上 下
123 / 942
1年生夏休み

8月4日(水)晴れ 清水夢愛との夏散歩その3

しおりを挟む
 夏休み15日目。この日の朝の呼び出しは清水先輩からだった。呼び出されるのが当たり前になっているのはおかしな話だけど、そのおかげで書けることも増えているので、僕は感謝すべきなんだろう。

 それから適当に集合して今日も喋りながら歩き始めるけど、よく考えるとこの状況は相当変だ。近所でも部活でもないところで知り合った女子の先輩と朝の時間散歩する。傍から見ればどういう関係なんだと思われてしまうかもしれない。僕としてもこんなにも高頻度で誘われると、何だか気持ちが変な方向に……いかないか。

 昨日の今日で僕は松永カップルの熱に当てられたみたいだ。夏は恋の季節と聞く気もするけど、だからといって僕が流される必要はどこにもない。

 それに清水先輩はそんなつもりで僕を誘っているわけじゃないのだからそういうことを考えるのは不誠実だ。

「大丈夫か、良助?」

「……えっ?」

「いや、黙ってしまったから熱でも入ったのかと。少し休憩するか」

「いえ、全然大丈夫です。ちょっと夏について考えてただけで……」

「夏について? 何とも漠然としたテーマだな」

 咄嗟に言い訳したからそうなってしまったけど、話題の切り替えにはちょうどいい。今日の話のテーマは夏にしよう。

「清水先輩は夏と言えば何を思い付きますか?」

「うーん……暑い?」

「それはそうなんですけど……体感以外の方向はどうです?」

「耳元で聞こえる虫の羽音」

「嫌なやつだ……」

「クーラーの気だるさ」

「ありますよね……って、なんでネガティブなやつばっかりなんですか」

「そう言われても海や山だと普通な答えだろう」

「別に普通でもいいんですよ」

「なら良助はなんて答えるんだ?」

「…………暑い」

 どうやら僕と清水先輩は夏がさほど好きではないようだ。いや、最近の夏が極端に暑すぎるせいでそう思ってしまうだけで、本当はもっと夏らしい食べ物なり遊びなりが挙げらそうだけど、その前提にはやはり夏の蒸し暑さや照り付ける太陽と紫外線がある。

「良助も同じ答えじゃないか」

「すみません……でも、朝の時間だとまだマシですよね。昼間は冷房ないと耐えられませんし」

「そうだな。私は昼になったら店内にいることが多いから何とかなってるが……」

「あれ? 清水先輩、家に帰ってないんですか?」

 これまでの散歩は昼前には解散して、僕は家で昼食を取っていたから清水先輩もそうしているものだと勝手に思っていた。

「家にいても暇だからな」

「それなら言ってくれても良かったのに……」

「さすがにずっと付き合わせるわけにはいかない。良助は課題する時間がいるだろう」

「いや、清水先輩も本来はやっておくべきなんですよ……それは置いといて、昼からも基本は暇ですから遠慮せずに誘ってください」

「そうか……うむ、そうだな。今更遠慮するのもおかしな話だ。だが……来週は朝からも誘わないようにするよ」

「えっ? どうしてですか?」

「来週はもうお盆だろう? お盆は……家族と過ごす時間だ」

「確かにそうですね。清水先輩は祖父母の家に行ったりするんですか?」

「……どうだろうな。まだ決まってないよ」

 そう言った清水先輩はほんの少しだけ浮かない表情だった気がした。夏は色々な意味で浮かれる季節だけど、楽しいだけじゃないのかもしれない。それもまた……清水先輩が話してくれるまで待ってみよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...