異世界情報収集生活

スカーレット

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番外編 たった一つ 1

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千利が隊長をしていた部屋の、周りの印象です。千葉は優しいほうですよ。



警察署の、とある階層。

普段人が寄り付かない代わりに充満するのは、悪意ある噂と腐臭と血の匂い。

「あ゛ぁーー。」

そんな階層で大声を出しているのは、部屋のまとめ役である男だろう。遠くから声が聞こえ、顔をしかめた。

隊長、と同じ部屋の者たちは呼んでいたが、名前など覚えたくない。

(…運がない。俺が書類を運んでいる日に限ってすれ違うとは。)

目的の奥の部屋から出てきたのは、大男達。あの男が従える、駒。

彼らにだけ確実に聞こえるよう舌打ちをして、すれ違う瞬間にボソリと呟く。

「死ね、恥さらし。」

あんな奴らと同じ空気を吸うだけで嫌悪感が湧き上がり、体調が悪くなる気がする。

(あんなクズ共が、警察官だと……。)

あんな奴らを警察として認めた上官も上官だが、あのクズのバックには鬼畜上官と名高いジジイが控えている。

(俺もあの爺さんには苦労した。)

警察官になってすぐの会話なんざあのジジイの愚痴か、ジジイが昔立てたらしい嘘みたいな記録の話だ。

(……そういえばその記録もあの男が塗り替えたって噂があったな。)

そんなことを思い出しながら、先ほど声を上げた男がいる部屋をノックする。

「どうぞ。開いてます。」

そう聞こえた声に溜め息を一つ吐いて、顔を取り繕う。

「失礼いたします。」

「事務部より参りました。こちら申請されていた書類です。お確かめください。」

目の前にいるのは、ケンカなんて知らないような優男。あんな細い腕でどうやって警察学校の厳しい訓練を乗り越えたというのだ。

「ご苦労様。………うん、全て揃っているよ。ありがとう。」

「では、私はこれで。」

「お疲れ様。」

表面上はにこやかにしておいたが、一刻も早くこの場を立ち去りたい。
形式的な礼をして、その場を離れる。

部屋の扉を閉じると同時に知らず知らずのうちに止めていた息を吐きだし、肩の力を抜く。

「あんな細いやつがどうやってヤクザをねじ伏せるというんだ。」

思わず通路で呟く。
あの男のいる部署は、いわゆるヤクザや不良の相手をする部署だ。つまり、暴力的な力がなければそのままけがに繋がる。

俺の同僚にも細いやつはいるが、あんなにヒョロヒョロな奴ではない。いわゆる、細マッチョと言われるような感じだ。

(あんな奴が実働部隊にいても邪魔なのだろう。どうせ警察学校だって、コネで記録を捏造して卒業したのだろう。)

そもそも特例で卒業と聞いたことがある。なんでも入学初日に卒業試験と同じ内容を受けて、全ての記録を大幅に更新して、卒業を認めさせたとか。

(そんなこと、誰が信じるというんだ。)

自分の部署に帰り、同僚の友人がこちらに向かい、聞いてきた。

「どうだった?警察一の悪部署は。」

だから俺はこう答えた。

「運悪く不良共とすれ違ったよ。あんな奴よりひったくり犯のほうがまともなような奴らだった。隊長とかいう男は猫かぶりだろうな。あんな奴、どうやって警察学校を卒業したっていうんだ?」

お前、知ってるか?そう言えば友人は苦笑いをして、答えた。

「猫かぶりで卒業できるようなとこじゃないんだけどなぁ、警察学校は。」

そのまま互いに仕事に戻り、俺はパソコンの前に座り続けた。

なんだかパソコンの調子が悪い一日だった。
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