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本編
16 ルイス視点
しおりを挟む本編14~15話+αのルイス視点です。
ワシがルーカスの違和感に気づいたのは馬車を降りて最初に見た時だった。
最後に会ったのはルーカスはまだ幼くオリビアに抱かれている時だった。その頃から比べれば随分大きくなっていた。
だが、年齢を数えるとルーカスは6歳だという。6歳にしては身体付きは小さかった。
「おぉ、ルーカスか。6歳と聞いたが随分小さいな?」
この時ワシはただ、成長が遅いだけかと思っていた。だが、ルーカスを抱き上げてみるとあまりの軽さに驚いて思わず口に出してしまった。
「これは軽すぎないか?ご飯は食べてるのか?」
急な事にルーカスは驚いたのだろう。表情はあまり変わらないが、焦っていることはどことなく感じ取ることが出来た。
そうしている間に温室でお茶をすることになった。
このだき抱えている小さな存在を温室まで歩かせてしまったら疲れさせるだろうと思いルイスは温室まで連れていくことにした。
だが、ソフィアに人見知りだからやめろと言われた。だが、久々に会った孫だ。もう少し抱っこしていたい。
「そうなのか?それじゃあ、しばらくこうしてわしに慣れるといい。」
そう言うと、テオドールが羨ましそうにこちらを見ていることに気づいた。
(テオドールで羨ましそうこちらを見るな)
そう思いながらもルイスはルーカスを連れ移動した。
温室に着き、ルーカスを降ろした瞬間だった。テオドールがルーカスを呼びルーカスがそちらへ行ってしまった。
(お菓子をあーんしたかったのだが·····)
だが、兄の元で少し安心しているルーカスを見て仕方ないかと思った。
その後はお茶会をしていた。だが、気づいたことがある。エルドとルーカスが話すところを1度も見たことがない。
そして、エルドがルーカスに向ける視線には嫌悪が混ざっておりエルドがルーカスに対し良い気持ちを持ってないのがすぐに分かった。
(これは後で話してみるしかないな)
そう思った直後だった。タルトを食べたルーカスが泣き出したのだった。もちろん、タルトを作ったのは一流の菓子職人だ。不味いわけが無い。
その後のオリビアやソフィアのやり取りを見て色々と不審に感じだ。
オリビアの言葉や態度、視線から良いものを感じなかった。嫌悪感がにじみでているのである。
(これは·····色々とまずい状況なのかもしれない)
ルイスはルーカスとテオドールを一度温室から遠ざける事にした。
「テオドール、ルーカスをベッドルームに連れていったらどうだ?」
テオドールがその言葉に頷くとルーカスを抱き上げ温室から出ていった。
それを見送ったルイスはエルドとの剣の稽古·····もとい、エルドとルーカスの仲を探るための剣の稽古を始めたのだった。
剣の稽古を通しエルドがルーカスを嫌う理由やエルドの物の考え方を聞いてルイスは確信した。
(あのバカ娘と·····バカ婿は·····)
テオドールはまだいい方だ。だが、エルドはこのまま成長するといつか痛い目をみる。
(こういう時に子供に手を伸ばすのは親の役目なんだが·····)
だが、孫の姿を見て自分もいい教育を娘に出来てなかったことを痛感する。
ルイスはせめての罪滅ぼしとしてエルドにアドバイスをする。
「なぁ、エルド。人はな誰かを助けなきゃ、いつか自分が困った時に誰も助けてくれないものなんだよ。」
「·····ですが」
「なーに、ワシもお前さんくらいの歳の時は同じことを考えとった。自分の利益にならんことはしたくない·····だろ?」
そう言うとエルドは考え込んだ。そしてルイスはソフィアとの出会いや自分の若い頃の話をした。
「まぁ、まだ若いんだ。色々と経験していくうちに考え方だって変わるさ。だがな、得ることは難しくても失うのは簡単だ。」
「得ることは·····難しくて、失うのは·····簡単」
「そうだ。だから、後悔しないようにしないとな?」
今まで道徳的な部分はあまり教育を親から受けてないのだろう。ルイスは自分の言葉で少しでも良い方向に向かってくれるよう願った。
そして次は、更に根深い問題を解決するためにテオドールとルーカスの元へ向かった。
テオドールの部屋を訪れるとルーカスが目元を赤くしていて、一瞬で泣いていたのであろうと悟った。
その場の雰囲気を明るくするためにもルイスはルーカスにじいじ呼びをお願いした。
まぁ、その場を明るくするための嘘ではなく100%下心のあるお願いだが·····。
ルーカスからのじいじ呼びをしてもらいその場も明るくなった所でルイスはテオドールを連れ出しメルヴィルの執務室へ向かった。
執務室に着き、ルイスとテオドールはソファーに座る。
席に着いた所で、ルイスは控えていたメイドにお茶を頼み、準備してもらった後部屋から出るよう指示を出した。
そして、ルイスはメルヴィルが来るまでテオドールから今までこの屋敷がどんな状態だったのかを聞き出した。
ルーカスがこの屋敷でどのような存在でどんな扱いを受けてきたのか。
テオドールも全てを知っているわけではないだろうが、知っている部分を聞いただけでも幼子がどれだけ痛く苦しい思いをしてきたのかが想像ついた。
いや、きっと自分が想像しているよりはるかに辛かったはずだ。
ルイスは涙が出そうになるのをグッとこらえる。
ここで泣くのはまだ早い。本当に泣きたいであろうルーカスですらまともに泣けていない。
自分の心に喝を入れる。
(すまんの·····ルーカス。ワシがしっかりしなくてはな)
少し暗くなった執務室にコンコンとドアを叩く音が響く。
「入れ」
そう言うと、セバスが入室してきた。どうやらメルヴィルが帰宅する時間がもうすぐらしい。
ルイスはセバスに帰宅したら直ぐに執務室に来るようにとメルヴィルに伝えるよう指示を出した。
その指示を受けたセバスは一礼をし執務室を後にした。
「さぁ··········嵐がやってきそうだ。」
ルイスはテオドールには聞こえない声で呟くとすでに冷めきった紅茶を口にした。
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