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1年生1学期
4月6日(火)晴れのち曇り 本田真治との出会い
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高校生活2日目。今日から授業が始まるけど、1・2時間目はホームルームで、明日以降にある身体測定や内科検診の話と来週1泊2日で行われる宿泊研修の話、それに部活の説明やクラス委員の取り決めが行われた。
昨日の入学式の後に軽く自己紹介を済ませたとは言っても、まだ知り合い以外にはぎこちない態度しか取れない僕は、クラスの代表となる委員のいずれも立候補することはなかった。そんな中で積極的に委員長になったり、体育委員になったりする人はアクティブな人と言えるだろう。
「それで……選挙管理委員って何するんだろ?」
「説明を聞かずに手を上げたのか……」
松永もそんなアクティブな一人で、なかなか手が上がらなかった選挙管理委員にいつの間にかなっていた。中学の時と同じなら、生徒会選挙の時だけ活動する委員だから比較的楽な部類委員会だろうけど、僕も詳しくはわからない。それでも松永本人はまるで気にしていないような顔だ。
「まっ、何とかなるでしょ」
「そういう性格、ちょっとうらやましいよ」
「今なら半額で分けてあげるけど~?」
「元値によっては検討する」
今日も中学と変わりないやり取りをすると、何だか本当に高校生になったかわからなくなってしまう。
それから3時間目以降は授業になったけど、初回ということもあって先生の自己紹介とか授業の方針とかで、大きく進むことはなかった。それでもまだ緊張しているせいか、昼休みになるともう疲れが貯まっていた。
「りょーちゃん、弁当一緒に食べよ~」
「うん。あっ……」
席から動かずにいた僕のところにやって来たのは松永だけじゃなかった。隣にいる長身でキリッとした空気のある男子に僕の目線が移ると、松永は流れるように説明を始める。
「こっちは本田真治。ちょうど席が後ろだから今日初めて話した。本田くん、そっちは産賀良助。幼稚園の頃からの同級生で、みんなからりょーちゃんって呼ばれてる」
お互いに松永から紹介を受けて「どうも」と挨拶を交わすと、そのままの流れで一緒に昼食を取ることになった。その間も松永が話を回してくれるから、僕も本田くんと仲良くなっている気になるけど、実際はまだ探りながらの会話が続く。
「本田くんはどこの中学なの?」
「オレは東中。産賀くんは……松永くんと同じだから南中か」
「うん。松永、幼稚園の時からこんなテンションで四六時中うるさいだろうから、たまにスルーしても大丈夫だよ」
僕の言葉に松永が笑いながら抗議するけど、こういうネタに使いやすいことには内心感謝している。それに対して本田くんは、少しだけ頬を緩ませて言う。
「いや、うるさいくらいがちょうどいいよ。オレ、口下手だから」
「うるさいのは認めるんだ」
「ああ。次の授業中もちょっと不安に思ってる」
「ちょっとちょっと~ 本人が目の前にいるからって悪口言っていいわけじゃないよ~」
松永がそう言うと、僕と本田くんは声を揃えて笑った。どうやら本田くんも僕と同じ気持ちだったらしい。
その後も基本はお互いの中学の情報を確かめ合う会話だったけど、突然引き合わされた時よりは楽しく話せたと思う。改めて松永の存在に感謝しつつ、僕は新たな友人と仲良くなる一歩を踏み出すのだった。
昨日の入学式の後に軽く自己紹介を済ませたとは言っても、まだ知り合い以外にはぎこちない態度しか取れない僕は、クラスの代表となる委員のいずれも立候補することはなかった。そんな中で積極的に委員長になったり、体育委員になったりする人はアクティブな人と言えるだろう。
「それで……選挙管理委員って何するんだろ?」
「説明を聞かずに手を上げたのか……」
松永もそんなアクティブな一人で、なかなか手が上がらなかった選挙管理委員にいつの間にかなっていた。中学の時と同じなら、生徒会選挙の時だけ活動する委員だから比較的楽な部類委員会だろうけど、僕も詳しくはわからない。それでも松永本人はまるで気にしていないような顔だ。
「まっ、何とかなるでしょ」
「そういう性格、ちょっとうらやましいよ」
「今なら半額で分けてあげるけど~?」
「元値によっては検討する」
今日も中学と変わりないやり取りをすると、何だか本当に高校生になったかわからなくなってしまう。
それから3時間目以降は授業になったけど、初回ということもあって先生の自己紹介とか授業の方針とかで、大きく進むことはなかった。それでもまだ緊張しているせいか、昼休みになるともう疲れが貯まっていた。
「りょーちゃん、弁当一緒に食べよ~」
「うん。あっ……」
席から動かずにいた僕のところにやって来たのは松永だけじゃなかった。隣にいる長身でキリッとした空気のある男子に僕の目線が移ると、松永は流れるように説明を始める。
「こっちは本田真治。ちょうど席が後ろだから今日初めて話した。本田くん、そっちは産賀良助。幼稚園の頃からの同級生で、みんなからりょーちゃんって呼ばれてる」
お互いに松永から紹介を受けて「どうも」と挨拶を交わすと、そのままの流れで一緒に昼食を取ることになった。その間も松永が話を回してくれるから、僕も本田くんと仲良くなっている気になるけど、実際はまだ探りながらの会話が続く。
「本田くんはどこの中学なの?」
「オレは東中。産賀くんは……松永くんと同じだから南中か」
「うん。松永、幼稚園の時からこんなテンションで四六時中うるさいだろうから、たまにスルーしても大丈夫だよ」
僕の言葉に松永が笑いながら抗議するけど、こういうネタに使いやすいことには内心感謝している。それに対して本田くんは、少しだけ頬を緩ませて言う。
「いや、うるさいくらいがちょうどいいよ。オレ、口下手だから」
「うるさいのは認めるんだ」
「ああ。次の授業中もちょっと不安に思ってる」
「ちょっとちょっと~ 本人が目の前にいるからって悪口言っていいわけじゃないよ~」
松永がそう言うと、僕と本田くんは声を揃えて笑った。どうやら本田くんも僕と同じ気持ちだったらしい。
その後も基本はお互いの中学の情報を確かめ合う会話だったけど、突然引き合わされた時よりは楽しく話せたと思う。改めて松永の存在に感謝しつつ、僕は新たな友人と仲良くなる一歩を踏み出すのだった。
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