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1年生1学期
5月4日(火)晴れ 明莉との日常その4
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連休4日目。今日は僕と明莉二人とも何もない日だったので家にいた。けれど、父さんと母さんがいないので、何かしら昼食を取らないければいけない。
「明莉、今日の昼ごはんは炒飯とパスタと野菜炒めのどれがいい?」
そんな両親がいない日は僕が珍しく料理する日だ。これは中学2年生から始まった習慣で、基本は作り置きしてくれるけど、たまにそれが間に合わない時は僕が簡単な料理を作ることがある。
「りょうちゃん、またその3つしか選択肢ないの……」
「……焼きそばもいける」
「それならインスタントで良くない?」
「それは言わないでくれ」
確かにインスタントの焼きそばの方が美味しいけど、昨日もカラオケに行く前に取った昼食はインスタントラーメンだったし、僕が料理を作るようになったのは栄養的にインスタントばかりは良くないと両親が思ったことから始まったのだから、それだと意味がない。
「そろそろ新作が食べたいなぁー 今日はオムライスの気分!」
「オムライスかぁ」
「卵はあるだろうし、ご飯はケチャップでいけるから後は冷蔵庫の余り物でできるんじゃない?」
「僕が作るからって……わかった、調べてみるよ」
ちなみに明莉は料理が作れないわけではないだろうけど、何故か二人の時の料理はインスタント込みで僕に任せられる。僕は「オムライス 簡単」でレシピを検索して、それらしいレシピを見つけた。
「卵で包むやつじゃなくて、乗せるだけのやつだけどいい?」
「大丈夫! 口の中でオムライスになればいいよ」
「その言い方はどうなんだ……明莉も手伝ってくれてもいいんだぞ?」
「いやいやー キッチンは戦場っていうじゃなですかぁ。あかりみたいな素人が紛れ込んでいい場所じゃないですよー」
「僕も素人なんだけど」
どう言っても手伝ってくれそうにないので、僕は諦めて調理を始める。料理というのはレシピ通りに作れば完成時の見栄えは別として、そうそう失敗するものではない。アレンジしていいのはその料理を作り慣れてからであって、最初は分量通りやればいいのだ。
「鶏肉がなかったウインナーでいいらしいからこれはよし。後は玉ねぎと……」
「あっ、りょうちゃん! グリーンピースそんなに好きじゃないから入れないでね」
「このレシピは元から入ってないよ」
栄養的に考えると野菜が足りない気もするけど、そこはサラダでも添えることにしよう。それから材料を刻んで炒めると、ケチャップライスはすぐに完成した。それから今度は被せる卵の方に移る。単純に焼くだけかと思ったら卵にもレシピが付いていた。
「マヨネーズと牛乳入れるのか」
「バラエティで見た事ある! マヨネーズは万能って」
「まぁ、レシピ通りにやってみよう」
フライパンにバターを敷くと、スクランブルエッグを作る要領で調整すれば半熟たまごが完成するらしい。そのレシピには丁寧に秒数を書いてくれていたので、それを実践すると……
「……破れた」
簡単とはいえど初めてでは上手くいかなかった。完成図の写真と比べると少々不格好だが、10人見れば7人はオムライスと言ってくれそうな形は完成した。
テーブルに適当な余り野菜のサラダと共に完成したオムライスを置く。すると、明莉はスマホでそれを撮った。
「後でお母さんに見せよー」
「お好きにどうぞ」
「それじゃあ、いただきまーす!」
僕は自分の方には口をつけずに、明莉の反応を待つ。一口食べた明莉はまるで評論家のように腕を組んで咀嚼した。
「……美味しい! ちゃんとオムライス!」
そう言われた僕は安心と嬉しさに包まれた。レシピ通りに作ったといっても自分で作ったものだから、美味しいと言われると素直に嬉しいものだ。
「りょうちゃんのレパートリーが増えたねー 今度は海鮮丼とかいいな~」
「それ絶対余り物じゃ作れないよ」
「じゃあじゃあ、お肉系でいいやつを……」
明莉の次のレシピ候補を聞きながら、その日の昼食は和やかに過ぎていった。本当は明莉の料理も食べてみたいと思いながらも、お願いされる限りは僕の役割になりそうだ。
「明莉、今日の昼ごはんは炒飯とパスタと野菜炒めのどれがいい?」
そんな両親がいない日は僕が珍しく料理する日だ。これは中学2年生から始まった習慣で、基本は作り置きしてくれるけど、たまにそれが間に合わない時は僕が簡単な料理を作ることがある。
「りょうちゃん、またその3つしか選択肢ないの……」
「……焼きそばもいける」
「それならインスタントで良くない?」
「それは言わないでくれ」
確かにインスタントの焼きそばの方が美味しいけど、昨日もカラオケに行く前に取った昼食はインスタントラーメンだったし、僕が料理を作るようになったのは栄養的にインスタントばかりは良くないと両親が思ったことから始まったのだから、それだと意味がない。
「そろそろ新作が食べたいなぁー 今日はオムライスの気分!」
「オムライスかぁ」
「卵はあるだろうし、ご飯はケチャップでいけるから後は冷蔵庫の余り物でできるんじゃない?」
「僕が作るからって……わかった、調べてみるよ」
ちなみに明莉は料理が作れないわけではないだろうけど、何故か二人の時の料理はインスタント込みで僕に任せられる。僕は「オムライス 簡単」でレシピを検索して、それらしいレシピを見つけた。
「卵で包むやつじゃなくて、乗せるだけのやつだけどいい?」
「大丈夫! 口の中でオムライスになればいいよ」
「その言い方はどうなんだ……明莉も手伝ってくれてもいいんだぞ?」
「いやいやー キッチンは戦場っていうじゃなですかぁ。あかりみたいな素人が紛れ込んでいい場所じゃないですよー」
「僕も素人なんだけど」
どう言っても手伝ってくれそうにないので、僕は諦めて調理を始める。料理というのはレシピ通りに作れば完成時の見栄えは別として、そうそう失敗するものではない。アレンジしていいのはその料理を作り慣れてからであって、最初は分量通りやればいいのだ。
「鶏肉がなかったウインナーでいいらしいからこれはよし。後は玉ねぎと……」
「あっ、りょうちゃん! グリーンピースそんなに好きじゃないから入れないでね」
「このレシピは元から入ってないよ」
栄養的に考えると野菜が足りない気もするけど、そこはサラダでも添えることにしよう。それから材料を刻んで炒めると、ケチャップライスはすぐに完成した。それから今度は被せる卵の方に移る。単純に焼くだけかと思ったら卵にもレシピが付いていた。
「マヨネーズと牛乳入れるのか」
「バラエティで見た事ある! マヨネーズは万能って」
「まぁ、レシピ通りにやってみよう」
フライパンにバターを敷くと、スクランブルエッグを作る要領で調整すれば半熟たまごが完成するらしい。そのレシピには丁寧に秒数を書いてくれていたので、それを実践すると……
「……破れた」
簡単とはいえど初めてでは上手くいかなかった。完成図の写真と比べると少々不格好だが、10人見れば7人はオムライスと言ってくれそうな形は完成した。
テーブルに適当な余り野菜のサラダと共に完成したオムライスを置く。すると、明莉はスマホでそれを撮った。
「後でお母さんに見せよー」
「お好きにどうぞ」
「それじゃあ、いただきまーす!」
僕は自分の方には口をつけずに、明莉の反応を待つ。一口食べた明莉はまるで評論家のように腕を組んで咀嚼した。
「……美味しい! ちゃんとオムライス!」
そう言われた僕は安心と嬉しさに包まれた。レシピ通りに作ったといっても自分で作ったものだから、美味しいと言われると素直に嬉しいものだ。
「りょうちゃんのレパートリーが増えたねー 今度は海鮮丼とかいいな~」
「それ絶対余り物じゃ作れないよ」
「じゃあじゃあ、お肉系でいいやつを……」
明莉の次のレシピ候補を聞きながら、その日の昼食は和やかに過ぎていった。本当は明莉の料理も食べてみたいと思いながらも、お願いされる限りは僕の役割になりそうだ。
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