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1年生1学期

7月15日(木)曇り 大山亜里沙との会話その16

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 テスト返却が続く木曜日。ケーキのおごりと遊びに行く権利をかけたテスト勝負の決着は修業式直前になりそうだ。自分が巻き込まれる可能性があるだけに、自分の点数以上に二人の点数がどうなるかソワソワしてしまう。

 それはそれとして、新しいケーキ屋というのは如何にも明莉が嗅ぎ付けていそうな情報である。先週の土曜におごって欲しい的なことを言ったのはそのことだったのかもしれない。

「大山さん、昨日言ってたケーキ屋だけど……」

「えっ、何? まさかうぶクンもおごってくれるとか?」

「僕も……ってまだ本田くんに勝ってないのに。そうじゃなくて、気になるからちょっと教えて欲しいって話」

「へ~、うぶクン甘党なんだ」

「いや、妹が気になってるかもしれないから」

「明莉ちゃんが?」

「えーっと……松永から名前聞いてたんだっけ?」

「ううん。うぶクンが言ってるの聞いた」

 そんなバカな。クラスで勝手に聞こえるほど、僕は明莉の名前を口にしているのか。しかも「明かり」とか「灯り」とかじゃなく、ちゃんと妹の話と認識される文脈で。

「いいな~ 愛されてる妹ちゃん」

「そ、そんなことは……大山さんも妹として可愛がられてるんじゃないの?」

「おっ、やっぱわかる? 兄貴もお姉ちゃんもアタシに甘々なんだよね~」

 ほら、見た事か。世界全土……は言い過ぎかもしれないけど、兄ないし姉は妹に甘いものなんだ。時には仲の悪い兄弟姉妹もいるらしいけど、それはツンデレ的な何か違いない。

「それじゃあ、羨ましがらなくてもいいんじゃない?」

「いやそれが聞いてよ! 最近は兄貴もすっかり彼女に入れ込んでさ。前よりなんか買ってくれたり、送り迎えしてくれたり、しなくなったの」

「彼女さんかぁ。それなら仕方ない……」

「えー じゃあ、うぶクンも彼女できたら明莉ちゃんは放っておくの?」

「それはない」

「断言するんだ?」

「断言する」

 どちらかと言えば彼女ができない可能性の高さに。まぁ、仮にできたとして、それ明莉をないがしろにするようなことがあっては兄失格だ。

「やっぱり愛されるじゃん~」

「大山さんはその……シスコンとか思わないの?」

「シスコン? うーん……アタシは妹の立場で考えるからあんまりかな。いや、度が過ぎたら引いちゃうだろうケド」

「じゃあ、僕はセーフってこと?」

「だと思う。じゃあ、ケーキ屋の話は……」

 それからケーキ屋の詳細を聞きながら兄弟姉妹トークに花を咲かせた。いつものメンツで明莉のことを話すと変な目で見られるから新鮮な気持ちで話せて正直、楽しかった。
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