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1年生1学期
7月9日(金)雨のち曇り 岸本路子との交流その13
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期末テスト3日目。今日で前半戦が終わりになって、残り4教科が来週の月火に持ち越される。一旦休みが挟まると気が緩んでしまいそうだけど、明莉が言ったように夏休みが目の前だから踏ん張りどころだ。
「りょーちゃん、帰るかー」
そして、テストが終わって、松永に呼ばれた僕は帰る準備を終えて教室を出た。
「あれ? 岸本さん?」
すると、廊下を出てすぐに岸本さんがいた。1組のはずの岸本さんが4組の前にいるのは珍しいことだけど、僕はその理由がすぐにピンと来なかった。
「産賀くんと……えっと、松永さん、こんにちは」
「あー、文芸部の岸本さん。もしかして、りょーちゃんに用事?」
「えっ? 僕に?」
「4組に他の知り合いいるかわかんないけど、そうじゃなかったらりょーちゃんでしょ」
松永に言われて、僕はようやくそこに気が付いた。そして、岸本さんのことをちょっとだけ知っている僕からすると、待ち人は確実に僕ということがわかる。
松永の言葉が終わった後に、岸本さんは恐る恐る口を開く。
「そ、そうなのだけど……松永さんと用事があるなら」
「いやいや、俺はもう帰るだけだから。じゃあ、りょーちゃん、また明日……じゃなくて、月曜日!」
ウインクしながらそう言い残して松永は去って行った。松永がどういう意図でウインクしたのかはわからないけど、相変わらず空気を読んでもらって申し訳ない。
「それで、岸本さん。僕に用事って?」
「それは……数Ⅰのテストは来週の月曜日にあるから……もしよかったら一緒に勉強をしたいと思って」
「なるほどね。岸本さん、お昼は?」
「持って来てる……って、ああ!? そうだった……産賀くんのお昼のこと考えてなかった……」
「今日はコンビニで買って帰る予定だったから全然大丈夫。じゃあ、自習室で待ってて。一旦、お昼確保してくるから」
予想外のお誘いだったけど、岸本さんから来てくれたなら断る理由はない。急いで一番近いコンビニまで行って往復10分ほどで学校に戻り、自習室まで行くと、扉の前で岸本さんが待っていた。
「産賀くん、お昼は自習室で食べられないみたいだから……」
「そういえばそうか。えっと……中庭で食べる?」
「産賀くんがいいなら、それで」
そのままの流れで中庭の座れそうな場所に二人並んでお昼を食べ始めた……あれ? なんだこの状況。一緒に勉強する話だったのに、何で岸本さんと並んでご飯を食べてるんだ?
「外まで買いに行かせて、本当にごめんなさい。わたし、いつも自分のことばかり考えて……」
「ぜ、全然そんなことないよ!」
「産賀くん?」
何を動揺しているのか、声がちょっと上ずってしまった。いかんいかん。岸本さんとはいつも話しているじゃないか。雰囲気で緊張してはいけない。
「で、でも、一緒に勉強したかったならLINEで連絡してくれれば良かったのに」
「あっ……そ、そうよね。LINEすればよかったのよね」
「遠慮しなくても何かあったら連絡してくれればいいから」
「……産賀くん、それについてなのだけれど」
「うん? それって、LINEのこと?」
「ええ。その……産賀くんからも最初の挨拶以降は連絡が来なかったから、あまり連絡するのはどうかと思っていて……」
「そ、そうだっけ?」
自分で言っておきながら僕から岸本さんへの連絡も口頭ばかりだったことを思い出す。元々、僕がLINEを送りまくるタイプじゃないし、岸本さんはLINEに関してはあまり詳しくないみたいだからそれで今日も連絡する発想にならなかったんだ。
「それにLINEを送るタイミングってどうにもわからなくて……今週はテストだったから特に連絡が邪魔になったらと考えてたと思うからどちらにせよ送れなかったと思うわ」
「別に絶対見なきゃいけないものでもないから送るだけなら……って言いたいところだけど、僕もその気持ちはわかるよ。相手の方で既読付かないと気になっちゃうし」
「産賀くんも? 確かに既読は便利なシステムだと思うのだけれど、それがあるせいで余計なことを考えてしまって……」
「うんうん。自分が既読付けた後も返しの文章を考えるのに時間かかったら悪いなぁと思うし……」
「……ふふっ」
「岸本さん?」
「産賀くん、意外に慎重派なのね」
「あっ!? いや、その……」
しまった。岸本さんの中だと僕は積極的なやつだったんだ。如何にもLINE下手なやつの話を聞かせてどうする。しかし、こればっかりは僕も正解がわからないから……
「だったら……これからは産賀くんに用事がなくても、何となくLINEしてもいい……かしら?」
「えっ? う、うん、それはもちろん。僕も……遠慮せず連絡する。本の感想とか」
何だろう。今日の岸本さんも教室で会った時みたいに部室じゃない場所にいるせいか、ちょっと違う感じがしてしまう。会話の内容的には特に変わっていないのに。
「と、ところで、岸本さんは今日までのテストはどんな感じ?」
「わたしは……」
それから暫くランチタイムを楽しんだ後、自習室で岸本さんの質問を聞きつつ、テスト勉強を進めた。頼られるから見栄を張りそうになってしまうけど、岸本さんの前でも僕は友達として僕らしくいるべきだとちょっとだけ思った日だった。
「りょーちゃん、帰るかー」
そして、テストが終わって、松永に呼ばれた僕は帰る準備を終えて教室を出た。
「あれ? 岸本さん?」
すると、廊下を出てすぐに岸本さんがいた。1組のはずの岸本さんが4組の前にいるのは珍しいことだけど、僕はその理由がすぐにピンと来なかった。
「産賀くんと……えっと、松永さん、こんにちは」
「あー、文芸部の岸本さん。もしかして、りょーちゃんに用事?」
「えっ? 僕に?」
「4組に他の知り合いいるかわかんないけど、そうじゃなかったらりょーちゃんでしょ」
松永に言われて、僕はようやくそこに気が付いた。そして、岸本さんのことをちょっとだけ知っている僕からすると、待ち人は確実に僕ということがわかる。
松永の言葉が終わった後に、岸本さんは恐る恐る口を開く。
「そ、そうなのだけど……松永さんと用事があるなら」
「いやいや、俺はもう帰るだけだから。じゃあ、りょーちゃん、また明日……じゃなくて、月曜日!」
ウインクしながらそう言い残して松永は去って行った。松永がどういう意図でウインクしたのかはわからないけど、相変わらず空気を読んでもらって申し訳ない。
「それで、岸本さん。僕に用事って?」
「それは……数Ⅰのテストは来週の月曜日にあるから……もしよかったら一緒に勉強をしたいと思って」
「なるほどね。岸本さん、お昼は?」
「持って来てる……って、ああ!? そうだった……産賀くんのお昼のこと考えてなかった……」
「今日はコンビニで買って帰る予定だったから全然大丈夫。じゃあ、自習室で待ってて。一旦、お昼確保してくるから」
予想外のお誘いだったけど、岸本さんから来てくれたなら断る理由はない。急いで一番近いコンビニまで行って往復10分ほどで学校に戻り、自習室まで行くと、扉の前で岸本さんが待っていた。
「産賀くん、お昼は自習室で食べられないみたいだから……」
「そういえばそうか。えっと……中庭で食べる?」
「産賀くんがいいなら、それで」
そのままの流れで中庭の座れそうな場所に二人並んでお昼を食べ始めた……あれ? なんだこの状況。一緒に勉強する話だったのに、何で岸本さんと並んでご飯を食べてるんだ?
「外まで買いに行かせて、本当にごめんなさい。わたし、いつも自分のことばかり考えて……」
「ぜ、全然そんなことないよ!」
「産賀くん?」
何を動揺しているのか、声がちょっと上ずってしまった。いかんいかん。岸本さんとはいつも話しているじゃないか。雰囲気で緊張してはいけない。
「で、でも、一緒に勉強したかったならLINEで連絡してくれれば良かったのに」
「あっ……そ、そうよね。LINEすればよかったのよね」
「遠慮しなくても何かあったら連絡してくれればいいから」
「……産賀くん、それについてなのだけれど」
「うん? それって、LINEのこと?」
「ええ。その……産賀くんからも最初の挨拶以降は連絡が来なかったから、あまり連絡するのはどうかと思っていて……」
「そ、そうだっけ?」
自分で言っておきながら僕から岸本さんへの連絡も口頭ばかりだったことを思い出す。元々、僕がLINEを送りまくるタイプじゃないし、岸本さんはLINEに関してはあまり詳しくないみたいだからそれで今日も連絡する発想にならなかったんだ。
「それにLINEを送るタイミングってどうにもわからなくて……今週はテストだったから特に連絡が邪魔になったらと考えてたと思うからどちらにせよ送れなかったと思うわ」
「別に絶対見なきゃいけないものでもないから送るだけなら……って言いたいところだけど、僕もその気持ちはわかるよ。相手の方で既読付かないと気になっちゃうし」
「産賀くんも? 確かに既読は便利なシステムだと思うのだけれど、それがあるせいで余計なことを考えてしまって……」
「うんうん。自分が既読付けた後も返しの文章を考えるのに時間かかったら悪いなぁと思うし……」
「……ふふっ」
「岸本さん?」
「産賀くん、意外に慎重派なのね」
「あっ!? いや、その……」
しまった。岸本さんの中だと僕は積極的なやつだったんだ。如何にもLINE下手なやつの話を聞かせてどうする。しかし、こればっかりは僕も正解がわからないから……
「だったら……これからは産賀くんに用事がなくても、何となくLINEしてもいい……かしら?」
「えっ? う、うん、それはもちろん。僕も……遠慮せず連絡する。本の感想とか」
何だろう。今日の岸本さんも教室で会った時みたいに部室じゃない場所にいるせいか、ちょっと違う感じがしてしまう。会話の内容的には特に変わっていないのに。
「と、ところで、岸本さんは今日までのテストはどんな感じ?」
「わたしは……」
それから暫くランチタイムを楽しんだ後、自習室で岸本さんの質問を聞きつつ、テスト勉強を進めた。頼られるから見栄を張りそうになってしまうけど、岸本さんの前でも僕は友達として僕らしくいるべきだとちょっとだけ思った日だった。
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