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1年生夏休み
8月4日(水)晴れ 清水夢愛との夏散歩その3
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夏休み15日目。この日の朝の呼び出しは清水先輩からだった。呼び出されるのが当たり前になっているのはおかしな話だけど、そのおかげで書けることも増えているので、僕は感謝すべきなんだろう。
それから適当に集合して今日も喋りながら歩き始めるけど、よく考えるとこの状況は相当変だ。近所でも部活でもないところで知り合った女子の先輩と朝の時間散歩する。傍から見ればどういう関係なんだと思われてしまうかもしれない。僕としてもこんなにも高頻度で誘われると、何だか気持ちが変な方向に……いかないか。
昨日の今日で僕は松永カップルの熱に当てられたみたいだ。夏は恋の季節と聞く気もするけど、だからといって僕が流される必要はどこにもない。
それに清水先輩はそんなつもりで僕を誘っているわけじゃないのだからそういうことを考えるのは不誠実だ。
「大丈夫か、良助?」
「……えっ?」
「いや、黙ってしまったから熱でも入ったのかと。少し休憩するか」
「いえ、全然大丈夫です。ちょっと夏について考えてただけで……」
「夏について? 何とも漠然としたテーマだな」
咄嗟に言い訳したからそうなってしまったけど、話題の切り替えにはちょうどいい。今日の話のテーマは夏にしよう。
「清水先輩は夏と言えば何を思い付きますか?」
「うーん……暑い?」
「それはそうなんですけど……体感以外の方向はどうです?」
「耳元で聞こえる虫の羽音」
「嫌なやつだ……」
「クーラーの気だるさ」
「ありますよね……って、なんでネガティブなやつばっかりなんですか」
「そう言われても海や山だと普通な答えだろう」
「別に普通でもいいんですよ」
「なら良助はなんて答えるんだ?」
「…………暑い」
どうやら僕と清水先輩は夏がさほど好きではないようだ。いや、最近の夏が極端に暑すぎるせいでそう思ってしまうだけで、本当はもっと夏らしい食べ物なり遊びなりが挙げらそうだけど、その前提にはやはり夏の蒸し暑さや照り付ける太陽と紫外線がある。
「良助も同じ答えじゃないか」
「すみません……でも、朝の時間だとまだマシですよね。昼間は冷房ないと耐えられませんし」
「そうだな。私は昼になったら店内にいることが多いから何とかなってるが……」
「あれ? 清水先輩、家に帰ってないんですか?」
これまでの散歩は昼前には解散して、僕は家で昼食を取っていたから清水先輩もそうしているものだと勝手に思っていた。
「家にいても暇だからな」
「それなら言ってくれても良かったのに……」
「さすがにずっと付き合わせるわけにはいかない。良助は課題する時間がいるだろう」
「いや、清水先輩も本来はやっておくべきなんですよ……それは置いといて、昼からも基本は暇ですから遠慮せずに誘ってください」
「そうか……うむ、そうだな。今更遠慮するのもおかしな話だ。だが……来週は朝からも誘わないようにするよ」
「えっ? どうしてですか?」
「来週はもうお盆だろう? お盆は……家族と過ごす時間だ」
「確かにそうですね。清水先輩は祖父母の家に行ったりするんですか?」
「……どうだろうな。まだ決まってないよ」
そう言った清水先輩はほんの少しだけ浮かない表情だった気がした。夏は色々な意味で浮かれる季節だけど、楽しいだけじゃないのかもしれない。それもまた……清水先輩が話してくれるまで待ってみよう。
それから適当に集合して今日も喋りながら歩き始めるけど、よく考えるとこの状況は相当変だ。近所でも部活でもないところで知り合った女子の先輩と朝の時間散歩する。傍から見ればどういう関係なんだと思われてしまうかもしれない。僕としてもこんなにも高頻度で誘われると、何だか気持ちが変な方向に……いかないか。
昨日の今日で僕は松永カップルの熱に当てられたみたいだ。夏は恋の季節と聞く気もするけど、だからといって僕が流される必要はどこにもない。
それに清水先輩はそんなつもりで僕を誘っているわけじゃないのだからそういうことを考えるのは不誠実だ。
「大丈夫か、良助?」
「……えっ?」
「いや、黙ってしまったから熱でも入ったのかと。少し休憩するか」
「いえ、全然大丈夫です。ちょっと夏について考えてただけで……」
「夏について? 何とも漠然としたテーマだな」
咄嗟に言い訳したからそうなってしまったけど、話題の切り替えにはちょうどいい。今日の話のテーマは夏にしよう。
「清水先輩は夏と言えば何を思い付きますか?」
「うーん……暑い?」
「それはそうなんですけど……体感以外の方向はどうです?」
「耳元で聞こえる虫の羽音」
「嫌なやつだ……」
「クーラーの気だるさ」
「ありますよね……って、なんでネガティブなやつばっかりなんですか」
「そう言われても海や山だと普通な答えだろう」
「別に普通でもいいんですよ」
「なら良助はなんて答えるんだ?」
「…………暑い」
どうやら僕と清水先輩は夏がさほど好きではないようだ。いや、最近の夏が極端に暑すぎるせいでそう思ってしまうだけで、本当はもっと夏らしい食べ物なり遊びなりが挙げらそうだけど、その前提にはやはり夏の蒸し暑さや照り付ける太陽と紫外線がある。
「良助も同じ答えじゃないか」
「すみません……でも、朝の時間だとまだマシですよね。昼間は冷房ないと耐えられませんし」
「そうだな。私は昼になったら店内にいることが多いから何とかなってるが……」
「あれ? 清水先輩、家に帰ってないんですか?」
これまでの散歩は昼前には解散して、僕は家で昼食を取っていたから清水先輩もそうしているものだと勝手に思っていた。
「家にいても暇だからな」
「それなら言ってくれても良かったのに……」
「さすがにずっと付き合わせるわけにはいかない。良助は課題する時間がいるだろう」
「いや、清水先輩も本来はやっておくべきなんですよ……それは置いといて、昼からも基本は暇ですから遠慮せずに誘ってください」
「そうか……うむ、そうだな。今更遠慮するのもおかしな話だ。だが……来週は朝からも誘わないようにするよ」
「えっ? どうしてですか?」
「来週はもうお盆だろう? お盆は……家族と過ごす時間だ」
「確かにそうですね。清水先輩は祖父母の家に行ったりするんですか?」
「……どうだろうな。まだ決まってないよ」
そう言った清水先輩はほんの少しだけ浮かない表情だった気がした。夏は色々な意味で浮かれる季節だけど、楽しいだけじゃないのかもしれない。それもまた……清水先輩が話してくれるまで待ってみよう。
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