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1年生1学期
5月12日(水)曇りのち雨 大山亜里沙との会話その4
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「じー……」
5時間目の社会の授業が終わると、僕は大きく伸びをした。やっぱり昼食後の5時間目はどんな授業でも眠気や疲れが出始める時間だ。
「じーー……」
でも、そんな時間を乗り越えると何となく頑張れた気がするし、もうひと頑張りすれば放課後になって家に帰れる……
「じーーー……」
「……どうしたの大山さん」
授業が終わった途端に右隣から視線を向けられていた僕は、とうとう勘弁してそう聞いた。それでも大山さんは喋ろうとしない。理由を少しだけ考えてから僕は口を開く。
「えっと……穴が空くほど見られると恥ずかしい」
「えっ? 全然恥ずかしそうじゃないのに……ってそうじゃなくてさー!」
「違うの?」
「これはノート貸してってサインじゃん!」
サインじゃん!と言われてもそんな打ち合わせをした覚えがない。いや、きっとこれは打ち合わせうんぬんではなく、そういうノリの話なんだろう。
「うぶクンもそろそろわかってくれると思ったんだケドなぁ」
「いや、ノート取ってる可能性もあるから」
「アタシが寝てるの知ってるでしょ?」
「寝てる前提では話されても……はい、ノート」
そう言いながら自然と渡してしまった僕はもう共犯者なのかもしれない。それでも貸さないで全く勉強させないのは別の罪に問われそうだ。
「サンキュ。それにしてもうぶクンは本当に眠くならないの?」
「眠くないわけじゃないけど、そんなには。むしろ、大山さんはどうしてそんなに眠くなってるの?」
「……夜更かししたから?」
「それが全てだと思う」
「うー……火曜日はちょうど見たい深夜番組があって……」
「録画とかネット配信とか使えばいいんじゃない?」
「かもしれないケド、やっぱリアルタイムで見たくなるっていうか……」
気持ちはわからなくはない。でも、そんな深夜まで起きれていれば5時間目どころか早朝から既に危なそうだ。
「逆に普段の他の授業……現社と古典以外は寝てないよね?」
「そこは大丈夫! この時間に寝るって決めてるし、古典はたまにマジで眠いだけだから!」
「全然大丈夫じゃない」
そんなやり取りをしていると、次のチャイムが鳴ってしまった。
「うぶクンってさ、結構マジメでキビしいっていうか……」
「もう次の授業始まるよ」
「だから、そういうトコ~!」
何となく受け流している風だけど、鳴ってしまったと思うほど、こういう何気ない会話は楽しいものだった。
5時間目の社会の授業が終わると、僕は大きく伸びをした。やっぱり昼食後の5時間目はどんな授業でも眠気や疲れが出始める時間だ。
「じーー……」
でも、そんな時間を乗り越えると何となく頑張れた気がするし、もうひと頑張りすれば放課後になって家に帰れる……
「じーーー……」
「……どうしたの大山さん」
授業が終わった途端に右隣から視線を向けられていた僕は、とうとう勘弁してそう聞いた。それでも大山さんは喋ろうとしない。理由を少しだけ考えてから僕は口を開く。
「えっと……穴が空くほど見られると恥ずかしい」
「えっ? 全然恥ずかしそうじゃないのに……ってそうじゃなくてさー!」
「違うの?」
「これはノート貸してってサインじゃん!」
サインじゃん!と言われてもそんな打ち合わせをした覚えがない。いや、きっとこれは打ち合わせうんぬんではなく、そういうノリの話なんだろう。
「うぶクンもそろそろわかってくれると思ったんだケドなぁ」
「いや、ノート取ってる可能性もあるから」
「アタシが寝てるの知ってるでしょ?」
「寝てる前提では話されても……はい、ノート」
そう言いながら自然と渡してしまった僕はもう共犯者なのかもしれない。それでも貸さないで全く勉強させないのは別の罪に問われそうだ。
「サンキュ。それにしてもうぶクンは本当に眠くならないの?」
「眠くないわけじゃないけど、そんなには。むしろ、大山さんはどうしてそんなに眠くなってるの?」
「……夜更かししたから?」
「それが全てだと思う」
「うー……火曜日はちょうど見たい深夜番組があって……」
「録画とかネット配信とか使えばいいんじゃない?」
「かもしれないケド、やっぱリアルタイムで見たくなるっていうか……」
気持ちはわからなくはない。でも、そんな深夜まで起きれていれば5時間目どころか早朝から既に危なそうだ。
「逆に普段の他の授業……現社と古典以外は寝てないよね?」
「そこは大丈夫! この時間に寝るって決めてるし、古典はたまにマジで眠いだけだから!」
「全然大丈夫じゃない」
そんなやり取りをしていると、次のチャイムが鳴ってしまった。
「うぶクンってさ、結構マジメでキビしいっていうか……」
「もう次の授業始まるよ」
「だから、そういうトコ~!」
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