん、今日はありがとう。とりあえずここまでは来れた」
一方、後ろを付いて行く僕と本田くんは二人に聞こえないような小声で喋っていた。僕がギリギリで行けることになったせいかもしれないけど、特に今日の作戦会議は行っていない。
「それでこれからどうする感じ……?」
「ひとまず四人で周って、いいタイミングで二人になれたらと思う。良ちゃんは桜庭さんと適当に離れて貰うことになるけど……」
「わかった。別に僕らはほっといてくれていいから」
具体的なことは何も考えてない作戦だけど、本田くんがそう動くなら僕は従うしかない。
それから僕らは暫く屋台の食べ物や遊び場を巡っていった。協力して貰うこともあって今日の桜庭先輩のお代は僕が払うことになる。
「産賀くん、この前のお祭りでどれくらい食べたっけ?」
「確か焼きそばと……って、それ基準にするつもりですか」
「そうね。三倍返しして貰おうかしら?」
僕が顔をしかめたのを見て桜庭先輩は笑う。付き添いではあるけど、楽しんで貰えるなら何よりだ。例え、お祭りと関係ない方向性でも。
「なんか、本田にばっかり払わせてごめんね」
「いや、オレが誘っといて払わせる方が悪いから」
本田くんの方も財布を犠牲にがんばっているらしい。いや、僕は別にがんばるために払っているかけじゃないけど。
「うぶクン、金魚すくいやらない?」
「えっ? 僕?」
「うぶクン以外誰がいるの?」
「ああ、うん」
そういえば一応四人で遊びに来ているんだった。大山さんは本田くんと話すものだと思うと、完全に油断してしまう。不自然にならないよう振る舞わなくては。
「じゃあ、ここで一番取れた人が次の食べ物おごりって言うのはどう? 桜庭先輩もいいですか?」
「面白そうね。やりましょう」
僕らは座り込むと金魚とにらめっこを始める。正直、金魚すくいはほとんどやったこと覚えがない。僕がお祭りにあまり行っていないのもあるけど、取れたところで持って帰るのに困るからそれほど興味を示さなかった。しかし、三人分のおごりがかかるとなると、少し真剣になるべきだ。
コツは全くわからないけど、なるべく小さいやつを狙おう。何となく中心ですくい上げると簡単に破けてしまいそうだから、端で救う感じで。壁を使うのが反則でなければ金魚を追い込む感じにしてそのまま……すくう!
「あっ」
「うぶクンも破れちゃったの?」
知った風なことを言ったけど、全然駄目だった。何匹も取れるとは思ってなかったけど、1匹も取れないなんて、やはり経験値が足りなかった。
「わー! 桜庭さん、凄いです! 本田も取れてるじゃん!」
結果、僕と大山さんが0匹、本田くんは1匹、桜庭先輩は3匹という成績になった。いや、そんなところで実力を発揮するとは思わないです、桜庭先輩。
「じゃあ、アタシとうぶクンが負けだからさっきあったアメリカンドッグ買ってこようか?」
「あっ! 僕一人で大丈夫。お代は後で貰うから」
「えー? でも……」
「行ってくる! 適当にぶらついてて大丈夫だから」
僕は強引にその場を離脱した。危なかった。僕と大山さんが二人になる状況を作ってどうする。完全に目的を忘れて金魚すくいに熱中してしまった。
◇
アメリカンドッグの屋台に着くと、タイミングが悪く少し列ができていた。たこ焼きや焼きそばは何軒かあるけど、アメリカンドッグは他に無さそうだから僕は並んで待つことにする。
しかし、このタイミングなら大山さんと本田くんが二人になれる可能性が高いから敢えて戻らない手もあるのか。でも、買って帰る約束したからには戻らない方が怪しいような……
「産賀くん?」
僕が考えているところに後ろから聞き覚えのある声で呼ばれると、真後ろに岸本さんと花園さんが並んでいた。二人とも浴衣姿でりんご飴を持っていて、夏祭りを楽しんでいるようだ。
「こ、こんばんは、岸本さん。花園さんも」
「こんばんは。今一人に見えるけれど……」
「あっ、今は買い出しに来てるんだ。僕も含めて四人分」
「そ、そうだよね。さすがに一人じゃないわよね……」
何だろう。お互いに来ることはわかっていたけど、誘いを断った後だからどうにも気まずい。このまま二人が並ぶと何の話すればいいのだろうか。
「産賀良助さん、岸本さんの誘いを断ったのは本当なのですか?」
「ちょ、ちょっと花園さん!?」
そんな中で花園さんはいきなり痛いところを付いてくる。
「う、うん。他の友達と行く予定が先に入っていて……」
「大変残念なことです。ですが、ここで会ったのも何かの縁。ちょうど聞きたかったことがあります」
「えっ? なに?」
「あなたは岸本さんを……」
「は、花園さん、ストップ! ごめんなさい、産賀くん! わたしたち他に行くところがあるから!」
言葉を強引に止めた岸本さんは花園さんを引っ張ってどこかへ行ってしまった。何とか気まずい状況を脱して一安心した僕はそのままアメリカンドッグを購入する。
すると、いつの間にか桜庭先輩が近くに来ていた。
「あれ? 二人はどうしたんですか?」
「どうしたって、それが今日の目的じゃないの? 私はお花を摘みに行ってる体。あっ、一本ちょうだい」
「そ、そうですね。じゃあ、残りは……」
「産賀くん、これは今日たまたま参加した私のひとりごとなんだけど」
「はい?」
「大山さん、二人きりになるの不安そうだったわよ」
急にそんなことを言われたので、僕は驚いた表情で桜庭先輩を見てしまう。
「それって、どういう……」
「私は本田くんと大山さんをくっつけるって話を聞いて来ているから離れたけど、その直前まで何となくそんな感じがしたわ」
「…………」
「別に私の勘だから、そんなに気にしないいいと思うけど」
桜庭先輩はそう言うけど、その勘は僕が適当に脈ありなんて言うよりも説得力があると思ってしまった。決して忘れていたわけじゃないけど、今日も本田くんの方を優先して、大山さんがどんな状況か見ていなかった。
「桜庭先輩、僕は……」
「ただ、こう言っておいてなんだけど、結局は二人がどう考えるかの話になるから産賀くんは首を突っ込まなくていいと思うわよ」
「そういう……ものですか」
「ええ。私は今日初めて会って好き放題言ってるだけだから」
僕は……どうするべきなんだろう。大山さんが何か思うことがあるならそもそも今日の話に乗らないはずだ。ただ、僕が協力することで大山さんが来なければいけなくなったのだとしたら。この夏休み中、やって来たことは何か大きく間違っているのかもしれない。
「あー、見つけた! うぶクン、桜庭さん」
「お、大山さん!?」
「ごめんねー ちょっと本田とうろついちゃったからどこかわかんなくなって」
僕がその続きを考える前に大山さんが僕と桜庭先輩を見つける。その表情は……特にいつもと変わった様子はない。大山さんは桜庭先輩と話しているうちに本田くんが僕の方へ寄ってくる。
「すまん、良ちゃん……ひよった」
「あ、ああ……どんまい」
申し訳なさそうにする本田くんだけど、僕はそれを聞いてホッとしてしまった。桜庭先輩が言ったことが直感的なものだとしてもこれで本田くんが早まってしまって、大山さんと変な空気になってしまっては元も子もない。
「うぶクン、アメリカンドッグ貰うね」
「う、うん。どうぞ」
「ん? どうかした?」
「……何でもない」
それからはまた四人で周ることになって、解散まで平和な空気で終わっていった。つまり、本田くんと大山さんの件は現状維持のままになったということだけど、今日はこれで良かったのかもしれない。桜庭先輩が感じていたことが思い違いであることを願う。
そんな中、僕は先に桜庭先輩と合流してから集合場所へ向かう。僕が若干緊張していることを桜庭先輩にからかわれながら進んでいくと、既に本田くんと大山さんが着いていた。
「遅れてごめん」
「ううん。アタシたちも今集まったばかりだから」
そう言った大山さんは何と浴衣を着ていた。わざわざ着て来るということは今日の祭りを結構楽しみにしていたのかもしれない。そうなると、これは脈あり……なんて考えるは邪推だろうか。
「良ちゃん、そちらの人が……」
「こんばんは。2年の桜庭小織です。今日はお邪魔してごめんなさいね」
本田くんに話を振られた桜庭先輩はにこやかに微笑む。その雰囲気は僕から見ると、ちょっと猫を被っているように感じた。僕も最初会った時は違う印象だったからこれは外行用の桜庭先輩に違いない。
すると、大山さんは一歩前へ出て桜庭先輩に話しかける。
「アタシは大山亜里沙って言います。産賀くんとは今同じクラスです」
「ご丁寧にどうも、大山さん」
「桜庭先輩は産賀くんとはどこで知り合ったんですか?」
興味ありげに聞く大山さんを見て、僕はちょっとだけドキっとするけど、その質問は想定内だ。むしろ聞かれない方がおかしい。
「図書館を利用している時に偶然出会って、それから学校で再会してから話すようになったの。お互い本が好きだったこともあってね」
「へー 何かロマンチックな出会いですね!」
少し嘘を織り交ぜているけど、最初の出会いと再会の話は真実だ。まぁ、本当は清水先輩が主体なんだけど。それにしてもこのエピソードは他人が聞くとロマンチックになるのか。
軽い自己紹介を終えて歩き始めると、一旦は大山さんと桜庭先輩が二人で喋っていた。初めて会う人にもどんどん向かって行ける大山さんもそれに対応する桜庭先輩もコミュ力強者だ。僕なら話すきっかけを作るのにもひと苦労している。
「良ちゃん、今日はありがとう。とりあえずここまでは来れた」
一方、後ろを付いて行く僕と本田くんは二人に聞こえないような小声で喋っていた。僕がギリギリで行けることになったせいかもしれないけど、特に今日の作戦会議は行っていない。
「それでこれからどうする感じ……?」
「ひとまず四人で周って、いいタイミングで二人になれたらと思う。良ちゃんは桜庭さんと適当に離れて貰うことになるけど……」
「わかった。別に僕らはほっといてくれていいから」
具体的なことは何も考えてない作戦だけど、本田くんがそう動くなら僕は従うしかない。
それから僕らは暫く屋台の食べ物や遊び場を巡っていった。協力して貰うこともあって今日の桜庭先輩のお代は僕が払うことになる。
「産賀くん、この前のお祭りでどれくらい食べたっけ?」
「確か焼きそばと……って、それ基準にするつもりですか」
「そうね。三倍返しして貰おうかしら?」
僕が顔をしかめたのを見て桜庭先輩は笑う。付き添いではあるけど、楽しんで貰えるなら何よりだ。例え、お祭りと関係ない方向性でも。
「なんか、本田にばっかり払わせてごめんね」
「いや、オレが誘っといて払わせる方が悪いから」
本田くんの方も財布を犠牲にがんばっているらしい。いや、僕は別にがんばるために払っているかけじゃないけど。
「うぶクン、金魚すくいやらない?」
「えっ? 僕?」
「うぶクン以外誰がいるの?」
「ああ、うん」
そういえば一応四人で遊びに来ているんだった。大山さんは本田くんと話すものだと思うと、完全に油断してしまう。不自然にならないよう振る舞わなくては。
「じゃあ、ここで一番取れた人が次の食べ物おごりって言うのはどう? 桜庭先輩もいいですか?」
「面白そうね。やりましょう」
僕らは座り込むと金魚とにらめっこを始める。正直、金魚すくいはほとんどやったこと覚えがない。僕がお祭りにあまり行っていないのもあるけど、取れたところで持って帰るのに困るからそれほど興味を示さなかった。しかし、三人分のおごりがかかるとなると、少し真剣になるべきだ。
コツは全くわからないけど、なるべく小さいやつを狙おう。何となく中心ですくい上げると簡単に破けてしまいそうだから、端で救う感じで。壁を使うのが反則でなければ金魚を追い込む感じにしてそのまま……すくう!
「あっ」
「うぶクンも破れちゃったの?」
知った風なことを言ったけど、全然駄目だった。何匹も取れるとは思ってなかったけど、1匹も取れないなんて、やはり経験値が足りなかった。
「わー! 桜庭さん、凄いです! 本田も取れてるじゃん!」
結果、僕と大山さんが0匹、本田くんは1匹、桜庭先輩は3匹という成績になった。いや、そんなところで実力を発揮するとは思わないです、桜庭先輩。
「じゃあ、アタシとうぶクンが負けだからさっきあったアメリカンドッグ買ってこようか?」
「あっ! 僕一人で大丈夫。お代は後で貰うから」
「えー? でも……」
「行ってくる! 適当にぶらついてて大丈夫だから」
僕は強引にその場を離脱した。危なかった。僕と大山さんが二人になる状況を作ってどうする。完全に目的を忘れて金魚すくいに熱中してしまった。
◇
アメリカンドッグの屋台に着くと、タイミングが悪く少し列ができていた。たこ焼きや焼きそばは何軒かあるけど、アメリカンドッグは他に無さそうだから僕は並んで待つことにする。
しかし、このタイミングなら大山さんと本田くんが二人になれる可能性が高いから敢えて戻らない手もあるのか。でも、買って帰る約束したからには戻らない方が怪しいような……
「産賀くん?」
僕が考えているところに後ろから聞き覚えのある声で呼ばれると、真後ろに岸本さんと花園さんが並んでいた。二人とも浴衣姿でりんご飴を持っていて、夏祭りを楽しんでいるようだ。
「こ、こんばんは、岸本さん。花園さんも」
「こんばんは。今一人に見えるけれど……」
「あっ、今は買い出しに来てるんだ。僕も含めて四人分」
「そ、そうだよね。さすがに一人じゃないわよね……」
何だろう。お互いに来ることはわかっていたけど、誘いを断った後だからどうにも気まずい。このまま二人が並ぶと何の話すればいいのだろうか。
「産賀良助さん、岸本さんの誘いを断ったのは本当なのですか?」
「ちょ、ちょっと花園さん!?」
そんな中で花園さんはいきなり痛いところを付いてくる。
「う、うん。他の友達と行く予定が先に入っていて……」
「大変残念なことです。ですが、ここで会ったのも何かの縁。ちょうど聞きたかったことがあります」
「えっ? なに?」
「あなたは岸本さんを……」
「は、花園さん、ストップ! ごめんなさい、産賀くん! わたしたち他に行くところがあるから!」
言葉を強引に止めた岸本さんは花園さんを引っ張ってどこかへ行ってしまった。何とか気まずい状況を脱して一安心した僕はそのままアメリカンドッグを購入する。
すると、いつの間にか桜庭先輩が近くに来ていた。
「あれ? 二人はどうしたんですか?」
「どうしたって、それが今日の目的じゃないの? 私はお花を摘みに行ってる体。あっ、一本ちょうだい」
「そ、そうですね。じゃあ、残りは……」
「産賀くん、これは今日たまたま参加した私のひとりごとなんだけど」
「はい?」
「大山さん、二人きりになるの不安そうだったわよ」
急にそんなことを言われたので、僕は驚いた表情で桜庭先輩を見てしまう。
「それって、どういう……」
「私は本田くんと大山さんをくっつけるって話を聞いて来ているから離れたけど、その直前まで何となくそんな感じがしたわ」
「…………」
「別に私の勘だから、そんなに気にしないいいと思うけど」
桜庭先輩はそう言うけど、その勘は僕が適当に脈ありなんて言うよりも説得力があると思ってしまった。決して忘れていたわけじゃないけど、今日も本田くんの方を優先して、大山さんがどんな状況か見ていなかった。
「桜庭先輩、僕は……」
「ただ、こう言っておいてなんだけど、結局は二人がどう考えるかの話になるから産賀くんは首を突っ込まなくていいと思うわよ」
「そういう……ものですか」
「ええ。私は今日初めて会って好き放題言ってるだけだから」
僕は……どうするべきなんだろう。大山さんが何か思うことがあるならそもそも今日の話に乗らないはずだ。ただ、僕が協力することで大山さんが来なければいけなくなったのだとしたら。この夏休み中、やって来たことは何か大きく間違っているのかもしれない。
「あー、見つけた! うぶクン、桜庭さん」
「お、大山さん!?」
「ごめんねー ちょっと本田とうろついちゃったからどこかわかんなくなって」
僕がその続きを考える前に大山さんが僕と桜庭先輩を見つける。その表情は……特にいつもと変わった様子はない。大山さんは桜庭先輩と話しているうちに本田くんが僕の方へ寄ってくる。
「すまん、良ちゃん……ひよった」
「あ、ああ……どんまい」
申し訳なさそうにする本田くんだけど、僕はそれを聞いてホッとしてしまった。桜庭先輩が言ったことが直感的なものだとしてもこれで本田くんが早まってしまって、大山さんと変な空気になってしまっては元も子もない。
「うぶクン、アメリカンドッグ貰うね」
「う、うん。どうぞ」
「ん? どうかした?」
「……何でもない」
それからはまた四人で周ることになって、解散まで平和な空気で終わっていった。つまり、本田くんと大山さんの件は現状維持のままになったということだけど、今日はこれで良かったのかもしれない。桜庭先輩が感じていたことが思い違いであることを願う。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる