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1年生1学期
6月29日(火)曇りのち晴れ 知らなければいけないこと
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「ソフィア先輩、昨日はありがとうございました。」
その日、部室来た僕はすぐにソフィア先輩のところへ行き、そう言った。ソフィア先輩がいなければ桜庭先輩と清水先輩を引き合わせるのにもっと時間がかかっていたかもしれない。
「ううん、あれくらいの頼みなら全然! むしろ、ウーブ君にようやく恩返しできた感じだよ。岸本ちゃんの件のお礼、結局してないし」
「なら良かったです。それで……今度は僕が借りを作ることになるんですけど……」
「うん? なになに?」
「桜庭先輩って……どういう人か教えてくれませんか?」
二人の喧嘩へ必要以上に関わってはいけないけど、それ以前に僕は桜庭先輩と清水先輩のことを知らなさ過ぎた。もしも清水先輩がまた僕を訪ねてきた時、今のままでは良くないと思ったのだ。
「えっと……あんまり聞いちゃいけないかもだけど、ウーブ君が知ってる桜庭さんってソフィアが知っているよりもわからない感じなの?」
「はい。僕が知ってることは桜庭先輩が清水先輩の……友人で、茶道部に所属しているくらいです」
「……そうなんだ。ソフィアもめっちゃ親交があるわけじゃないから普段見た感じの印象になるけど……真面目で優等生な感じかな。あと、ウーブ君の言う通り茶道部だからおしとやかな印象もあるかも」
「なるほど。それで、清……五大美人の一人の髪が長くて……」
「清水さんね。大丈夫、わかるわかる」
「あっ、はい。その清水先輩と桜庭先輩が一緒にいるところは見たことありますか?」
「うん。時々二人でいるのは見たけど……」
ソフィア先輩はそこで一旦口を閉ざして、僕の様子を窺いながら考え始める。僕は二人が一緒にいるところは二回しか見ていないからそれ以上の情報はないので、ソフィア先輩が何を考えているかさっぱりわからなかった。
そして、ソフィア先輩はゆっくりと口を開く。
「ウーブ君。ソフィア、今から清水さんについて、すごく失礼なことを言うんだけど……大丈夫?」
「……大丈夫です。お願いします」
「……清水さんね、ちょっと変わってるじゃない? それもあって、五大美人だけじゃなくて、変な噂や……やっかみを受けることがあるの」
「それは……」
「どっちかというと女子間の話。だけど、桜庭さんはそれを気にしてないっていうか……これはソフィアの憶測になるけど、そうだとしても付き添ってるって感じだった」
清水先輩がそういう立場にいることは少し驚いたけど、桜庭先輩が気にしないは何となく想像できる。でも、それならどうして二人は今までしてこなった喧嘩を急にしてしまったんだ?
「じゃあ、清水先輩と桜庭先輩は親友同士ってことで……」
「それは……どうなんだろう」
「えっ? どういうことですか?」
「これもソフィアの憶測だけど、時々っていうのは本当に時々で、毎日一緒にお弁当を食べてるわけじゃないの。たまに桜庭さんは別の子と食べてるし。それ以外も……なんていうんだろう。独特の距離があるっていうか……」
ソフィア先輩の言う事は当事者である清水先輩からも聞いた言葉だ。知り合いないし友達ではあるけど、親友ではない。もちろん、常に一緒にいることや距離が近いことだけが友達や親友の条件になるわけじゃない。
でも、傍から見ても感じられる二人の距離はいったいなんなのだろう。
「ウーブ君、ごめんね。清水さんのこと悪く言って」
「いえ、聞いたのは僕の方なので……」
「でも、ソフィアは少し前も清水さんに変な態度取っちゃったから……完全に噂に流されちゃって」
「あまり知らないなら仕方ないと思います。僕も……清水先輩は未だに不思議な人だと思ってますから」
「そうなんだ……ねぇ、ウーブ君。詳しくは聞かないから、今回のことが丸く収まったらソフィアにも教えてくれないかな?」
「はい。いつになるかはわかりませんけど……」
「ううん。きっとうまくいくって信じてる。それで収まった後はソフィアも清水さんと話してみたい!」
「そ、そんなに興味あったんですか」
「だって、ウーブ君が友達なったんだから悪い子じゃないんだと思うから。あっちは気にしてないかもだけど、謝りたい意味も込めてね」
そう言いながら笑いかけてくれるソフィア先輩を見て、少しだけ心が落ち着いた。僕がそんな風に評価されているのは恐縮だけど、それがもしも清水先輩が頼ってくれる理由になるなら……なんて思うほどにはやっぱり心配していた。
その日、部室来た僕はすぐにソフィア先輩のところへ行き、そう言った。ソフィア先輩がいなければ桜庭先輩と清水先輩を引き合わせるのにもっと時間がかかっていたかもしれない。
「ううん、あれくらいの頼みなら全然! むしろ、ウーブ君にようやく恩返しできた感じだよ。岸本ちゃんの件のお礼、結局してないし」
「なら良かったです。それで……今度は僕が借りを作ることになるんですけど……」
「うん? なになに?」
「桜庭先輩って……どういう人か教えてくれませんか?」
二人の喧嘩へ必要以上に関わってはいけないけど、それ以前に僕は桜庭先輩と清水先輩のことを知らなさ過ぎた。もしも清水先輩がまた僕を訪ねてきた時、今のままでは良くないと思ったのだ。
「えっと……あんまり聞いちゃいけないかもだけど、ウーブ君が知ってる桜庭さんってソフィアが知っているよりもわからない感じなの?」
「はい。僕が知ってることは桜庭先輩が清水先輩の……友人で、茶道部に所属しているくらいです」
「……そうなんだ。ソフィアもめっちゃ親交があるわけじゃないから普段見た感じの印象になるけど……真面目で優等生な感じかな。あと、ウーブ君の言う通り茶道部だからおしとやかな印象もあるかも」
「なるほど。それで、清……五大美人の一人の髪が長くて……」
「清水さんね。大丈夫、わかるわかる」
「あっ、はい。その清水先輩と桜庭先輩が一緒にいるところは見たことありますか?」
「うん。時々二人でいるのは見たけど……」
ソフィア先輩はそこで一旦口を閉ざして、僕の様子を窺いながら考え始める。僕は二人が一緒にいるところは二回しか見ていないからそれ以上の情報はないので、ソフィア先輩が何を考えているかさっぱりわからなかった。
そして、ソフィア先輩はゆっくりと口を開く。
「ウーブ君。ソフィア、今から清水さんについて、すごく失礼なことを言うんだけど……大丈夫?」
「……大丈夫です。お願いします」
「……清水さんね、ちょっと変わってるじゃない? それもあって、五大美人だけじゃなくて、変な噂や……やっかみを受けることがあるの」
「それは……」
「どっちかというと女子間の話。だけど、桜庭さんはそれを気にしてないっていうか……これはソフィアの憶測になるけど、そうだとしても付き添ってるって感じだった」
清水先輩がそういう立場にいることは少し驚いたけど、桜庭先輩が気にしないは何となく想像できる。でも、それならどうして二人は今までしてこなった喧嘩を急にしてしまったんだ?
「じゃあ、清水先輩と桜庭先輩は親友同士ってことで……」
「それは……どうなんだろう」
「えっ? どういうことですか?」
「これもソフィアの憶測だけど、時々っていうのは本当に時々で、毎日一緒にお弁当を食べてるわけじゃないの。たまに桜庭さんは別の子と食べてるし。それ以外も……なんていうんだろう。独特の距離があるっていうか……」
ソフィア先輩の言う事は当事者である清水先輩からも聞いた言葉だ。知り合いないし友達ではあるけど、親友ではない。もちろん、常に一緒にいることや距離が近いことだけが友達や親友の条件になるわけじゃない。
でも、傍から見ても感じられる二人の距離はいったいなんなのだろう。
「ウーブ君、ごめんね。清水さんのこと悪く言って」
「いえ、聞いたのは僕の方なので……」
「でも、ソフィアは少し前も清水さんに変な態度取っちゃったから……完全に噂に流されちゃって」
「あまり知らないなら仕方ないと思います。僕も……清水先輩は未だに不思議な人だと思ってますから」
「そうなんだ……ねぇ、ウーブ君。詳しくは聞かないから、今回のことが丸く収まったらソフィアにも教えてくれないかな?」
「はい。いつになるかはわかりませんけど……」
「ううん。きっとうまくいくって信じてる。それで収まった後はソフィアも清水さんと話してみたい!」
「そ、そんなに興味あったんですか」
「だって、ウーブ君が友達なったんだから悪い子じゃないんだと思うから。あっちは気にしてないかもだけど、謝りたい意味も込めてね」
そう言いながら笑いかけてくれるソフィア先輩を見て、少しだけ心が落ち着いた。僕がそんな風に評価されているのは恐縮だけど、それがもしも清水先輩が頼ってくれる理由になるなら……なんて思うほどにはやっぱり心配していた。
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