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1年生夏休み

8月7日(土)曇り 大倉伴憲との夏休みその2

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 夏休み18日目。この日も大倉くんと通話を繋いでゲームをしていた。というか、基本的に予定がない日はデイリー消化もあって通話の有無に限らず一緒にやっている。直接顔を見る回数は少ないけど、ある意味では夏休み中一番近況を知る存在かもしれない。

『う、産賀くんは課題はどれくらい進んでる?』

 そして、夏休みも中盤に差し掛かった今らしい問いかけが飛んできた。誰もが清水先輩のようにやらない選択はできないから、気になってくるところだろう。

「終わりは見えてきたくらいかな。お盆の間は祖父母の家に行く予定だし、それが明けたらもう夏休み終わっちゃうし」

 それに加えて、僕は文芸部の創作もある程度形にしなければいけない。なるべく課題は早く終わらせてその時間にあてられるようにするつもりだ。

『ぼ、ボクも順調にいけば終わると思う。ただ、高校の宿題って思ったよりも多く感じない……?』

「美術の絵や自由研究はないけど、教科が増えてるからそう思うのかな」

『でも、読書感想文はあるんだよね……』

「あっ……大倉くん、苦手なタイプなんだ」

『う、うん。産賀くんは……文芸部だから得意?』

「得意とまでは言わないけど、苦だと思ったことはないよ」

『じゃ、じゃあ……書き方のコツとかってある?』

 大倉くんのその質問は今までも松永やその他の友人からも聞かれたことだ。どうやら僕の周りは読書感想文が苦手な人が多いらしい。僕もあくまで苦と思わないだけで、文章が上手かったり、早く書けたりするわけじゃない。だけど、こう聞かれた時に答える用意はしている。

「コツと言えるかわからないけど、大倉くんの思ったことをそのまま書けばいいんだよ」

『そ、そう言われても……』

「いや、本当に面白かったとか、読んでて眠たくなったとか、そんな感じでいいと思う。それで、どうしてそう思ったのか理由を書いていくんだ」

『ね、眠たくなったでもいいの……?』

「まぁ、僕も読書感想文が満点だったわけじゃないから正解はわからないけど、感想だからってベタ褒めする必要はないと思う。もちろん、ひと通り読んでから書くのは当然だけど、その途中で眠たくなったなら話が助長だったり、読んだ人に合わなかったって話だろうし」

 僕は現代文の先生ではないから確実なことを言えないけど、読書感想文は感想文以上にこの夏休みの間に何かしら一冊でも本を読んで欲しいという意味が込められているんだと思う。さすがに漫画は除外されるべきだけど、それ以外なら何か読んで思った通りに書けばそれは立派な感想文になるはずだ。

『そうなんだ……で、でも』

「でも?」

『も、文字数が足りないことがあるんだよね……』

「それは……ある」

『う、産賀くんも?』

「うん。既定の文字数に対して書き終わってしまって、もう一回本を読み直すことはあるよ」

『そ、そう! 読んだつもりでも覚えてないから困るんだ』

「こればっかりは……先生のさじ加減なのかなぁ」

 たぶん、規定があるからそんなわけがないだろうけど、読んだ本によっては全然書けない事はある。結局、僕も苦ではないけど、時間は取られているのだ。

 その後も大倉くんと学生の課題に関するあれこれを話した。でも、そんなことを言ってる間に一つでも書いたり読んだりして欲しいと先生方は思っていることだろう。
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