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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
153.食い違いと説明
しおりを挟む「あれ。どういう事だろうね。」
ふと漏れたであろうウィール様の声に対して、ガストロは不思議そうに応えた。
「?なにか問題でも?」
状況を全く理解していない人がいる。
…どうやら本気で分かっていないようだ。
「殿下は今年、26で次の誕生日で27の予定だよ。」
その瞬間ピシッっという幻聴が聞こえた。
「…ご、ご冗談を精霊妃様。世界樹様までいったい……なにを…………?」
否定してくれ、と冷静さを欠き慌てふためくガストロ。しかし、ウィール様が諭すように言う。
「冗談でも何でもないよ。あの子は今年26だ。」
「ごじょ……え?いや待て……え?……あっ…えっ?………ん?」
ブツブツと言う姿は、混乱ここに極まれりといった感じだろう。
(………しっかし元気だなぁこいつ!長時間毒に侵されてたんだよね?よく腕上がるね?)
考え込みながら腕を組んだりしているが、本来毒の影響で動かないはずだ。……無意識で動くのか?痛みは?
聞きたいことはあふれてくるが、ひとまず
「いい?」
「はい……?まだ理解が追い付いていないのですが、どうされました?」
「今の状況を伝えないとね。ついでに、君の側近代わりの公爵と君も含めたその息子達ががどれだけ愚かに育っているか、ちゃぁーんと教えてあげないとね。」
そうニタリと嗤って伝えれば、強く目をつむった後に病人ガストロはライミリ国王へと切り替わった。
「遠慮など必要ございませぬ、我が国の失態その全てをお伝えください。我が国の膿を放置した結果、精霊妃様の御手を煩わせてしまったこと、全ては国王である私の責任でございます。」
真っ直ぐにこちらを見ている様子は、座ったままだというのに国王としての格の違いを理解させられる。
「じゃあ、時系列順に話をしよう。事の始まりは青の騎士団が私の愛娘であり魔術具でもあるニアを、分解するために誘拐したことだ。」
「え゛っ!!……………失礼しました。どうぞ続きを。」
「うん。……………………君の胃、もつ?」
スススと水と今の状況でも使っていい胃薬を寄せれば、失礼にならない最速の速さで受け取るガストロ。
水をゴックゴックと飲んだ後、私にコップを渡しながらブツブツと呟いて、こちらを見た。
「………………落ち着きました。どうぞ。」
「……うん……じゃあ……話すよ?………まぁ、………ガンバッテ。」
目がイっちゃってる国王に向けて話しながら、心の中で謝る。
(ごめんよガストロ。この件が一番の失態じゃないんだよ。大きい失態に細かい失態重ねてる状態なんだよ、それも君の側近夫婦と王妃!……なんかごめんね。グサグザ刺す手は緩めないけど)
そんなこんなでグサグサ刺していった……。
~~~数十分後~~~
「だいへん申し訳ございまぜん!!」
「……………。」
「とりあえずこれで拭いたら?汚らしいよ、君。」
「すびばぜん!!」
目の前にいるのは確かに国王。………国王ですよこれ。
意地で鼻水は垂れて無いようだけれど、ベッドの上で涙目状態のまま、体を二つに折ってるのが国王だって。
…………現実逃避していいかな、これ?はっきり言って側にいて欲しくない。
「……………落ち着いた?」
「………はい。」
「状況、理解した?」
「はい。」
「大体で言ってごらん?」
「精霊妃様の愛娘を誘拐し部分破壊を行った。この件を謝罪する場にロウ伯爵令嬢が許可も入室し、世界樹様方への挨拶もなく精霊妃様へ紅茶をかける暴挙。他にも王妃に公爵夫人やマフィックスまで………。人間が信じられなくなりそうです。」
「追い打ちで悪いけれど追加の報告ね。自国のことだ、国王として把握してもらうよ。伯爵三家が協力して政権をにぎろうとしているし、公爵は公爵で政権をにぎろうとしているようだ。それについては公爵夫人の言動や、私が独自に集めた情報によって裏付けが取れている。その上、二つの騎士団はまともに動かず、王太子は長らくまともな教育を受けられていない。」
「………世界樹様、そして精霊妃様。よろしいでしょうか。」
「うん?」
「どうかした?」
「私はどうしてもマフィックスやオガリスが私を陥れようとしていると考えられないのです。」
「へぇ?なぜ?」
ひとまず、聞いてあげるよ。
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