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1年生夏休み
8月17日(火)曇り 岸本路子との夏創作その6
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夏休み28日目。2週間ぶりの部活再開となる本日は8月初めての部活ミーティングだ。そして、それは文化祭に向けた作品の進捗状況を報告する日でもある。
いつも通り黒板前に立った森本先輩は用紙を確認しながら喋り始める。
「えー 皆さんお久しぶりですー 今日はご存知の通り、作品の進捗状況を報告して頂きまーす。別に今なら全然できてなくても大丈夫ですけど、今年の文化祭は予定通りに開催される場合、10月9日・10日間になりまーす。ということは、印刷のことを考えると、二週間前の9月下旬が締切になるということでーす」
森本先輩はそれに付け加えて本の印刷がだいたい一週間ほどかかることを僕と岸本さん向けに教えてくれた。つまりは今日からだいたい1ヶ月ほどが残りの作成期間になるということだ。
次に水原先輩が入れ替わって話し始める。
「もう一つの短歌についでだが、こちらは冊子に載せるのではなく、大きめに印刷して掲示する形になるので、締切は一週間前とする。ただ、豊田先生としては無理に書く必要はないらしいからどちらかといえば冊子に載せる方の作品を優先してくれ」
「もちろん、詠んでくれるのは大歓迎よ~」
そう言ったのは珍しく部室を訪れていた豊田先生本人だった。いや、豊田先生だけでなく、普段は見かけない先輩方も今日は数人見えているから、やっぱり文化祭前になると本格始動している感じがする。
「それでは進捗報告用の用紙を配りまーす。正直に書くようにー」
森本先輩が配った用紙を見ると、そこには作品のジャンルやテーマ、現在どれくらいかけているか、掲載時に載せるペンネームはどうするかという項目が書かれていた。
(ペンネームって……どうする)
そこについては全然考えていなかったけど、どうやらそこも保留でいいらしいので、僕はひとまず空欄にしておいた。本題となる現在の進捗状況は7……6割くらいだ。正直に書こう。半分は越えたと思っているし、起承転結の結の部分も何となく決まっているけど、その過程の部分はまだ埋まっていない。残り1ヶ月もあれば書けると思うけど、納得できるものが出来上がるかは別の話かもしれない。
僕が用紙を書き終えると、先ほどまでいた珍しい先輩方は既に帰っていた。創作に対してストイックなのか、それともミーティングだから来ただけなのか、判断はできないけど、今日来るなら作品を完成させて、文化祭にも参加するのだろう。
「産賀くん」
すると、久しぶりに制服の岸本さんが声をかけてくる。普通に先週も会っているし、わざわざ制服と付けてしまうのも変な話だけど、学校の部室で会うのは久しぶりであることに間違いない。
「こんばんは、岸本さん。作品の進捗はどう?」
「わたしは……半分以上はできてるわ」
「僕もちょうどそのくらいだよ。あっ、そうだ。短歌の方は?」
「そっちはまだ考え中。でも、産賀くんのおばあさんからのアドバイスがあっていくつか書いては見たわ」
祖父母宅での思わぬ収穫はその日のうちに岸本さんへ共有しておいた。どうやら岸本さんにとってもいいアドバイスになっていたようだ。
「僕もいくつか考えたけど……提出するとなるとどうだろう……」
「まぁ! 二人とも考えてくれたの~」
「わっ!?」
「きゃっ!?」
いつの間にか傍に来ていた豊田先生の声に僕と岸本さんは普通に驚く。
「去年なんかぜーんぜん集まらなかったから嬉しいわね~」
「そ、そうなんですか?」
「そうなのよ。みんな自由に詠んでくれたらいいのに~」
豊田先生は悩ましそうに言うけど、その自由が結構難しいのだ。もちろん、テーマを固定されたらまた違った難しさが出てくるのだろうけど。
「それじゃあ、二人の短歌、楽しみにしてるわね~」
そう言い残して豊田先生も部室から出て行った。結局、居残っているのは森本先輩を始めとするいつもの面々になったけど、それがこの部活らしいところなのかもしれない。
「じゃあ、岸本さん。今週からまたよろしく」
「えっ?」
「ご、ごめん。何か部室では久しぶりだったから、つい……」
「ふふっ。ううん、わたしからもよろしくお願いします」
でも、岸本さんとの距離間は前よりも縮まっている気がした。
いつも通り黒板前に立った森本先輩は用紙を確認しながら喋り始める。
「えー 皆さんお久しぶりですー 今日はご存知の通り、作品の進捗状況を報告して頂きまーす。別に今なら全然できてなくても大丈夫ですけど、今年の文化祭は予定通りに開催される場合、10月9日・10日間になりまーす。ということは、印刷のことを考えると、二週間前の9月下旬が締切になるということでーす」
森本先輩はそれに付け加えて本の印刷がだいたい一週間ほどかかることを僕と岸本さん向けに教えてくれた。つまりは今日からだいたい1ヶ月ほどが残りの作成期間になるということだ。
次に水原先輩が入れ替わって話し始める。
「もう一つの短歌についでだが、こちらは冊子に載せるのではなく、大きめに印刷して掲示する形になるので、締切は一週間前とする。ただ、豊田先生としては無理に書く必要はないらしいからどちらかといえば冊子に載せる方の作品を優先してくれ」
「もちろん、詠んでくれるのは大歓迎よ~」
そう言ったのは珍しく部室を訪れていた豊田先生本人だった。いや、豊田先生だけでなく、普段は見かけない先輩方も今日は数人見えているから、やっぱり文化祭前になると本格始動している感じがする。
「それでは進捗報告用の用紙を配りまーす。正直に書くようにー」
森本先輩が配った用紙を見ると、そこには作品のジャンルやテーマ、現在どれくらいかけているか、掲載時に載せるペンネームはどうするかという項目が書かれていた。
(ペンネームって……どうする)
そこについては全然考えていなかったけど、どうやらそこも保留でいいらしいので、僕はひとまず空欄にしておいた。本題となる現在の進捗状況は7……6割くらいだ。正直に書こう。半分は越えたと思っているし、起承転結の結の部分も何となく決まっているけど、その過程の部分はまだ埋まっていない。残り1ヶ月もあれば書けると思うけど、納得できるものが出来上がるかは別の話かもしれない。
僕が用紙を書き終えると、先ほどまでいた珍しい先輩方は既に帰っていた。創作に対してストイックなのか、それともミーティングだから来ただけなのか、判断はできないけど、今日来るなら作品を完成させて、文化祭にも参加するのだろう。
「産賀くん」
すると、久しぶりに制服の岸本さんが声をかけてくる。普通に先週も会っているし、わざわざ制服と付けてしまうのも変な話だけど、学校の部室で会うのは久しぶりであることに間違いない。
「こんばんは、岸本さん。作品の進捗はどう?」
「わたしは……半分以上はできてるわ」
「僕もちょうどそのくらいだよ。あっ、そうだ。短歌の方は?」
「そっちはまだ考え中。でも、産賀くんのおばあさんからのアドバイスがあっていくつか書いては見たわ」
祖父母宅での思わぬ収穫はその日のうちに岸本さんへ共有しておいた。どうやら岸本さんにとってもいいアドバイスになっていたようだ。
「僕もいくつか考えたけど……提出するとなるとどうだろう……」
「まぁ! 二人とも考えてくれたの~」
「わっ!?」
「きゃっ!?」
いつの間にか傍に来ていた豊田先生の声に僕と岸本さんは普通に驚く。
「去年なんかぜーんぜん集まらなかったから嬉しいわね~」
「そ、そうなんですか?」
「そうなのよ。みんな自由に詠んでくれたらいいのに~」
豊田先生は悩ましそうに言うけど、その自由が結構難しいのだ。もちろん、テーマを固定されたらまた違った難しさが出てくるのだろうけど。
「それじゃあ、二人の短歌、楽しみにしてるわね~」
そう言い残して豊田先生も部室から出て行った。結局、居残っているのは森本先輩を始めとするいつもの面々になったけど、それがこの部活らしいところなのかもしれない。
「じゃあ、岸本さん。今週からまたよろしく」
「えっ?」
「ご、ごめん。何か部室では久しぶりだったから、つい……」
「ふふっ。ううん、わたしからもよろしくお願いします」
でも、岸本さんとの距離間は前よりも縮まっている気がした。
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