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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
156.何かがおかしい
しおりを挟む「……理由を、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。」
絞りだしたようなガストロの声に、少し同情する。しかし真っすぐとその目を見て、丁寧に話を進める。
「理由は分からないけれど、この指輪はカリストロ殿下用に作られていないからだよ。ただ、今回は遺品だからね。嫌ならば装着するのではなく保管という形で殿下に持っていただく。もちろんこれは、立場に関係なく断ってくれて構わない。」
「………。」
「今の状態で殿下がこれを身に着ければ、確実に死ぬ。それだけは確かだよ。」
はっきり言って、立場が逆ならば確実に断っただろう。私ならば確実に、自分の夫の遺言に従う。
もとから渡す予定ならば、子供の特徴や立場に合わせて作るからだ。
しかし今回はそうはいかない。この魔術具は、今のカリストロ殿下に渡せば確実に魔力を暴走させるだろう。
この魔術具の効果は防毒と傷の回復と……魔力の増強。
普段から魔力が体外に出ないギリギリの状態で生きている殿下に渡せば、簡単に魔力は体に収まる量ではなくなるだろう。
そうすれば殿下は……。
…………理由はさっぱりだ。
分かっていることは、今の殿下に渡せば魔力過多によって殿下が破裂するということ。
「…………私が精霊妃様様の作ったほうではだめでしょうか。」
「うーん…。本来は、かまわないんだけれど、…ほら、そのネックレスも指輪も奥方が頑張って作ってくれたやつでしょ?夫の君が持ってたほうがいいんじゃない?」
「しかし、だからこそ彼女が守るはずだったカリストロにやりたいのです。」
「うーん……。」
その言い分にも一理あるが、そもそもこんなゲキ重感情丸出しの魔術具、本人以外が持つなんて怖すぎるんだけど?!
(しかし伝えていいのか、これ?)
ウィール様に聞いたところ、殿下の魔力過多は生まれる前から分かっていたことらしい。
「胎児の状態の時から私達精霊は認知するからね。人間のお腹にいるかいないかなんて、大したことじゃない。」とのこと。
「ひとまず、もう一回ネックレス見せてもらってもいい?見間違いじゃなければ、君以外触れられないようになっていたはず。それが『カリストロとガストロ以外』なのか『ガストロ以外』なのかちゃんと確かめる。」
「かしこまりました。どうぞ、ご自由に。」
もう一度魔術具を見せてもらい、できる限り詳しく調べていく。
(…うん。大丈夫そうだね。ただちょっと気になる。)
「ねぇガストロ。今このネックレスを触れるのは誰?」
「私とカリストロ、宰相のマフィックスとオガリスです。」
「じゃあミーロト伯爵は触れられる人間から消していいね?」
「え゛」
「え?」
…………………………
「…………(口パクパク)」
「…………(目を見開き固まる)」
知 ら な か っ た の ?
……もしやこいつ本当に気付いてない? え?
自分が身に着ける魔術具自分で調べないの?
嘘でしょ!?
(ま、…まぁ。ひとまず…)
「…カエルつぶさないでもらっていいですかね?」
「ぶふっ。」
二人で目を合わせ、クルリと振り返って肩を震わせ後ろを向くウィール様を見る。
「「…………(ジトッ)」」
「………いや……つい、ね。すまない、つ、続けて。」
つい、で噴出さないでくださいよウィール様。後、肩が震えてるのバレバレですからね。
まぁ、美形特権で許しておきますけれど。
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