異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

165.マスターよりも先に殺したい。 一心視点

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ひとまず検査に必要なプログラムを立ち上げ、室内を調べていく。

空気中には何も発生していないようだが、毒が塗布されていないかどうかが気になる。

(しかし、まぁ………これほどの数をよく集めましたねぇ)

一周回って感心してしまうほど、この部屋は装飾品の数が多い。

「………悪趣味な。」

しかし同時に、口からこぼれてしまうほどこの部屋は趣味が悪い。

(…とりあえず高価な飾ればいいとでも思っているのでしょうか?)

どこもかしこも金色にギラギラしていて、ドクロをかたどった飾りがある。

窓枠にある骨の腕には大粒の宝石が付いた指輪が飾られ、街の風景を完全に阻害している。。

(毒は塗られていないようですが……。)

部屋の中には執務に関連する道具や本が見当たらない。

(机に書類の一つもないというのは貴族としてどうなんでしょうね。)

王城にいる貴族は執務をすることが義務づけられている。

それなのに書類一枚見つからない。まぁ今はそれすらも置いておこう。

一番気になるのは鼻につく、この特徴的なにおい。

(この匂いはまさか………。)


隣にあるのは簡易的な寝室。そこから匂う、嫌悪と吐き気を覚えるこの匂い。



「……クソが。」



(随分と欲望にまみれた生活を王城で送っていたようですね。ああ、殺してしまいましょうか。)

大急ぎで消臭剤を調合し始め、窓を端から開けていく。

(こんなものをマスターに嗅がせるなど言語道断。最低限の報告だけはして、痕跡は分からないようにしなければ。)

ベッドには必要以上に吹きかけた後、カーテンなどの布製品に端から吹きかけていく。

陶器などは調べるついでに盗聴器を仕掛けて置くとしよう。

(ああなんて……なんて汚らわしい。)

ここ数年逢わなかったような種類のクズだ。それもマスターに気づかれればすぐに殺されてしまうほどの。

(報酬として証拠になるものを奪ってもいいでしょう?) 

しかし落ち着け、そうだ深呼吸をして街並みを眺めよう。

(マスターの手を下すべきなのは、今ではない。マスターには殺意を少しの間、我慢していただきましょう。)

改めて部屋を調べるが、隠し部屋も毒も見つからない。
毒の塗布等がないのは予想通りだが、ならば毒の調合はどこで行われている?

(長期的に使うことが目的ならば、既製品は使わないでしょう。魔力増強薬は違法薬物の上、ミーロト伯爵が使える経路では取り扱いがない。作るしかなくなるはずですが……。)

そもそも蓄積系の毒はこの世界ではとても珍しい毒として、一般的に使われていない。

(高度な薬学の知識と、薬草が長期間入手できる財力と伝手がいる。そして伯爵家との横のつながりも必要。)

それを全て兼ね備えている人物を探れば、知識をマスターのものにすることも解毒薬を作成させることも容易だろう。

(さて、どう調理しましょうか。)

数人までには絞れているがさて………。

(今はそれよりも先に行うことがありますね。)

足をそろえることで自分の思考を切り替え、改めて情報を集め始めた。
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